41話「プールの怪」神渡京介。
じゃあ、ぼくは夏らしいお話にしますね。
これはぼくらの通ってた小学校に伝わっていたお話です。
うちの学校は特に特徴もない、普通の学校でした。普通の学校らしく、七不思議みたいな怪談もありました。1つですけど。
その1つのお話です。
うちのプールには、幽霊が出る。そんな噂話を聞くのは、5年生になってから。それがうちの学校のルールというか、暗黙の了解のようなものでした。ぼくらも5年生になって最初のプール授業で、ひっそりと同級生からそれを聞きました。
うちのプールには幽霊が出る。午後5時以降、生徒が皆いなくなってから、誰もいないプールで水音がする。それはプールからフェンス一枚へだてた道路から聞こえる。
多分、普通の七不思議とかと比べると、安全で大人しくて刺激は少ないと思います。実際、それを聞いただけで満足してたクラスメートの方が多かったです。
ぼくらは少数派・・・と言っても、クラスの半数弱ぐらいだったかな。それぐらいの人数で、一度試してみたんです。どうしても気になって。
時間は午後6時。帰宅時間ギリギリまで遊んで、それからまた学校前に集合。音を聞いたらすぐに帰る。そんな約束で皆で集まりました。
真夏には早い、6月の終わり。梅雨も明けて晴れの日が多くなったにも関わらず、その日はしとしとと降っていました。
小学校前の歩道には、子供たちの傘がいっぱい。不思議な光景だったでしょうね。今から思えば、遠足帰りか何かだと思われたのかも。
それで、もうお察しだと思いますけど。
雨音が地面や傘を叩いている最中に、プールの水音なんて、とても聞こえませんでした。いえ、正確には水音はじゃんじゃんしてましたよ。雨の音で。
ぼくらの計画は大失敗でした。皆で大量の水音を聞いたことで、もう満腹感というか、それで話は終わった、みたいになっちゃって。それ以降、プールの怪談は話にも上らなくなりました。
全然怖くなかったですね。まあ本当の体験談はこんなものってことで。
では、次お願いします。