表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/100

12話「恋人はお医者さん」風祭順。

 京介君、上手いね。いやいや。本当に、語り手としてやって行けるように思うよ。怪談を情感たっぷりに喋れる高校生というのも、中々珍しい。もし、何かあればケータイにかけてくれ。君は、面白い。


 話がズレすぎたけど、では私の番ですね。



 これも病院のお話で、しかも主役は女性だ。被っているね。


 まあ、今回は大人。妙齢みょうれいの女性だから、許して欲しい。


 名前は仮に、裕子ゆうこさんとしておこうか。裕子さんは20台の社会人で、元気いっぱいに下っ端を謳歌おうかしてたんだ。私達と似たようなものだね。


 でも、ある日酔って階段を転げ落ちるという、不幸な事故に出会い、入院のき目に。


 そして物語が始ま・・・らないんだなあ。なぜなら、既に始まっていたから。


 その病院には、裕子さんの彼氏が務めてたんだよ。お医者様として。手術もどうやら、彼にしてもらえそう。やったね。


 親類などの関係の近い人の手術は出来ない、という医師も居るそうだけど、裕子さんの彼氏はむしろ奮起したようで、念入りに体調を整え、手術の日に備えた。良いねえ。羨ましい。


 そして迎えたその日。裕子さんは、実はそこはかとない不安を抱えていた。


 いつもなら、医師としてではない、仕事終わりの彼が病室に遊びに来てくれるのに。その日は、仕事前に来てくれてない。


 もちろん、今日が大事な日だとは分かってるよ。彼はその準備にかかっているはず。


 今遊ぶより、大切な手術に備えるのが肝要。彼が良い人であればあるほど、そう考えるのは自然。


 だから、裕子さんも少し寂しかったけれど、我慢したんだ。幸い、手術自体は難しいものではなく、数時間後には病室で読書だって出来る。彼は、手術後の様々な実務、そしてまた準備など。とても一緒には居られないだろうけどね。


 元気になれば、問題なし。休日を一緒に過ごせば良いのだから。


 で。手術は問題なく成功。


 術後、病室で目覚めた裕子さんは、そっと生還を噛み締めた。別に、命の危機ではなかったんだけどね。


 それまでの不安が、まるで無駄。喜ばしい無駄だねえ。


 ただ・・・。


 麻酔を打つ時ですら、彼が一言も喋らなかったのが、気がかりと言えば気がかりだった。それまで、看護師さんが同席していようと、冗談を飛ばしてくれたりしたのに。やはり、緊張から真剣になっていたのか?


 そして始まったリハビリの日々。辛抱の要る時間だったけど、これからは良くなる一方。頑張りがいしかない。


 けれど、彼には会えなかった。


 泣きはらした彼のご両親には会えたけど・・・。


 彼。


 交通事故で死んじゃったんだって。


 健康に気を使って、規則正しい生活を心がけて、彼女のために整えた体は、1台の酔っぱらい運転のために一瞬で潰されてしまった。


 手術に挑む彼女の精神に最悪の悪影響を与えるだろうから、決して口外されないよう、看護師間でも意思統一されていたそうだよ。


 彼女は悲しかった。リハビリに行くのも億劫おっくうになるくらい、しんどかった。


 それでも、頑張ったんだよ。だって彼が成功させてくれた手術だもの。


 ・・・ねえ。


 1つ、不思議があるのに気付いたかい?


 彼は、手術前に亡くなった。


 けれど彼女は、彼に麻酔をしてもらっている。


 これは彼女の記憶違いだろうか。ただの勘違い?


 ・・いくら手術着をまとっていたとは言え、彼氏を別人と間違えるなどという事があるだろうか。


 真相は、謎さ。答えはどうやっても出ない。


 でも。


 彼女を守ってくれたのは。彼女を、死んでも助けたかったのは、誰なんだろうねえ。



 それじゃ、次。藤宮さんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ