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45話「釣り人」八幡八重花。

 私は全然釣りとか分からないんですけど、好きな人は好きですよね。私のお父さんなんて、プールで泳げないのに、海釣りに出かけるんですよ。信じられませんよね。


 で、今回の話はお父さんに聞いたものなんです。



 お父さんは釣りに行く時は、友達を誘って、皆で行くんです。魚釣りが目的というよりは、皆でお喋りをしに行くのが楽しみらしいです。そして。


 もし船で釣りをしていて、見知らぬ人間が居たとしても、話しかけるべきかどうかは疑問だ。そいつは人間だかどうだか。


 そんな伝承が、いつしかお父さんの耳にも聞こえて来ました。


 隣り合った釣り人が生者ではないかも知れない。よくあるタイプの怪談ですね。でも逃げ場のない船上では、ヒリヒリするようなホラーです。


 でも実際にはこんな感じ。


 ある釣り人さんが、お父さん達と同じように皆で船に乗って、海釣りを楽しんでいました。夜も遅く、周囲には何の明かりもない。夜の海にただ抱かれる小舟になって、皆で静かに楽しんでいた。


 「釣れますか」


 と、その釣り人さんは、右隣の人に話しかけられました。お互い、海に向かって座っているので、その横顔をちらりと見ると、帽子をかぶった青白い顔をした中年男性が話しかけていたのでした。


 「ぼちぼちです。そちらは?」「こっちもぼちぼち。ははは」


 取り留めもない会話が始まりました。お喋りの嫌いでないその釣り人さんは、相手があまり喋り上手でない事がすぐに分かりました。でも、せっかくの船だから、頑張って話しかけてくれたのでしょう。その心意気が嬉しくなって、2人は釣れたり釣れなかったりしながら、一晩中喋り続けていました。


 夜が明けて、船は港に帰り、家に帰る時間になりました。


 楽しい釣りだったな。釣り人さんはそう思いながら、船長に挨拶をしました。


 「今回は友人も増えた。良い釣りが出来たよ」「・・・そう言ってもらえるのは嬉しいが。これにりずにまた来てくれよ」


 ・・・懲りず?


 ドキドキしながら船長に詳しく聞いてみると、前夜の話し相手の方は、幽霊だそうで。


 よく考えると、船から降りた客の中に、あの人が見当たらない・・・!


 「たまーにここらの船に乗るのさ。あの人は。何も悪さはしないから、どこの船も塩をまいたりはしない。どこの誰かは知らねえけど、釣り人に悪い奴は居ねえからなあ」


 少し怖くなっていた釣り人さんですが、船長の話を聞くと、ちょっとしんみりしちゃいました。


 今度は油揚げでも持って来ようかな・・・。


 少しズレた事を考える釣り人さんでした。



 どうですか?悪い事をしない幽霊なら、怖くはありませんか?


 私は何もしないと分かっていても、幽霊というだけで、ちょっと怖いですね。


 じゃあ、次の方どうぞ。

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