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28話「動物」明野未明。

 これは私の先輩から聞いた話なのですが。



 私の先輩に、ブロンズ像を専門にしている方が居ました。Tという人なのですが、その専門分野は動物像。もちろん人間像も作れるのですが、より迫力のある像を作りたい、という熱意で動物を作り続けています。


 Tさんはある日、自分の像を飾ってくれている動物園に出かけました。自分の像を見るため、ではありません。それはそれで必要な仕事ではありますが。今回の目的は本物の動物。つまりは、観察のためです。


 本当の動物の姿形、動作、息遣い、脈拍。全てを取り込むための勉強です。


 Tさんが訪れたのは最新の設備に改修されたK動物園。電子制御によって最小限の人員であってもきめ細やかな動物管理が出来る、最新最高の動物園です。万が一の停電に備え、発電設備も万全。1万人規模の生活電源をまかなえるというとんでもない代物です。


 しかしながら、いかなる準備があろうと、十全とは参りません。


 Tさんがふと空を見上げると、そこには黒雲。雷雲がやって来ました。外のベンチにかけていたTさんはとりあえず売店内に避難。傘も危ないがどうしようと考えていると、雷が降って来ました。


 雷は避雷針を焼き尽くし、建物の電源を燃やし尽くし、発電施設とのケーブルを破壊し尽くしました。施設はあらゆる災害を想定して建てられていましたが、今までにない空前の災害など、想定出来るわけもありません。


 動物園は動物の安全のために、設計通りに、さくを開放しました。


 完璧な発電装置を持つK動物園。そこで電力の供給が途絶えるのは、あくまで人為的なコントロールによるものであるという前提がありました。


 ゆえに園内に一般人が居る状態で、動物らは解き放たれました。


 ライオンなどの肉食獣のエリアは地獄絵図と化し、シマウマを始めとする草食獣らは人間を踏み潰しながら逃げ惑いました。


 Tさんは売店内部からこの光景を見ながら、歓喜していました。


 本物の肉食獣の捕食シーンを目の前で見られるなんて。今日は最高の日だ。そう、大喜びで語ってくれました。



 Tさんは今も動物園が大好きで、動物の像を作り続けています。そのレベルはある時期を境に、更に上達したと評判です。


 私も見習いたいものですね。芸術家たるもの。


 では、次の方。

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