初めての学園
僕は、ハマリエルの父親、今は僕の父親でもあるテュールと《第一学園アルカディア》に向かって歩いていた。
「ルキア着いたぞ。ここが《アルカディア》だ」
「ここが…!」
目の前には広大な敷地が広がっていた。あとから聞いた話だが、ダグザ邸の約40倍あるそうだ。
「高い建物が多いんだな」
「ああ、そうだな。あの中央に聳え立つビルが見えるか?」
中央…。あれか。かなり大きい黒色のビルだな。
「あれは、学園中央施設。どの学園にも存在する、重要な建物だ。あの中には理事長室や教職員室、教官、職員の住まいもあの中にある」
「へぇー。あまり生徒は近づかなさそうだな」
「やっぱり部外者から見てもそうなのか…。」
実際、そうだったらしい。
中央ビルの真下に着くと、その大きさに再び驚いた。
「すげぇ威圧感」
「だろうな。87階あるからな」
「そんなあるのか」
都会の高層ビル群でもそんなにあるか分からないぞ。
「ああ、そうだ、所属している人間じゃないと、自由に行き来出来ないようになってるからな」
「どうやって入れと?」
「部外者の場合、内側から許可を出せば入れるから、ちょっとやってくる」
そう言って、テュールは建物の中に入っていった。
「ドアが開いている時に入ればいいんじゃないのか?」
そう思い、足を踏み入れてみると、
バチッ
「うわっ!」
電気のような膜が張り、中に入れなかった。触れた足はダメージを負い、動かしづらくなった。
「これが、この建物のセキュリティ…。戦争世界なんだから当たり前か」
『お前、何やってんだ』
頭上にあるスピーカーから、テュールの声がした。
『ロック解除したから、もう入れるぞ』
今度は、入れた。
建物の中は、黒一色だった。天井に明かりはなく、光は壁の青い光と、床の白い光のみだ。少し薄暗い。
「なんか…、ザ・組織の基地って感じだな」
『最上階に理事長室があるから、そのフロアの奥の方にあるエレベーターに乗って来い』
再び、テュールの声がした。
少し長い距離を歩いたところに、エレベーターは、あった。
「87階は…。ああ、これパソコンのキーボードじゃないけど、組み合わせて打つタイプなのか。初めて見たな。というかこんなの、ここ以外にあるのか?」
まあ、そんなことはいい。
数分後…
『87階です』
「着いたか」
『一番奥に部屋あるから、そこに入ってこい』
一番奥って、かなりの距離あるよな…
「ここか…。長かったぁー。よし…。し、失礼します」
中は、通路と似たような感じだった。違うところは、壁の光が赤いこと、天井に少ないが、明かりがあること、そして、さまざまな情報が、ホログラムとして浮いていることだ。
その部屋には、テュールと、青い髪と髪よりも濃い藍の目を持つ25歳位の青年がいた。
「やあ。君がルキア君かい?」
「そうですが…?」
「そうか。僕は、この学園の理事長、アルカディア・アルカスだよ」
「あなたが理事長先生ですか。若いんですね」
「そう見えるかい?僕は40手前のおっさんなんだけどね」
「40!?それはマジでわかいわ」
「アルカ。早くルキアにUSSIを渡せよ」
「ああ、そうだったね。じゃあ、アリス。《遷移者》用のUSSIを持って来て」
『かしこまりましたぁ〜』
何も無いところから、女の子が出てきた。
「うわ!」
『もう、驚かないでくださいよぉ〜』
「き、きみ、何者?」
「彼女の説明は僕がするよ。アリスはUSSI取ってきて。…彼女は、僕の幻想支援者。エージェントは、どのUSSIにも初期設定として内蔵されている機能のひとつのこと。テュール。君のエージェントを出してみて」
「わかった」
テュールの近くに、光の玉が出てきた。
「これもエージェントってやつなんですか?」
「そうだよ。テュールのエージェントはスフィアだったようだね」
「ああ、人型だと扱いが難しいし、俺の割に合わなかったからな」
『持ってきましたぁ〜』
エージェントの話をしていると、アリスの声が理事長室の中に響き渡ってきた。
「ああ、ありがとう。はい。君のUSSIだよ」
「ありがとうございます」
それは黒い体に淡紅色のラインが入った、スマホのようなものだった。
「さあ、それを宙に投げてみて」
「はあ」
投げてみると、
『《遷移者》用USSI起動』
電子音声が宙に放ったそれから流れてきた。
『持ち主を特定。……完了。ルキア・ローエングリン。 USSIを再構築します』
電子音声がそう言うと、宙にあるUSSIが形を変え始めた。
『完了。これから先の操作は、独学、又は人に教えてもらうかしてやっていってください』
そう最後に言って、電子音声は黙った。
「これが僕の…!」
「ああ。君のUSSIだよ」
ルキアの手の上にあったのは、色は変わらないが、腕時計型のものだった。