44話「ペット」透真瞬一。
皆さんはペットをお飼いになった事はありますか?実は私の家はペット禁止なので、少し羨ましく思いながら、友人らのペット談義に耳を傾けています。
今や家族も同然。一緒の部屋で眠る事も少なくない、愛すべき存在。
今回は、そんなペットに関するお話です。
これは友人に聞いた話なのですが。
その友人は犬を飼っていました。ペットショップで一目惚れして連れ帰ったので、飼育経験のなかった初期は大変だったそうです。
ですが愛犬との二人三脚。ペットショップや獣医さんの協力を得て、なんとかかんとかやっていったそうです。
しかし、そんな日々も突然に終わりを告げます。
友人が犬を散歩に連れて行くと、自動車にはねられました。
友人は辛うじて一命を取り留めましたが、犬の方は助かりませんでした。
まるで友人をかばうかのように、友人の前に出て、自動車とのクッションになって死んだという事です。
私は犬を飼った経験はありませんが。なんとも言いかねる想いをしたのではないでしょうか。
それから数ヶ月、友人は怪我での入院もあって、かなり落ち込んでいました。我々も代わる代わるお見舞いには行くのですが、ずっと一緒だった家族を失った痛みは、中々治るものではありませんでした。身体の怪我を治した後、ゆっくり時間をかけていやすよりないのでしょうね。
しかし、私達にはある心配事もありました。怪我や体調の問題ではありません。
回復に伴い、リハビリも出来るようになった彼が、たまにつぶやくんです。
あいつと一緒に歩いている気がする。あいつがそばに居る気がする。と。
私達には、それを幻覚と切って捨てる事は出来ませんでした。
きっと見守ってくれているよ。そんな月並みな慰めだけです。
それに、彼の愛犬が本当に「居る」のであれば、彼には絶対に祟らない。それぐらいの信用はありますからね。
どうなるにせよ、時間の解決を待つだけですね。
ペットを飼うというのも、案外大変なものです。死後の事まで考える必要があるとは。
では、次の方お願いします。