14話「見えない交代」透真瞬一。
さて。2つ目ですか。よろしくお願いしますね。
これは、友人から聞いた話なのですが。
その友人は、警備員をしていまして。様々な怪奇現象と出会って来たそうです。
ですが、そのほとんどが、気のせいらしいですね。夜間警備の仕事は、眠気と疲労に襲われながらの勤務。せめて体を動かせれば眠気も飛ばせるでしょうが、実際には監視カメラを見つめていなければならない。定期の見回りが待ち遠しかったそうです。私のような素人は、夜闇は怖いものじゃないのかな、と思っていましたけど。その夜間の住人でしたね。プロは。
それでも。
中には、本物も混じっているそうです。
ある日。友人はいつものように夜間警備をしていました。慣れた時間帯、慣れた仕事内容、気心の知れた仲間。トラブルも起きない、平和な夜でした。
コンコン
警備室の扉をノックする音。巡回に向かった人間が帰って来たのでしょうか。
全員、この部屋の中に居るのですが。
コンコン
ノックは続きます。強く叩かれるわけでもなく。確かな音量で。
友人は眠っている仲間を起こし、椅子に座らせてから、扉を開きました。
扉の前にはもちろん、誰も居ません。
それから友人は仮眠ベッドを見やりました。
ギシ
何者も乗っていないはずのベッドが、確かにきしみ。
そして毛布が浮き上がる。
それを見届けた友人は、椅子に座らせた仲間に苦笑を見せながら、見回りに立ちました。
慣れた展開。
馴染みの幽霊です。
「彼」もまた、以前は友人の仲間でした。
運悪く、暴漢に殺されてしまった仲間です。それも警備の仕事の最中ではなく、仕事の終わった、その後に。やっと体を休められる、その前に。
ゆえに彼は安らぎを求めて、誰からの指示もなく見回りをし続け、そして許された休憩を得るのです。
初めてその光景を見た時は、流石に友人も肝を潰したそうですが。彼は特に悪さもしませんし、仕事の邪魔にもなりません。
ゆっくり眠ってもらうために、会社でお祓いもしてもらったそうなのですが、それも効き目は無かったそうです。悪霊ではないからでしょうかね。
そんな友人の友霊ですが。
1つ、気になる事があるんです。
もし、彼を殺した人間が、近くに立ち寄ったなら。
どうなるんでしょうね?
私の予想では。
今度の幽霊は、祓えそうですよ。
では、次の方。
八幡さん、お願いしますね。