57話「いじめ」水野智之。
いじめ、って怖いですよね。なまじっかなホラーより遥かに。
生身の人間の起こすトラブルなので、お札やおまじないでは解決出来ない。もちろん生身ゆえの限界はあるんですけど、それは当事者全員に言える事ですからね。簡単な話じゃないですよね。
でも怖いのはいじめじゃなくて、いじめを行える人間という存在そのものですか。
Bさんは中学生の頃、いじめっ子をしていました。別に何が気に入らないという事もなく、なんとなく流れでクラスメートの中心的存在になり、いじめをし始めました。
いじめの対象は自由に選べました。女子でも男子でも、Bさんが言えば、皆でいじめる事が出来ました。持ち物を隠したり、机に落書きをしたり、直接暴力を振るったり。
いじめは毎日続きました。対象を変え、やり方を変え、毎日。
Bさんに特別な悪意はありません。特別な害意もありません。ただなんとなく、いじめをしていたのです。
そしてBさんは中学3年生になりました。
3年生になっても、Bさんはいじめをやめようとは思いませんでした。毎日の習慣を止める理由もありませんでした。
でもその日は何か様子が変でした。
クラスの誰に話しかけても、返事が返って来ません。いつもいじめを一緒にしていた仲間も、いじめていた相手も。誰も。
Bさんはその日から学校に行かなくなりました。
今、Bさんは通信制大学で勉強しているようです。毎日いじめをしていた習慣付けは、勉強にも有効なようですね。
おそらく皆さんはBさんを可哀想だとは思わないでしょう。いじめっ子でしたからね。中学生からは。
Bさんは小学生の時、いじめにあっていました。中学生になってからいじめ「返した」相手にです。
聞いても良いですか?
Bさんは悪い子でしょうか。それとも「Bさんにいじめられていた」子達は悪い子でしょうか。
ぼくはBさんの肩を持ちたいところですが、いじめは悪い事ですからね。いじめっ子は可哀想な目にあわなければならないのでしょう。
怖いですね。本当。生きるのって。
では次の方、お願いします。




