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ユニオン・マギカ  作者: 紫月紫織
氷樹の森の大賢者
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4.赤茶髪の守護剣士

章の作成を忘れていたので追加しました。

今までずっと読む側だったので投稿周りが新鮮です。


 私がエウリュアレ村で生活を始めてから数日が経った。

 ノフィカが一緒に行動するということもあって、最初は村の人からいろんな種類の視線をもらっていたものの、次第にそれらは落ち着きつつあった。

 代わりに向かってくる視線に興味というものが混ざり始めた以外は概ね平和であると言っていい。

 変な衝突などない程度にはうまくやれているはずだ。


 寝泊まりする場所には、滞在が長くなるだろうという理由で空き家を一つ貸してもらうことになった。

 作りも調度品も簡素なものでベッドと台所と暖炉、テーブルと椅子が二つあるだけ。

 私一人ならちょうどいいというかむしろ広いぐらいだった。

 まさか初めての一人暮らしが異世界になるとは夢にも思わなかったけどね。


 火起こしとか大変だろうと思ったけれど、その辺の生活道具に魔道具と呼ばれる物がしっかり普及しているらしく、意外と問題にはならなかった。

 当たり前といえば当たり前なのだが、水道が存在しないため井戸から水を汲んで家まで持って帰るのが少々大変なことと、その日に使う分の薪を割るのにまだ慣れないことぐらいだろうか。

 魔道具は周囲のマナを使用するらしく、短時間の利用に留められているのだという。


 一番気になることといえばお風呂がないことで、村の人達は水浴びをする程度で済ませている。

 お風呂がないなんて由々しき事態だ、そうか私はお風呂をこの世界に伝えるためにこっちに来たのかとか変なスイッチが入ったりもした。

 今のところ一番の野望である。


 パンとハムと目玉焼きと菜っ葉を挟んで作ったシンプルなサンドイッチ、薄めに入れたハーブ茶で朝食を済ませた頃にノフィカが訪ねてきたが、初めて見る男性が一緒だった。

 赤茶色の髪に焦げ茶の瞳、体つきはがっしりとしていて鍛えられていることが人目でわかる。

 それなりに傷がついた革鎧を着て腰には長剣が下げられているところを見るとそれなりに経験を摘んでいる剣士なのだろう。

 騎士には見えないから傭兵か、村の用心棒といったところだろうか?

 それにしてはならず者っぽい雰囲気がない、というよりもエウリュアレ村の人と似たような空気を感じる。


 ただ少し威圧感のようなものを感じ、なんとなく距離をとりたくなった。

 こういった人を近くで見ない所為だろうか、前の世界でも不良とか大嫌いで近づきたくなかったしなぁ。

 多分気のせいなのだろう。

 彼と目があって少しするとその感覚もふっと消えてしまった。


「おはようございますリーシア様」

「ああ、うん。おはようノフィカ、えっと……そっちの人は?」

「守護剣士のゼフィア・エフメネシアだ、お初にお目にかかります女神様、でいいのか?」

「ゼフィア、貴方はもうすこしカレンさんからちゃんと作法を習うべきです」

「えー」


 漫才かな?

 なんか見た目は結構いい男なんだけども、なんか性格がちょっとズボラというか残念っぽいぞ。

 私が言うのもなんだけど。


「えっと、まず守護剣士ってなに?」

「え、しらねーの?」

「リーシア様は神代の方ですから、現代のことには疎いんです」


 らしいです。

 神代のことも正しく知ってるかわからんけどね。


「なるほどねえ。守護剣士ってのは簡単に言うと村を守る仕事についてる連中だな、腕っ節に自信のある連中だと思えばいいよ」

「なるほどね」


 小さい村となると特に重要そうな役割ですな。


「エウリュアレ村の代表の一人でもあります」

「代表の一人?」

「はい、基本的に村や町の長、神事を司る巫女の筆頭、守護剣士のまとめ役がそれぞれ代表となります。基本的にどこでも3人いることになりますね」

「……つまり、村長とノフィカと……ゼフィアさんでエウリュアレ村の代表のってことか」


 ああ、察した。

 ノフィカ……苦労してるんだろうなぁ。

 村長さんはともかくゼフィアはなんか細かいところをフォローしないと不味そうだし。


「ま、俺は一時的に担当してるにすぎないからな。カレンさんが復帰するまでの繋ぎだし」

「カレンさんからあとを任されててその言いようですか、もう少し自覚を持ってください。リーシア様、ゼフィアはこんな感じですが剣の腕は確かですのでご安心を」

「ああ、やっぱそうなんだ?」

「やっぱり? なんだ、わかってて黙ってたのか。思ったより人が悪いなぁ」

「へ?」


 がりがりと頭を掻きながら言うゼフィアだが、わかっててとはどういうことだろうか。

 私はただ、ちょっとバカっぽそうなのにまとめ役的な立場を任されるってことはそれだけ腕利きってことなんだろうと思っただけなんだが。

 いやぁ、ただの馬鹿に務まる役職でもないだろうからそれにかけての腕はいいんだろうと。


「さっき結構強めに殺気を向けてみたんだけど平然としてたから、スゲぇ実力の持ち主なのかめちゃくちゃ鈍いのか判断に迷ってたんだよな」

「ちょっとゼフィア、貴方なんてことしてるの!?」


 いやゼフィアさん、それ多分盛大な誤解。

 めちゃくちゃ鈍いって認識が正解だよきっと。

 なんとなく嫌な感じがした程度にしか感じなかったもん。

 そんなことを考えていたらノフィカとゼフィア何やら言い争いを始めていた。

 これはちょっと長引きそうかな、そっと見守ろう。




「すみません、おまたせしました」

「やー、若い夫婦のじゃれあいっていいねぇ」

「あ、あの……何か誤解してらっしゃいませんか?」


 私の言葉に挙動不審になるノフィカをかわいいなぁと思いつつ頭を撫でる。

 この子時々やたらオロオロするところがあってたまにいじりたくなるのよね。

 いやまぁ実際にそういうじゃれあいにしか見えなかったわけなんだけど。

 まだそういう関係じゃないとか素直になれないとかそんな感じなのかな?


「で、そのゼフィアさんが」

「さんとかむず痒いから付けなくていいぜ?」

「む。その守護剣士のゼフィアが来たのは何か理由でもあるの? 顔合わせ、ってだけじゃないわよね?」

「最近ノフィカが旅人に付き添ってるって聞いてどんな奴か確認しておこうとおもってな、神使いってのは聞いてたけどお偉いさんってのはあんまり信用してねぇんだ」

「ああ、ノフィカが心配だったのね」

「俺いまそんなことを一言もいってねぇよな?」


 いやいや、つまりそういうことでしょう?

 若いっていいねぇ。


「ま、他にもあるんだけどな。今日はノフィカの付き添いだ」

「今日は村から少し離れた場所に薬草を摘みに行くので、ゼフィアにその護衛をしてもらうことになっているんです。ですので今日はご一緒できないのですが……」

「じゃあ今日は私がノフィカを手伝えばいいのね?」

「「は?」」


 二人の疑問符をよそに私はいそいそと出かける準備をする。

 家を借りてから数日、こそこそとインベントリからアイテムを取り出しては整理しているため、少しずつだが荷物が増えているのだ。

 昨日ノフィカに、どこから荷物を持ってきたのかと聞かれたので、神代の者が持つ道具袋があるとだけ言ってごまかしておいた。

 今の私のインベントリは軽くパンドラボックスだし、公にしても面倒ごとのタネにしかならなさそうだからね。

 無論部屋に出してあるのもそこまで大したものではない。


「ていうかお前マジでついてくるつもりなのか? 村の外だから安全ってわけじゃないんだぞ?」

「この村にいれば絶対安全ってわけでもないでしょう、それはここ数日で理解したつもりよ」


 この数日の間に、村の中にヴァーラという鳥系の魔物が数度飛来して弓で射落されたり剣で切り払われたりということに出くわしている。

 さすがに空からでは事前に防ぐことも叶わないらしく、農作業をするときも一人は弓を構えて待機していたりするようだった。

 開拓民てすごいねぇ。


「それはそうだけどなぁ」

「特に巫女とか守護剣士でないと出入りできないってわけでもないんでしょう?」

「それはまぁ、そうなんですが……本当によろしいのですか? 私の仕事に付き合わせてしまって」


 むしろここ数日私の案内でほぼ拘束されていてノフィカの仕事が滞っているのではないかとちょっと気になっていたので、薬草摘みぐらい手伝わないとさすがにアレな気がするというのが本音なのだが、そういうことならノフィカが気にしないように別の理由についても言っておこうか。


「私も村の外で見たいものがあってね、私の目的でもあるから気にしなくていいわよ」

「見たいもの?」

「ま、色々とねぇ……」


 流石に魔物が見てみたいとか、それと戦うところが見てみたいとは言わないでおく。

 欲を言うなら自分が剣を使えるか、心構えまで含めて今の自分を確認しておきたいというのが一番の理由だ。

 自分で何度も振ってみて、所作にこれといった問題は感じられなかったため、おそらくスキルによる補正がはいっているのだが、それがどこまで通じるのかもまた確認しておかなければならない。

 それも出来る限り取り返しのつく状況で。

 今はゼフィアという守護剣士が居て、ノフィカという治療術の使える巫女が居る、この条件を上回るほどの好条件はおそらくそうそう見込めないだろう。

 あとはノフィカを危ないところに私のために連れ回したくないから、ノフィカの用事があるならそれについて行く方が自分として気が楽だ、とか。


「万が一の場合は俺はノフィカを優先するぞ、それでもいいか?」

「当たり前でしょう、ちゃんとノフィカのことを守りなさい」


 ノフィカがオロオロしているがあえて無視。

 私は多分雑に扱っても簡単には死なない。

 根拠としては、ノフィカのステータスを知ることができたからだ。


 ここ数日の間、夜の時間にアイテムを整理していたところ、アイテムの詳細データを確認できることに気がついた。

 ゲーム時代のアイテムだから設定が残っているのかと思ったら、なんと同じやり方でこちらの家具についての情報を引き出すことができるではないか。

 作った人とか、耐久度がどうとか、あろうことかフレーバーテキストじみたものまでついている。


 そこで自分のスキルを確認してみたところ、スキルについても同じように確認ができ、結果としてこれが万物の根源(ルータスノーツ)というスキルによる物だと判明した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

万物の根源(ルータスノーツ)

プロフェッサーのパッシブスキル、この世界のあらゆる存在を分析する。

一部の敵性存在や隠蔽が施されている場合は制限がかかる。

敵性存在の場合は制圧、隠蔽の場合はそれらの解除をすることで分析可能になる。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 で、これを使ってノフィカのステータスを確認してみたのがこれ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

名前:ノフィカ・フローライト

職業:巫女

称号:エウリュアレの巫女

年齢:17

性別:女性

レベル:28


パッシブスキル

ウィルヘルム共通語

魔術適正(マジックシンク)

エウリュアレの祝福:水の刻印・再生の刻印を使う際のマナ収束力にボーナスを得る(10%)

刻印魔術(中級)


刻印

【水】【再生】


ステータス

ヒットポイント:1190/1190

マナ収束力:1460(730)

体内マナ:91/108

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 比べてみて自分が限りなくチート状態に近いだろうことがよくわかった。

 ステータスの伸び率がどれぐらいなのかわからないけど、レベルを基準にステータスを4倍にしてみても私のステータスには全然届かない。

 他のサンプルがないから結論を下すのは早計だとしても、よほど突出している人でもなければ私ほどのステータスを持ってる人ってそうそう居ないんじゃないかな?


 ……そういえばそこにもサンプルになりそうな人がいましたね?

 さぁ、私にすべてさらけ出すのですふははははー、どんなキャラだよ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

名前:ゼフィア・エフメネシア

職業:剣士

称号:エウリュアレの守護剣士

年齢:19

性別:男性

レベル:42


スキル

ウィルヘルム共通語

剣術適正(ソードシンク)

カレン流双剣術

エウリュアレの祝福:自然治癒能力の向上(倍速)


刻印

【風】


ステータス

ヒットポイント:3440

マナ収束力:150

体内マナ:79/98

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 こっちはかなりの物理戦闘系っぽいというか……脳筋っぽい。

 魔法に関係してそうなマナ収束力ってのが魔術師系と思われるノフィカとくらべてもひどすぎない?

 ノフィカと違って刻印はあるのに刻印魔術って項目が無いわね。

 というか双剣術って……。


「ねぇねぇゼフィア、剣一本しか持ってないけどいいの?」

「……お前、なんでわかった?」


 私の言葉に対してゼフィアは驚きを隠せなかったのか一気に警戒心を高めた鋭い目で私を睨んでくる、ちょっと怖い。

 けどなんでこんな反応をされるんだろう……ん?

 しまった! 私まだゼフィアが双剣術なんての使えるって聞いてないのにそこを疑問視したらおかしいじゃないか!

 うわぁ、やってしまった……これは今後気をつけねばいけませんよ。


「やっぱ凄腕の使い手ってのは立ち振舞とかそういうの見ただけでわかるもんなのかね。確かに双剣の心得はあるんだが、俺の自前の剣はこの一本しかなくてな……今新しい一本を作ってもらってるんだがまだ届いてないんだよ」


 あ、なんか更に余計な誤解を招いた?

 能力とかスキル覗き見したからですとか流石に言えないけど、そうか剣がないのか。

 そういえば村に見た感じ鍛冶場ないもんね。

 あれば金属を叩く音が聞こえたり煙が登ってたりするだろうし、そもそもあれって相当いろんな材料と設備いるもんねぇ……輸送に頼ってるならすぐには手に入らないってわけか。


「うーん、一本で戦うのと双剣だとやっぱりだいぶ違う?」

「そりゃあな。俺は今まで片手剣だけでやってたからこれで戦えないわけじゃないが、手数が変わるし何より左手が遊ばなくなるからな。盾を持たないなら双剣を学べってカレンさんにしごかれてやっと及第点もらったところなんだよ」


 及第点て、大丈夫なのかなそれ……比較対象としては間違ってるだろうけど、レベル42って大樹世界(ユグドラシル)だと初心者あつかいだしなぁ。

 これはインベントリから一本適当な剣を見繕って貸し出したほうがいいか?

 けど出すものは吟味しないとなぁ。


「ねぇ、貴方の剣ちょっと見せてもらえる?」

「ん、抜いて見せればいいのか?」


 言うが早いかゼフィアは剣を抜いて見せてくれた、そういう意味じゃなかったんだけども問題はあるまい、見せてもらったという事実を作っておきたかっただけだから。

 どれどれどんぐらいの剣かね、と思いつつ万物の叡智(ルータスノーツ)を起動。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

銘:シルバーソーン+3

ベース武器:銀の剣

祝福:水神(耐久力減少-10%)

攻撃力:95(80)+15

耐久力:1257/1700(1200)

属性:聖・水

固有特性:なし

永続付与:なし


製作者:グラン・スキット

品質補正

攻撃力:+15

耐久力:+500

所有者:ゼフィア・エフメネシア


来歴:

前守護剣士であるカレン・ラキウスから守護剣士の座を受け継ぐ際にゼフィアが賜った剣。

ドワーフの名工であるグラン・スキットが上質の銀から鍛え上げ、ノフィカが水神の祝福を与えた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 性能だけ見ると悪くはないね、私の持ってる中にこれと似た感じの剣あったかなぁ……。

 そんなことを考えながら、私はインベントリの中を調べ始めるのだった。


ちなみにリーシアが現状腰からさげてる剣、スペルキャストはこんな感じです。

今回なんかデータばっかりになってしまった感じですね、反省。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

銘:スペル・キャスト+5

ベース武器:グラディウス

祝福:なし

攻撃力:115(80)+35

耐久力:1892/2700(2200)

属性:氷

固有特性:魔法保持

永続付与:なし


製作者:エレオラ・バーミリオン

品質補正

攻撃力:+15

耐久力:+500

所有者:スノウ


来歴:

剣と魔法の両立の難しさに心折れていた友のために、拙い鍛冶師エレオラ・バーミリオンが全身全霊を込めて打った逸品。

詠唱済みの魔法を一つキャストしておき、任意タイミングで発動できる。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


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