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13話「消える警察署」藤宮蛍。

 あー・・。もう私かい?早いねえ。


 て言うか、皆よくそんなに話せるねえ。私なんか、1話でストック切れだよ。


 だから、ここからは私の実体験に脚色した創作で乗り切らせてもらおう。いくらなんでも、怪談を10話もは無理さ。私はホラー趣味じゃあないんだからねえ。


 えーと。まず、これからにしようか。



 今から何年前だったか。ちょっとした事で、おまわりさんに捕まってしまってねえ。ああでも、凶悪犯罪をしちゃったんじゃないんだよ。


 良い気持ちで飲んでたら、知らない内に他所様の家に上がり込んでてね。自分の家と間違えて。それで警察を呼ばれて、留置所でお休み、という事さね。ね。悪い事じゃないだろ?・・・良くもない?まあ、否定は出来ないねえ。あはは。


 それで私も、初めての警察のお泊りだ。ワクワクして眠れなかったよ。お酒も入ってたし、おまわりさんも、当たりの強い人じゃあない。イイ気分で毛布にくるまって夜を過ごしたんだ。


 幸い、なのかどうか、泊まり客は私だけ。静かな夜だったなあ。


 署内は騒々しくない。緊急事態の気配もない。


 警察署の奥深く、ワインみたいに寝かされて。もうこのまま、ずっとここに居ても良いなあ、とさえ思ってたよ。


 で。


 そうは言っても朝。


 酔いも抜けてたから、朝ごはん食べておいとましようとしたら、コーヒーが運ばれて来てね。


 良い香りだったよ。


 とても、レストランのお代わり自由コーヒーとは思えない。


 うん。


 私はレストランで目が覚めたんだ。席に座ってね。


 はて?


 もしや、警察を出た後、まーたしこたま飲んで意識を失う寸前で、でもでも今度は反省を生かしてレストランに駆け込み、現在に至る?


 やっべえ。


 自覚症状は無かったけれど、私はアルコール中毒だったのだろうか。これ、幽霊に出会うより怖い事実なんだけど。


 コーヒーを飲んで落ち着いた私は、すっごい低いテンションでケータイをいじった。仕事何日サボっちゃったかなー、とか考えながら。


 そうしたら、飲みの翌日。あれ?急げば間に合うじゃん。


 そう思ったら、もうダッシュだよね。お会計済ましてバイト直行して、ヘロヘロになって帰宅。もー飲まねーぞー、とアップルジュースでも飲みながら、一息ついて。ふと気付いちゃった。


 留置所から出る時の記憶が、無い。


 レストランに入る前の記憶が無いのは分かる。アルコールで吹っ飛んでたんだろうね。


 でも、シラフで出たはずのあの時の覚えが無いなんて、有り得ない。


 て言うか、そんな状態じゃあ、おまわりさんだって出しちゃくれないでしょ。


 そうだ。


 おまわりさんに聞けば良いんじゃん?


 正直、合わせる顔はないけど。えへへ、お久しぶりです~みたいな感じで行けば良いかなって。


 それでまあ、警察署にお邪魔したわけよ。もちろん、シラフでね。


 すみませーん。昨日、こちらにお世話になった者ですけどー、って。泊まり客は私一人だったから、これで通じるかなって。


 そしたら、あんた誰?って・・・。


 ええー・・。


 いやね。交番じゃないんだから、一人一人の人間なんて覚えてられないってのは分かるよ。それに私の地元とも、ちょっと離れてるしね。知り合いも居ないしさ。


 だからって、ねえ?昨日、あんなに爆睡した人間を覚えてないとか。ここの警察、危機感ねーわー、って思っちゃった私は、悪くないよねえ?


 もーいーわ。ってな事で帰っちゃった。


 それで、こっから後日談ね。


 その日から何日もしてから、そういえば、ご迷惑をおかけした家に謝りに行ってないなって気付いたのよ。おまわりさんともお喋りせずに帰っちゃったし。


 やべー、場所分かんねー、とか思いながら、あの日飲んだ店からの道をたどってみたわけよ。必ずどっかにはあるはずだしさ。


 うん。あったんだ。


 あったには、あったんだけど、ね。


 焼け跡がね。真っ黒の炭になったような建物の残骸がグチャグチャになっててね。


 それでも、残ってたんだよ。私があの日踏んだ覚えのある、庭石が。あの時は酔っ払ってたから、足元しか見てなかった。だから石だけは覚えてた。


 んんん???


 あれから1週間は経っていた。その間に火事に?


 とりあえず、通行人に聞いてみた。買い物袋をぶら下げた地元民と思しき人にね。


 ・・・あそこの家は、1年以上前に火事になっちゃったんだって。それで早く片付けるなり建て直すなりして欲しいって、近所でも厄介がられてるんだってさ。


 まあ、分かるよね。隣が廃墟、って、ちょっと、ねえ。あんまり良い気分じゃないよねえ。


 じゃなくて。


 え、じゃあ、私が勘違いした?実は更に違う家?


 もう、探しきれないよ・・・。


 それで、最後にあの家の前に戻って、もう一度確認してみたんだ。


 んんん・・・。やっぱり決め手は庭石だけ。確かにこの家だと思ったんだけどな・・・。酔ってる時だし。思い違いの可能性は、けっこうある。


 それで、それ以上何も出来ないし。普通に帰ったのね。


 普通に、あの警察署の前も通って。


 もう、分かるよね?


 警察署も、無かったよ。


 ここに至って、私ももう慣れた。


 私、幻覚見るようになっちゃってるんだ。なんとか言う、神経の病気だ。


 うわあああ・・・。マジっすか。まだ若いつもりで居たんだけどなー・・・・。


 かなり本気のショックを受けて、ふらふらしながら歩いてたら、おまわりさんに止められてね。


 大丈夫ですかー、って。多分、酔っぱらいか麻薬でもやってるのか、疑われたんだろうね。


 大丈夫ですー、って返して。なんとか帰れたよ。今度はお世話にならなかった。


 ・・・あれ?おまわりさんが、なんで居るの?


 警察署は無い、はずなのに。


 あのー。最寄りの警察署の場所とか聞いて良いですかね?て聞いてみた。すると、警察署は、この隣の通りですよ・・・って。


 つまり。


 道、間違えてた。ははは。


 ごめん。


 いや、マジ怖かったんだって!考えてみて!昨日までなんともなかったのに、今日になって自分の精神が明らかにオカシクなってて、現実をまともに認識出来なくなってるって、想像してみてって!


 もー・・。安心したらお腹すいちゃって、うっかり食べ過ぎたしさ。


 ああ。そう言えば、あの家も隣の通りだったかって?


 実は、安心してすぐご飯行っちゃったから、確認してないんだ。


 まーでもきっと、同じオチだよ。私がお化けの家なんて、行くわけないって。


 だって、私良い人だもん。神様が、そんな意地悪するわけないよねえ?



 じゃ、次ね。よろしくー。

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