30話「スーツを着たゴリラ」亀戸玄武。
これは本で読んだ話なんだけど。
Eさんは動物園に行くのが趣味だった。平日でも休日でも、時間があれば動物園に行ってたんだ。
毎日、違う動物を見て、晴れの日にも雨の日にも動物に会いに行った。
そんな時、ふと違和感に気付いた。
檻の中に、変な生き物が居る。
スーツを着たゴリラ。ドレスを着たオランウータン。
なんだろう。何かのイベントなのだろうか。Eさんは目の前の光景にびっくりしたけど、一番簡単な解決策も知っていた。職員に聞けば良い。
そこらのポスターを見て、イベントの案内がない事を確認してから、Eさんは職員に聞いてみた。
「あそこのゴリラとかは、イベントの準備中ですか?」「?」
話は噛み合ってなかった。職員にはスーツを着た動物など見えていないらしい。
Eさんはベンチに腰掛けて、自分は幻覚を見ているんだ、と割と絶望してた。これで、まともな日常生活が送れるのだろうか?
嘆きながら、またゴリラに目をやると、スーツの首元をキツそうにいじってた。
・・・これが、幻覚なのか?
Eさんは信じられない思いだったけど、なんとか気持ちを押し殺して、動物園を後にし、次の日病院に向かった。
現在もEさんは治療中らしいけど、動物園以外で幻覚に襲われる事はないらしいよ。
ぼくなんかは、それって幻覚じゃなくて・・・と思うんだけどね。じゃあ動物園の人はなんで否定したの?ってなるし。困った困った。
じゃ、次!