ルキアの能力
僕達は、ハマリエルの家へと歩を進めていた。
「そういえば、あなたの能力って何なのかしら」
「さあ?」
「前の世界での能力だったり、その人自身に関連するような能力だったりするんだけど?」
その人自身のことだったり、前の世界のことだったりするんだったら、記憶喪失の僕に分かるはずもない。
「ちょっと調べに行きましょうか」
「調べるってどこへ?」
ハマリエルが言うには、知り合いがそういったことに詳しいらしい。
「大きな敷地だなぁ」
「そうね。私も初めて来た時、驚いたわ」
僕らが驚くのは仕方の無いことだった。その建物が存在する敷地は、1168875㎡の超広大な敷地なのだから。
その敷地のど真ん中にある館に僕らは足を踏み入れた。
「こんにちはー!ダグザさんいるー?」
ハマリエルが扉を開けると同時に、大きな声でそう言うと、中肉中背の白衣を着た30歳くらいの男の人が奥の扉から出てきた。
「うるせぇ、ロリっ子。そんなでけぇ声出さんでも聞こえるわ」
「あはは。この館広いから。あと、ロリっ子言うな!」
「あ?ロリっ子はロリっ子だろ」
凄い居づらい…
「で?今日は何の用だ」
「ああ、この子の能力を見て欲しくて」
「ああ?このボウズか。能力を見て欲しいって、ボウズ、遷移者か」
「そのようです」
遷移者のことは、多くの人が知ってるのか。
「ボウズ、名前は?」
「ルキア・ローエングリンです」
「ローエングリン、ねぇ。ロリっ子、お前こいつを自分で望んで家族にしたのかw」
「ち、違うわ!《12宮》として、自分の月だったから役目を果たしただけだよ!」
《12宮》としての役目?
「ああ、ロリっ子お前《12宮》だったかw」
「なにがおかしいのよ!」
「いやいや、なんでもねぇよw 俺はダグザ・オラティルってんだ。よろしく。じゃ、能力見てやるからボウズ、こっち来い」
「わかりました」
僕が近付くと、ダグザは空中をいじり始めた。
「ハマリエル。ダグザさん何やってるの?」
「え?ああ |超小型高性能多目的機器《USSIハイパーエキュイ》の説明してなかったね。」
「超小型高性能多目的機器?」
「そ。略してUSSI。それを持っていれば、相手の情報を見れたり、仲間と連絡が取れたりできるの。この世界では、9.98%が持っているという統計があるわ」
おお。それはすごい。
「そして、開発したのが俺ってわけだ」
「ダグザさんが!?」
後ろをふりむくと、誇らしげな顔をしたダグザがいた。
「まあ、このクソじじいにしては、凄いものを作ったわ」
どんだけ嫌ってんだ…
「あとであなたにも、買ったげるから安心して」
「マジか。ありがとう」
ピコンッ『解析完了』
機械音がし、どこからか女性の声が聞こえてきた。どうやら、能力が分かったらしい。
「は!?マジかよ」
「どうしたの?クソじじい?」
「いや…、その呼び方なんだよ…。…まあいいや、解析結果を発表する」
このダグザの反応から凄い能力だっていうのはわかる。
「スキルランクS。使用者適合率426%。能力は、『1度見た能力を自分のものにする能力』」
「え!?なにそれ!?超チート能力じゃん!それに、適合率420%って何よ!聞いたことないわ!」
「ああ。俺もこんな凄いのは見たことがない。」
「そんなに凄いんですか?」
「ああ。まず、この結果が出るまで、世界での適合率は最高257%だった。それもスキルランクAAA+で、だ。遷移者でランクSは珍しくないが、適合率が異常だ」
あれ?僕、すごい逸材じゃん!
「これから僕はどうすれば?」
「まず、この能力は、他の人の能力を見なければならないから、ロリっ子、『ザヴィヤヴァ』見せてやれ」
「えー。あれ疲れるから嫌なんだけど」
「そうは言っても、聖戦になったら使わなきゃだろ」
「はあ。仕方がない。クソじじい相手になってよ」
「ああ!?俺に死ねって言うのか!」
「バトルエリア展開するんだから大丈夫でしょ!あと、他に誰がいるってのよ!」
「ちっ。わーったよ、しゃあねーな。」
それからルキア達はダグザの館の前の広場にでた。
「ルキア。ちゃんと見ててよー」
「うん。分かった!」
「じゃあやるか!」
『USSI戦闘準備!』
2人がそう言うと、紅い閃光と蒼い閃光がそれぞれハマリエルとダグザを包んだ。 目を開けると、僕の目の前には軽装備を纏ったハマリエルと戦士風の装備を纏ったダグザが立っていた。
「バトルエリア起動!」
ダグザがそう叫ぶと、半径200mが虹色の円で囲まれた。
「さあ、いくよ!『ザヴィヤヴァ』ッッ!」
ハマリエルが叫ぶと、無数の小さな機械が彼女の周りを飛び、それらから眩い紅い光線がダグザさんに向けて放たれた。
「おいおい、高出力レーザーかよっ!聞いてねぇ!」
ダグザさん死んじゃうんじゃないか?
「クソッ!バリア展開ッ!」
ダグザが叫ぶと、蜂の巣状の六角形が無数に並んだ水色の映像のようなものが展開された。あれがバリアか。その刹那、映像にレーザーが激突した。
「くッ!」
ダグザさん辛そうだな。大丈夫か?
「バリア最大出力ッ!」
映像が拡大し、色も濃くなった。しかし、そのバリアの耐久力を上回る出力だったレーザーが、バリアを破壊した。
「ぐああああッ!」
ダグザにレーザーが直撃した。その数秒後、辺りの虹色の円は消え去り、2人の武装も解かれた。
「おーい。クソじじいー。早く起きろー」
なんて心がない娘なんだろう…
「ああ!?ちっ。俺が抵抗しないからって、お前本気でやってんだろ!」
「えーw?そんなことないよーw?」
「やってんじゃねぇーか!」
「まあそんなことより、ルキア、今の覚えた?」
「多分ね」
「じゃあ、試しに打ってみて」
「でも、装備ないけど…?」
「打つだけなら、装備はいらないよ」
そうか、反動とかも無いのか。
「じゃあ、『ザヴィヤヴァ』」
刹那、無数の小さな機械が僕の周りを囲い、そこから眩い蒼い光線が発射された。
「おお!マジでコピーするのな!」
「それに、私より出力が大きい気が…?」
僕が打ち終えると、後ろには大勢のギャラリー (ダグザの助手)がいた。
「あんな出力見たことない!」「彼は誰だ?」「遷移者の人らしいよ」「遷移者だって!?リアルで見るの初めてだ!」
あれ?普通に打っただけなのに、めちゃくちゃ驚かれてる…?どうなってんだ?
「おいっ!ボウズすげぇな!」
「あ、ありがとうございます…?」
「ルキア、あなた私の所属する学園に来ない?そこでなら、その力活かせると思うわ!」
「あの理事長なら、お前を欲しがるだろうしな」
学園?