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ちぐはぐ



初めて二人で出かけた日の翌日、私は彼にお礼のラインを送った。


しばらくすると返事が来て、今週は週末も出張があるから来週の平日の夜にでも出かけないか、と誘われた。

それからはぽつぽつとラインが来るようになり私は時々もらえるそのラインが小さいころにもらったサンタクロースのプレゼントの様でとてもワクワクしていた。


約束の日も、ただ会えることが嬉しかった。授業が終わってから図書室で宿題や今日の授業のノートを整理して時間を調節して、待ち合わせの場所に向かった。

前と同じ彼の会社の近くの本屋で、7時に会う約束をしていた。


彼の会社は私の通学路の途中にあったから、途中下車して駅を出た。

その時間帯はちょうど帰宅する人達のラッシュアワーと重なっていたから、駅からの道はがやがやしていて駅に向かう人たちの流れに逆らって道を歩くのは少し神経を使った。


待ち合わせの場所に少し早い時間にたどり着いた私は本屋の中をいろいろと回ってみることにした。

何か落ち着かない気持ちになっていたからだ。

前よりは少し遅い時間とはいえ、同じ場所での待ちあわせであるのに、私は前回とは何かが違うと感じていた。


人が圧倒的に増えている。しかもスーツを着た人ばかりだった。

前に待ち合わせしたときは、日曜日だったからオフィス街とはいえ、休日出勤だしスーツを着た人はまばらだった。みんなのんびりと本を選んだり、立ち読みしたりしていたのだ。

けれど、今は平日で夕方で何か気忙しい。

人の間をすり抜けるにも気を遣う。

殺伐とした雰囲気に心細くなって、早く悠司さんが来てくれたら、と願いながら、入口付近に移動した。

本屋の一階には新刊のコーナーでその店で話題になっている本が並べてある。その中から気になった本を見つけて中身を眺めながら待った。

しばらくすると、フッといい香りがした。

あっと振り返ると悠司さんがニコニコと立っていた。


手に取っている本を見ると、

「その本、面白かったよ。家にあるから今度貸してあげる」と言った。



「ありがとう」と私はお礼をいいながら悠司さんの笑顔にほっとしていた。


おや、という顔をして私を眺めた後、


「・・・待たせたね・・・行こうか」と言いながら店の外に出た。


それから、悠司さんと、「どこで食べようか・・・」と言いながらと駅の方に戻っていく。


連れて行ってくれた店はこの前の店とは違って、アットホームで親しみやすいレストランだった。

駅ビルだからそこそこおいしくて外れのない店が集まっている。そんな中の一つだった。

スーツ姿も多いが、家族連れも何組かいて、居心地は良さそうだ。


店員さんが私と彼を一瞬見た後、席に案内した。


「・・・兄妹とかそんな感じかな」


「援交っていうのはないの?」


「まだ、悠司さんはそんな年齢じゃないでしょう?」


私は制服姿で一緒にいる人はスーツだ。

周りに私たちがどんな関係か見られるなんて私はすぐには気づかなかった。

私は着替えを持ってこなかったことを後悔した。


でも、本屋さんで私を見た時、悠司さんは気づいたんだ。

自分の行く店が制服姿には合わないってことが、

それで、会社の近くで待ち合わせしたのに駅の方に戻って来たんだ。


二週間ぶりに会えたのは嬉しかったけど距離を感じてしまった夜だった。


食事の後、二人で同じ、電車に乗り同じ駅に降りた。

社会人と学生、しかも高校生の組み合わせ。

彼は気にしないふりをしていたけど、無理してたんじゃないかと心配になる。

それでも、家まで送りたいから、と悠司さんは、バスに乗り私の家まで送ってくれた。

家の門の前で「送ってくれてありがとう」と伝えると、

嬉しそうな顔で私を抱きしめた。

「なんか、いけない気になってゾクゾクする」

体を離して、いたずらっぽい顔で私の耳元でささやくと、

そのままちゅっ頬にキスをされた。


驚きで固まった私の顔をみて笑うと、

「さあ、入って」と門を開けて、私を門の内側に収めた。




「あゆみ、こんな本読んでたっけ?」

次の日、兄貴から預かった、と言ってましろは私に本を渡した。

本屋で立ち読みしていたものだ。

「うん・・・まあ、人気あるし」と言いながらつい口ごもる。


でもさあ、とましろは笑いながら言った。

ビジネス本なんて読まないよ、私ら高校生は。

あはは・・・と私は乾いた声で笑った。

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