48/100
48話「匂い」明野未明。
これは先輩から聞いた話なのですが。
私のお世話になった先輩は、かつて友人を亡くしたそうです。その友人と先輩は同じ大学を目指すライバル。ライバル同士でしたが、それでも切磋琢磨、受験勉強も一緒にしていたそうです。
しかしその友人は亡くなりました。あっけなく事故で。
先輩は混乱し、勉強にも身が入らなくなってしまいましたが、それでもなんとか持ち直しました。
これで自分まで潰れてしまったら、友人との日々が、まるで無為になってしまう。そう決意し、今までよりも身を入れて勉強の日々に没頭しました。
結果、合格。先輩は志望校に無事入学し、友人の墓前に吉報を届けられました。
そしてその時先輩は感じたそうです。友人の身に付けていた匂いを。かすかに香る友人の気配を、先輩は感じたそうです。
今でも先輩は毎年墓参りを欠かさないそうです。今でも匂いがするのかどうかは、聞けませんでしたが。
では、次の方。