表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

5話:再び現れる彼女

 私立三ツ谷学園には校舎が三つある。

 それぞれA、B、C棟と何の捻りのないネーミングだが、まあ規模が大きいのは言わずもがな。

 生徒会室は生徒校舎であるB棟の右となりにあるC棟――部活動、並びに委員会活動を行う場所――の三階にある。

 渡り廊下でC棟に向かうと、すでに生徒会室の扉の前には、三人の生徒が並んでいた。

 中に入らないということは、もう一組が中に入って手続きをしているということか。

 

「結構出ようとする生徒が居るんだな」

「まあ神威使って燥げるイベントといえば、このトーナメントか、文化祭ぐらいっすから」

「そういえばそうだったな」


 全然分からないが、とりあえず相槌を打っておく。

 知らねーよ、とか言ってしまうと、またおかしな人を見る目で見つめられるだろうからな。

 そういうのは真っ平なんだ。


「失礼、しました」


 と、少しやるせなさそうな声を出して、三人の生徒が出てくる。

 ブレザーのネクタイについているピンが緑色なので、恐らく一年生だろう。

 ちなみに二年生は赤、三年生は青で、これは入学当時に決められるカラーだ。卒業生がいなくなれば、それを来年度の新しい一年生が引き継ぐ。


「あの様子を見ると、残念だったみたいですね」


 と、小声で恭平がつぶやいてくる。

 まあ結果は聞かなくても出ていく時の様子で分かっちゃうよな。

 しかし! そんな中でもマキちゃんは常に俺に向かって笑顔です。

 はぁ~、癒されるぅ。


「前の生徒が入っていきましたね」


 俺がマキの微笑みに惚れ惚れしていると、前の三人組が生徒会室へと案内されていた。

 その案内している人は、まあ、なんていうか。

 言わずもがな。


「あら、桜井さん。奇遇ですね」


 今日のお昼にばったり出くわした生徒会副会長、立花菖蒲殿である。

 彼女はそのまま俺たちの前に並んでいた生徒を入れると、自分は戻らずに俺たちの元へと寄ってくる。

 いいの? 選考しなくていいの?

 まあそのまま出てくるということは、別にいいのだろう。

 

「奇遇っていうか、まあ生徒会室に来るってことはこうなるのは必然だよな」

「それもそうですね」


 俺と立花が坦々とした会話を始めたところ、両脇の二人が固まった。

 美人だから気負ってんのか?


「どうしたお前ら」

「どうしたって、何で副会長と仲良さげなんだよオイ」

「雄二。いつもの口調が無くなってるぞ」


 雄二のあの口調はやっぱりのところキャラ付であり、戸惑った時や本気の時は口調に舎弟感が無くなってしまうのは、今に知れたことではない。

 

「今まで彼女と接点なんてありましたっけ、同士」

「なかったよ。今日まで」

「お昼にそこの神威ちゃん関係で仲良くなりまして」

「成程、マキちゃん様々ってことっすね」


 口調の戻った雄二にそう言われて、そういえばそうだなと今更ながらに実感する。

 マキが居なければこうして彼女と会話することは、恐らく学園生活中には無かったかもしれない。

 そして立花は「マキちゃんって言うんですね」と微笑んでいた。


「ところで、なんで二人は立花のこと知ってるの?」

「「……本気で言ってます?」」


 真顔で、シンクロ発揮されて、小馬鹿にするように俺に言ってくる二人。

 あ、やっぱり有名人なんですね。

 何で俺はこうも、交友関係というか、外聞に疎いのだろうか。

 そして女の子の情報に変に・・詳しい恭平が、そのまま説明してきた。


「二年生の成績上位者として常にトップに名前が挙がり、生徒会副会長であり、なおかつ去年の神威トーナメントでの優勝したグループの一人ですよ、彼女」

「いやぁ、確かにあれはすごかったすよねぇ」


 うんうん、と頷くようにして神威トーナメントの情景を思い出しているのか、雄二も腕を組みつつそんなことを呟いた。

 へぇ、全然知らないからわかんない。


「やっぱり私のことを知らなかったのは、桜井さんぐらいでしたね」


 くすっと立花は品のある笑みを浮かべて、俺にそう言ってくる。

 本当に申し訳ございませんでした。


「しかし貴方たちがここに来るということは、つまり……」

「つまりはそういうことだ」


 この二人にそそのかされてな、と一言付け加えて。


「しかし大丈夫なのですか?」

「何が?」

「まだ神威を発現させて初日。今からクラスマッチまでざっと1か月ないでしょう。それまでに彼女の権能を把握し、理解し、戦闘に活かしきることが出来ますか?」


 なるほど。彼女の言うことは最もだ。

 どこかで読んだことがある。戦闘に必要なのはまず自分を知ることであり、敵の分析はその後に行うものだと。

 敵を知っても、その敵に対して何か出来なければ意味ないからだ。自分自身をより知っておけば、何か対抗できる術が出来るかもしれない。

 それに戦いとなると、自分は経験したことないが、なんかあるんでしょ?

 その、ひよっこは引っ込んでおれ!? 的な?


「やっぱり俺、今回――――」

「何言ってんすか。二人でフォローするって言ってるじゃないっすか」

「そうですよ。それに、マキちゃんを見てください」


 マキを? 何で?

 とか思って彼女を見ると、いかにもやる気があります! と言わんばかりに、腕をシュッシュっと突き出したり引いたりしていた。

 和む。なんて破壊力だ。

 って、そうじゃない。彼女がやる気なのだ。パートナーであろう俺が引いてどうする。


「引けない状況なんで、今回はフォローしてくれる二人に合わせます」

「そう。でも、審査で通るかどうかは別ですよ。以外と今年の生徒会長、厳しいですからねそういうこと」


 立花が坦々とそう伝えてくる。

 

「大丈夫っすよ。マキちゃんは並みの神威とは違うっすからね!」

「その根拠はどこから?」

「勘!」


 雄二の一言によって、立花さんの非常に白けた表情が完成した。

 そういう顔も出来るんだな。


「失礼しました」


 ダラダラと廊下でそんなことを会話していると、扉越しに聞こえてくる生徒の声。

 どうやら俺たちの前に入った生徒達の審議が終わったようである。

 声色は至って普通だったので、出場できるか出来ないかは分からないけど。

 そのまま出てくる女生徒三人。扉を出てB棟の方へと歩いていく。

 何歩か歩いたあと、露骨なアピールみたいなものが見えたので、恐らく出れるようになったのだろう。

 良かったね。


「ていうか審議ってやつは、こんな狭い部屋で出来るのか」

「それは入ってからのお楽しみですよ、桜井さん」


 俺の何気ない一言に、立花がニッコリと微笑みそんなことを呟く。

 ふぅん。まあ、何か策みたいなものはあるのだろう。

 そんなわけで立花が部屋を開けて、「どうぞ」と小さい声で生徒会室へと招く。

 意気揚々に雄二と恭平が進む姿を見て、俺もマキちゃんと一緒に生徒会室へと進んだ。




明日も更新します!

次回、ようやくマキちゃんの本気が……!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ