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27話「魚群の夢」水野智之。

 良いですよね。水族館。ぼくも好きですよ。水の中には、地上と同じくらい多種多様な生命が活動しています。そもそも命の根源は海中という説もありますしね。


 そんな水族館には不思議もいっぱいあります。


 これは水族館に遊びに行った人から聞いたお話です。



 Tさんは休日を利用して、1人で水族館に遊びに来ていました。家族や友人と来るのも楽しいものですが、1人で静かにゆっくりと生き物を眺めるのも良いものですよね。


 朝から来ていた水族館で、ひとしきり楽しんだTさんは、休憩を取るべくレストランに入りました。ランチにデザート。これまた時間をかけてじっくり味わい、Tさんの休日は最高のものになっていました。


 しかし、ちょっと食べ過ぎたTさん。レストランを出た後、ベンチでさらなる休憩に入りました。少し横になるのです。


 満腹で苦しくなりながら、Tさんは夢を見ていました。


 Tさんは夢の中で、自分の体が軽い事に気が付きました。肩が上がりにくい、腰が痛い、そういった悩みとは無縁の機敏さ。若い頃のような体の軽さ。


 Tさんは群れの仲間と一緒に泳ぎながら、別種の魚との距離を保ちながら、しばしの幸せに浸っていました。


 そして唐突に気が付きました。私、魚になってる。と。


 Tさんは胡蝶こちょうゆめを思い出しました。自分は今、あの状態になっているんだな。そう考えました。


 それならそれで、魚生活を楽しもう。Tさんは前向きでした。


 群れの仲間が巨大な敵に食われ、自らも小魚を食べ、子を作り、そして他種の供物となって死んだ。


 そこまでをリアルに感じながら、Tさんはベンチで目覚めました。


 長い夢でした。魚生活自体はほんの数年でしかありませんが、数年間分の夢は考えられないほど長いものでした。


 よだれを拭いて、Tさんは改めて水槽の中の魚を眺めました。かつての仲間の顔を見やりました。



 Tさんはこのまま帰って良いものか悩んだ末、結局は自分の家に帰ったそうです。魚時代の群れを離れて。


 皆さんはどうです?Tさんみたいに、異種族間で生きた記憶があったなら、どちらの生活に戻りますか?


 ぼくは、その時にならないと分かりません。だって楽しそうな方に行きたいじゃないですか。


 では、次の方どうぞ。

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