表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/100

22話「タイヤの怪」風祭順。

 じゃあ、次は遊園地のお話をしますね。あまりメジャーじゃない遊園地で実際にあった話なんですけど、ひょっとしたら皆知っているかも。事件は大きく報じられましたから。


 遊園地で人気の乗り物って、いっぱいありますよね。ジェットコースターが有名だけど、観覧車も負けてない。季節限定のお化け屋敷やイルミネーション。


 そこの遊園地では、ゴーカートが売りだったんです。


 およそ一般的な遊園地では、多くあるゴーカート。そこの遊園地では大雑把おおざっぱに4種のカートがあって、更に1車1車、カラーリングが違ったり、名前が違ったり、特別なこだわりがあったんです。その分、ちょっとお値段も張るんだけど、そこはワンデーパスでなんとか、ね。


 カートの種類だけコースがあって、例えばF1を模したレース場だったり、まるでティーカップみたいにくるくる回ってたり、それにジェットコースターになったり。


 別に車のテーマパークとか、自動車会社がスポンサーだったりはしないはずなんですけど。よその遊園地の使わなくなったカートを引き取って、ベンチに作り変えたりして、いつの間にか数が増えて行ったそうです。


 実は、私も何度か遊びに行きました。と言っても車に興味があるわけじゃなくて、取材でね。当時、自動運転の車が話題になってて、それにかこつけて、遊園地のカート特集をしてたのね。ほら、さっき言ったみたいに、ティーカップ型やジェットコースタータイプもあったから。


 あれは夏だったかなあ。確かアスファルトに陽炎かげろうが出てたから、そうだ。真夏だ。


 それこそまるでF1みたいに大勢のお客さんが見守る中、カートレースが始まったんだ。


 それは夏のイベントで、親子で出られるカートレース。大人も子供も、ぶつかっても平気なカートに乗って、どんどんぶつかりながらゴールを目指す、暴れん坊レース。


 事故はその第4レースの最中に起きました。


 観客席ではお弁当を広げた家族や、アイスを食べているカップルなどがめいめいに楽しんでいて、前触れなんかは一切なかったの。


 遊園地スタッフのゴーサインで、レースは始まった。参加車両は合計24台。レースというだけあって、サーキットはそれなりに広くって、1周は2分かかるの。


 その2分が過ぎても、1台も帰って来なかったんだけど。


 爆発やクラッシュの大音響は聞こえなかった。火災も起きなかったし、地震で地割れが起きたのでもない。


 顔を真っ青にした従業員の案内で、観客席に居た私達は退場させられた。もちろん私は記者の肩書で、現場保存のお手伝いをします、と言って関わらせてもらったけどね。


 救急車や警察が来るまで、誰も何にも触れちゃいけなかった。けどそれで正解だったかは分からない。今でも。


 「彼ら」は生きていた。


 バタン、バタン。音が聞こえたんだ。レース場に入って、カートに近寄ってみたら。


 そこでは、生きた人間と生きたタイヤが踊っていた。


 レース場を構成するクッション材としての古タイヤ。それが元気に飛び跳ねててさ。レースに参加してた子供や大人たちの腕や腰、頭にフラフープみたいに巻き付いて、愉快に踊ってたんだ。


 なんで従業員は、参加者を救助しないのか?実は私も初めは疑問に思ったよ。まだ動いてる。妖怪の仕業か何か知らないが、助けようよ!と。


 でもようく見ると、分かった。誰も自分の意思で動いていない。器用に飛び跳ねているのはタイヤだけで、人間の方は皆おかしかった。


 関節の外れていない人は居なかったし、首があらぬ方向を向いていない人もまた、居なかった。


 全員、死んでた。ひと目で分かったよ。


 とりあえず私は手持ちのカメラで撮影して、従業員の責任ではない事だけは証明しようとしたんだ。もちろん、警察にだけ提出したよ。被害者の顔も写っちゃったしね。


 それに証拠が残る事で、これが科学的に究明される日も来るかも知れない。そうも思った。


 もちろんスタッフの方々も手持ちのスマホで映像を記録してた。もしこれが本物の怪奇現象だった場合、犯人の証拠も残らず、真っ先に疑われるのは従業員だからね。


 そしてタイヤの動きはピタリと止まった。何の前触れもなく、完全な唐突さで。


 それでも誰も近づけなかった。私も含めてね。


 もしまた動いたら。その時は自分が同じ目にあう。そう思ってしまうと、とても動けるものじゃあなかったよ。


 薄情はくじょうだけど、警察や救急の到着を待って、ようやく救助活動は行われたんだ。



 今でもときたま、ふいに思い出して、考えてしまう。


 もしあの時、すぐに助けに入っていれば。誰か助かったのかな。


 素人の目で即死に見えても、実は生き残っていた人も居たのかも知れない。


 ちなみにタイヤの怪は、いまだに謎だよ。外部の力が加えられた形跡のない古タイヤが動き回った謎はね。



 でも私が知りたいのは、それじゃない。


 あの時、助けを求めていた人は居たのかな。そして私はそれを、見捨てたのかな。


 それがずっと知りたいんだ。



 じゃ、次の人。


 私がヘンな話で茶をにごしちゃったけど、お願いね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ