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12話:久しぶりにゲーセン行きます

「さて、そろそろ今日あたり行くっすよ奏多っち」

「どこにだよ」


 突然のことに俺はとりあえずそんな一言を零す。

 放課後。授業が終わって掃除もして、そろそろ帰ろうと思っていた所で、雄二から声が掛かった。


「そりゃもちろん、ゲーセンっすよ」

「……ああ、なるほど」


 最近はなにかと神威が付随してばっかりだったからか、こうした以前のような日常的会話をされることにたまに驚いたりする。

 ゲーセンね。そういえばマキちゃんが来てから言った覚えがないな。

 昔はそれこそ、週二くらいの頻度で格ゲーをやってたものだ。月五千円のお小遣いの五割くらいは使っているはずである。


「いいな。最近行ってなかったし」

「おー。奏多っちからそういう風に行きたいと言われたのは久しぶりっすね」

「そうか?」


 うーん。そんなことは無かったと思うけども。

 結構ゲーセンには行っていた覚えがあるし、ここは前の世界とはちょっと違うパラレルワールドだとしてもだ。

 神威以外に差異が少ないなら、そこそこ通っているんじゃ……。

 まあいいか。そんなことはどうでもいい。

 今が大事なのだ。いつもの格ゲーと音ゲーやりましょう。


「ところで、恭平は?」

「なんか明日からどっかでアニメのイベントがあるからって、速攻で家に帰ったっすよ」

「――――ああ、なるほど」


 なんていうか、一気に元の日常に戻った気分である。

 これはこれで素晴らしい。


「じゃあ仕方ないな。行こうか」

「……あそこでチラチラこっち見てくる新庄は――――」

「放っておけ」


 よくわからんが、アイツと関わってると面倒な気がする。

 今日のところは無視しておこう。




****




「俺っち、神威とプリクラ取ったの初めてっすよ」

「ていうかプリに写るんだな、お前」


 俺の一言に、隣で浮いていたマキは首をぶんぶんと振る。


「それにしても、いきなりプリクラ撮りたいとか言うと思わなかったぞ」

「へへっ、マキちゃんのような可愛い子とプリ撮るのが夢だったっすよ。それに男だけでプリクラ撮っても……」

「最近じゃ、女子専用とかあって男だけだと入りにくいしな。マキ付随で良かったな」


 いわゆる、あすなろ抱きというものを俺にかましてくるマキちゃんを撫でつつ、俺は最近のプリクラ事情を語る。

 まあ、大抵プリクラなんて女子に誘われない限り撮らないし、別に良いだろう。


「さて、とりあえず何する? MeiMeiか? それともマックスブーストか?」

「今日のところは、メルティブラッディするっすよ」

「ほう、渋いのを出してくるな」


 メルティブラッディ。

 格ゲーとして出たのはもう何年も前だが、これがまた面白いものだ。

 最近は2on2で戦う格ゲーのマックスブーストに嵌っていたのだが――――いいね。

 そのチョイスはなかなかに渋い。


「俺っち、ちょっとジュース買ってくるっすよ」

「おう」


 先に席でも確保しておこうかな。

 そんなわけでマキを引き連れてゆっくりと移動。

 ゲーセンでも視線というのはマキのお陰で集まりやすいが、目の前のゲームに一生懸命になっている奴も多く、そこまで気にならない。

 何より、全然知らないけどとりあえず話しかけてくる、という妙にコミュ力が高い奴がいないのも素晴らしい。

 学園だとやっぱりいるのだ。男女構わずそういう輩が。

 そういう手合いを追い払うのは面倒なのである。


「……あれ」


 ふと目につく人の集まり。

 そこには四人プレーヤーが台で集まってゲームをしているのだが、明らかにそいつらを見る周りの目が不機嫌そうだ。


「代わってもらえない、か」


 たまに、ごくたまーに居るのだ。

 台を占拠して何か言われるまで動かない輩が。そりゃ無期限台なら分かるが、あそこまで不況を買っているのもなかなかだ。

 周りも何か言ってやりたそうだが、如何せん、台に座っているメンツが強面というか、ヤンチャながら武闘派というか。

 要するにテンプレートまるだしなヤンキーである。

 四人が着ている服は黒銀工業高校の学ラン。偏差値が低く、ヤバい奴らが多いと噂されるところである。

 

「店員でも呼ぶか」


 そもそもなぜ誰も店員を呼ばないのか。

 いや、呼んでも効果がなかったのか。

 よくわからないが、とりあえず台の確保の前に――――


「どうしたっすか、奏多っち」


 そこでジュース片手に近寄ってきたのは雄二だった。

 しかもちゃんと三つ買っている。マキが大好きな紙パックのコーヒー牛乳も忘れていない。流石である。


「いや、それが……」


 口で言うより見てもらった方が、ということで視線を例のヤンキー四人に向ける。

 俺の視線を追いかけた雄二はその光景を数秒見つめた。それはもう食い入るように。

 そして小さく口に笑みを浮かべ、


「ちょっと一言、物申しに行くっすか?」

「え、あ、あぁ……」


 しまった。流されて肯定してしまった。

 普通に考えてここは後方で眺めておくべきだったのに。

 しかしその一言を呟いた後、ずんずんと彼らの下へ向かう雄二。

 結局放ってはおけず、「俺の背中に隠れるようにな」とマキに行ってから雄二の背中を追いかける。

 雄二が左端で台パンしていたヤンキーに近づく、強めに肩へと手を置いた。


「っちょ! なんでお前途中で動かなくなってん……あ!? 誰だ俺の肩に手をぉ――――」


 振り向いた瞬間、固まった。

 まるで見てはいけないものを見てしまったかのような表情だ。

 強面が一瞬にして威嚇から下手に出る笑みに変わったのは、かなり見物だった。

 ていうか、その反応は何だ。

 肩に手を置かれた男は、恐る恐るといった形で声を出す。


「あ、その……雄二さん。チッス……」

「っは!? 雄二さん!?」


 隣で勝った余韻に浸っていたツーブロック男が大声を挙げる。

 そんな馬鹿な、とでも言いたげな声色だ。

 そして向かいに座っていたプレーヤー二人は、と言うと。


 逃げていた。


 雄二が近づいていく途中で、既に逃げてたのだ。

 最初はトイレを我慢していたのかと思っていたのだが、そうじゃないらしい。

 その様子はというと、逃走資格一級を取得しているかの如く、見習いたいレベルでの逃げ出し振りだった。

 向かい側の二人は雄二が近づくのを見ていたのだろう。途中でゲームを投げ出したのはそれが理由か。

 ボルトも夢じゃない。


「よう。随分楽しそうじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ」

「は、ははは……俺たち、そろそろ、帰ろうかと思ってたところ……なんす……」


 口調がいつもの体育会系の舎弟みたいの奴から、声色低めの、ドスの効いた口調に変わっている。表情はこっちからは拝めないのだが、肩に手を置かれた男は可愛そうなほど震えているのだ。

 隣で逃げ遅れたツーブロック男は、最早この世の終わりだと言いたげな顔をしている。


 ああ、そういえばちょくちょく前から、

『中学でやんちゃしていた』

 やら、

『第二中の獄炎番長』

 やらと、昔の雄二に関する不穏なイメージを聞かされていたが、あれって本当だったの?

 正直ネタでやってんのかと思ってたわ。

 

「おお、そうなのか。それじゃ仕方ねぇな」

「……そ、そうなんすよぉ! 雄二さんと一緒にゲーム出来なくて残念ですわぁ!」

「そ、それじゃ俺たち、この辺で……」


 雄二のその一言で二人が逃げられる! 活路がある! と言わんばかりに顔を輝かせて、即座にくるっと雄二に背を向ける。

 しかしそのまま行かせることなく、雄二は彼らの肩を掴んだ。


「「――――ッ」」


 声にならない声というのはこういうことを言うのだろう。

 硬直した二人の顔の間に体を寄せて、耳元にボソボソと何かを呟く雄二。

 ゲーセンなので生憎と小さい声は聞き辛く、それに関しては何を言っていたのかはわからない。

 ただ雄二が喋って、ゆっくりと肩を離すと、脱兎の如く二人は消えていった。


「……なんなんだろうな、これ」


 肩に乗っかっているマキちゃんに問いかけるも、「さぁ」とでも言わんばかりに首を振る。

 ただとりあえず、他のお客に拍手で見送られる雄二を見て、俺は何だか別の非日常に足を踏み入れた気分だった。



 ここってヤンキー漫画の舞台でしたっけ。




モンハン、卒論、FGOと色んな事柄に追い込まれて更新が出来てなかったことを深く、深くお詫び致します。m(__)m

またちょくちょくと更新させていただきますので、よろしくお願いします!

四月までに神威トーナメント編終わらせられるぐらいには、したいなぁ(遠目)

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