37話「研究」水野智之。
ぼくが大学で研究しているテーマは、虫と人間の直接的な関係性です。一般的に最も有名なのは寄生虫による病気だと思いますが、養蜂、養蚕も人間社会とは密接な関係がありますね。
そしてその中でぼくのテーマに近いのは、寄生虫です。
腸内細菌との共同生活を送っている人類。もう少し増えても、問題ないのでは?と考えて、共存可能な寄生虫の発見及び開発をしています。
これはその中の一節です。
一般的に寄生虫は内蔵に取り付きます。脳、胃腸などが生息地として有望です。
しかし脳に取り付かれると、言うまでもなく、致命的です。胃腸もダメージがあったり、栄養失調になったりで、中々不便です。
なのでぼくは、骨の中に住まわせました。
骨粗鬆症、骨折、ひび。それら骨にまつわる病気、怪我を軽症化するために、骨と寄生虫を融合。寄生虫の回復能力で、骨をカバーするんです。
アレルギー、骨の変形などの課題をクリア出来れば、あるいは実用化も・・・。
夢のあるテーマです。
ですから、予算を使っての人体実験もドンドン進められました。教授や仲間達の協力なくしては、決してこの成果はなかったでしょう。本当にぼくは恵まれています。
実験は今のところ成功していませんが、いつか有効な結果が出ると信じています。
全然怖くありませんでしたね。虫を苦手とする人も居るかと思って頑張ったんですけど。
実験の被験者?大丈夫ですよ。ちゃんと協力費は支払わせて頂いていますし、今も実験は続いているんですから。身体の骨を全て使い切るまで協力して頂けて、本当にぼくは幸せです。
では次の方、お願いします。