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17話「地縛霊」水野智之。

 怖がらせないで下さいよ・・・。苦手なんですから。


 じゃあ次の話、行きますね。



 今回はオーソドックスな学校の怪談です。屋上から飛び降りた自殺者の幽霊。怖いですね。


 ・・・これで終わっても良いんですが、ちょっと短いですかね。流石に。


 それでは、事の次第をお話しましょう。


 佐藤さん。高校一年生だった彼女は、飛び降り自殺を実行しました。でも、いじめられていたとかの理由じゃなかったんですよ。それなら地縛霊になっても納得なんですけど。


 佐藤さんは、多分ご家庭にも問題はありませんでした。友人関係、学校の成績、私生活のあらゆるトラブル。そういった数々の難問と無縁に見えた佐藤さんですが、それでも死を選んでしまったんです。


 これは思春期によくある事なんでしょうか。それとも、人間はそもそもが死を選べる生物。これもまた人が生きようとするのと不可分に、死のうとしてしまうものなのでしょうか。


 分かりませんね。


 ですがこれだけなら、怪談でもなんでもなく、よくある悲しい事件で終わりのはずでした。人間社会によくある、なんでもないありふれた悲劇。どこかで毎日起こっている程度の出来事です。


 でも佐藤さんは、ありふれた死人ではなく、地縛霊になりました。


 特別な背景も無しに。


 それから学校で佐藤さんの伝承が広まるのに、時間はかかりませんでした。なにせ、放課後残っている生徒の大半が目撃してしまったのですから。


 もちろん、残業していた先生の中にも目撃者は続出。全国テレビのニュースにもなったそうです。


 今も、佐藤さんの伝説は残っているそうですよ。


 お祓いでもお祈りでも佐藤さんの地縛霊は解き放たれませんでしたから。



 ぼくはそこがキーなんだと思います。佐藤さんは、怨念おんねん憤怒ふんぬで悪霊になったんじゃない、って。


 きっと、特別になりたかったんですよ。


 ぼくも凡人の端くれなので、ちょっと分かりますよ。佐藤さんの日常に悲劇も想像を絶する辛さもなかったはずです。


 でも、何もなかったんですよ。プラスに振り切れる人生の素晴らしさも、マイナスの涙も、何も。


 それが、たまらなかったんじゃないでしょうか。


 ぼくも偉そうに人生を語れるほど長生きしているわけじゃありませんけどね。


 自分の人生に何も無かったら、どうしよう?そんな事を考える時は、たまにはあります。


 ぼくは今、地縛霊よりも、空っぽの人生の方が怖いですよ。


 じゃあ、次の方。よろしくお願いします。

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