対艦攻撃
ニューホライズンのラグランジェポイントに浮かぶ工場コロニー群。
それはかつて、このシリウス星系へと入植した人々を地球から運んできた播種宇宙船団数百隻の成れの果てだ。
一隻で最大三千万人を収用出来る巨大なシリンダー型コロニーそのものな播種船は、シリウスから脱出する地球派市民を収用するために急ピッチで再改造が進められていた。
シリウス星系における連邦軍の最大補給施設として機能してきたが、脱出を希望する市民が五億に達する現状では、輸送力の確保に向けた手段を選ばぬ船舶調達が進められていた。
今後のシリウスとの紛争に備え、技術者は全て地球へ持ち帰りたい。
そんな思惑が連邦指導部にあるのだろう。
部品取りなどに供されたり、或いはコロニーの外殻自体が巨大な原料供給源として喰い散らかされ解体され、船としてのマトモな機能を残すコロニーは25基。
通常ではあり得ない低温冬眠モードによる限界超過収容を行い、一隻あたり五千万人を収容する計画だ。操船要員や機能維持要員に軽く一千万の人手を要する巨大施設であるからして、そもそもの余裕人員は二千万と言う数字なのだ。
そこへ五千万を突っ込もうというのだから、そもそもに無茶がある数字といって良い。旅の途中で途中で何かがあれば、クルーは他の船に移動して旅を続ける事になる。地球帰還者は冬眠モードのまま気がつく事無く、みんなまとめてあの世行きの酷い旅だと明言されていた。だが、それでも帰還希望者は殺到している。
「で、俺たちの役目は……」
「あいつらがちょっかい出さない様にってな」
テッドたちはハルゼーのキューポラからコロニーを眺めていた。
続々とニューホライズンの地上からシャトルが上がって来ていて、既に地上からは一千万人近い人が宇宙へと飛び出している。
ハルゼーはその人々を低温冬眠モードへ移行させ、カプセルへ納めてコロニーへ収用する作業に従事し続けていた。艦内に余裕があり、また、超光速移動が可能な船舶という事で空母に白羽の矢が立つのだった。
既にコロニーには百万を優に越える人々が収容されている。脱出する人々の処理作業と宇宙船への改造は完全に同時進行で行なわれている現状では、とにかくコロニーへ敵を近づけない事が大事だった。
「来るかな?」
少し不安げなウッディーの言葉が全てを表していた。
シェルでの戦闘で遅れをとることはあり得ない。
だが、油断出来るほど余裕が有る訳では無い。
「……来るだろうな。あいつらこう言うことにはえらく仕事熱心だ」
腕を組んでコロニーを眺めていたヴァルターは、苦々しげな言葉を吐いた。
何より気掛かりなのは、本来シェルを含めた様々な補給品の生産工場であるコロニーを、宇宙船に仕立ててしまっているという事だ。
戦術的に負ける事がなくとも、戦略的な敗北はあり得る。そして、戦略的敗北は戦術的勝利を積み重ねても挽回出来ない。
「誰かがこうなる様に仕組んでるんだぜ。きっと」
ディージョのボヤキは皆の背筋を一層寒くした。
ジックリと絡め取る様に連邦軍を追い詰めていくやり方だ。
最終的に勝てばいい。その後の事はその後で考えよう。
そんな手を使ってくる敵の意図は、単純で明確だ。
――ここから生かして帰さない……
限界を超える機動力な新型シェルにも慣れてきた頃だ。
戦えといわれれば、躊躇する事無く出撃するだけ。
ただ、正直に言えば……
「こんな環境であのシェルは使いたくねぇ」
「あぁ、まだドラケンの方が良い」
ジャンの言葉にドッドが応える。
使い慣れた機材の利点とは、能力の全てを把握しているという事だ。
言い換えれば、欠点の全てを知り尽くしているといえる。つまり、出来る事と出来ない事をパイロットが知り尽くしているのだ。咄嗟の回避や敵の裏を掻く動きや、『コレなら避けきれる』と安心できる事だ。
「あの新型……」
怪訝な表情で隣のテッドに話を振ったウッディ。
聞きたい事は皆分かっている。数度の搭乗で全部把握している。
「タイプ02?」
「そう」
戦うだけなら01より優れてる。新兵器も威力充分だ。
限界機動を行なっているときにもコントローラブルといえる。
ただただ、一点だけが。本当に一点だけが問題なのだ。
「昨日の出撃じゃ右側装甲がそっくり無くなってたぜ」
ドッドの言葉には、恐怖に彩られた自嘲の色があった。
とにかく撃たれ弱いのだ。01と比べれば裸で歩いているに等しい。
「ビゲンか……」
「稲妻と言う意味だな」
ボソリと呟いたヴァルターにステンマルクが解説を加えた。
スウェーデン語をネイティブで理解できる北欧人ならば、その込められた思想までも理解出来るのかも知れない。
「稲妻って……」
驚いたような顔でヴァルター。
ステンマルクは鼻白んだように哂う。
「まぁ、パッと光ってパッと消えろって意味じゃ無い事を祈るさ……
―――――――――――2248年 3月5日 1100
工場コロニーとして機能していたL4の播種船群は、本来の機能を維持したままで着々と宇宙船としての機能を取り戻しつつあった。地球出発時には実用化されていなかった巨大な磁気ミラー型エンジンを搭載し、理論値として亜光速領域まで加速出来ると期待されていた。
「しかし、何度見ても凄いよなぁ」
いつものやんちゃな言葉遣いが影を潜めつつあるロナルドは、シェルのコックピットからコロニー船を眺めていた。この数週間は501中隊の主任務がコロニー群の護衛になっている。
ニューホライズンの上空で行われてきた様々な戦闘は収まりつつあり、連邦軍の艦砲射撃によるシリウス側の厭戦気分は、両軍の戦線に様々な影を落としていた。
「感心するのは良いが、仕事は忘れんなよ」
忘れずにしっかりと茶化すテッドは、完全にロナルドの兄貴ポストに収まった。
ハルゼーから一気にすっ飛んできても、シェルでの移動ならおよそ三ヶ月を要してしまう距離だ。それをハルゼーなら僅か2時間で到着する事が出来る。
「しかし、超高速ドライブってホントに凄いっすね」
「まぁ、ロニーも時に喰われねぇようにな」
一瞬油断して素が出たロナルド。
そのロニーに対し、もう一人の兄貴分なヴァルターが言った。
21世紀の前半に解明されたダークマターの存在を利用する超光速ドライブは、引力と斥力とをダークマターに効かせる事で推進力を得ている。その最高速は理論値で光速の100倍に達するが、僅か1日の航海で実世界では一ヶ月ほど経過してしまう事になる。
――時に喰われた船乗り
超高速飛行が出来る様になって1世紀。宇宙を旅する船乗りの間では、超光速飛行をやり過ぎて現実世界の時間軸から置いて行かれてしまった者を、そう呼ぶのだった。
「……さて。早速だが手順の確認だ」
例によって先頭を飛ぶエディは、各機のポジションに付いて確認した。
「広範囲早期警戒によれば、最短で15分後にはシリウス軍がこのエリアへ到着する。我々はその艦艇に先制攻撃をかける。本来、その為の兵器だからな」
全員が持って出ている280ミリ滑空砲は、本来が艦艇などへの攻撃に使用するための大打撃兵器と言える。シェル同士の戦闘に使っている140ミリは、元々がモーターカノンでは歯が立たないシリウスシェルの、あの強靭な外殻をぶち抜く為の兵器だ。
だが280ミリは違う。恒星間飛行を行なう宇宙船の強靭な外殻を撃ち抜き、ダメージを与えるための打撃兵器なのだ。
「敵の防御火器弾幕を掻い潜り、可能な限り外殻装甲へ垂直に砲弾を当てる。かなり勇気が必要だが、艦艇に垂直となるよう突進し、機体の運動エネルギーも砲弾に加味させる。余りチャンスは無い。一撃で戦闘不能になるよう努力しよう」
いつもの様に淡々と手順を語るエディ。
そのエディ機が持っている兵器は280ミリではなかった。
――なんだアレ……
同じように火砲系の兵器にも見えるが、全体のデザインは荷電粒子系銃火器にも見えるモノだ。エディが持つのだから実験段階の物なのは分かる。だが、その威力までは想像がつかない。
「で、シリウスが持ってる船は……」
「現状では、強奪されたソルボンヌ級空母の2隻。ドゴールとラファール。それに、コンステレーション級駆逐艦のオライオンとケフェウス。そしてペルセウスの3隻だな。シェルだけなら規定輸送力は総勢で120少々だ。何らかの改造を施していれば違う数字になるだろうが、物理的に考えれば多くても140を越えられない」
エディの説明にテッドは息を呑んだ。
シリウス側が幾度も挑戦してきた船の乗っ取り行為により、結果として小型空母2隻と正規駆逐艦が3隻。シリウスの宇宙戦力として機能していた。
「何で沈めなかったんですかね?」
珍しくウッディが口を開いた。
こういう時にはひたすら聞き上手になる男が……だ。
「過去何度か努力したが、その都度にニューホライズンの地上からのシェルによって反撃を受けたそうだ。まぁ、我々にお鉢が回ってこなかったのは、戦列艦護衛の都合だろうな」
ウッディの言いたい事も皆は良く理解している。新型シェルの登場で従来よりも遙かに撃たれ強くなっている。そこへ来てコロニー防衛に501中隊が使われるとなれば、目の仇にしているシリウスにしてみれば最大のチャンスだ。
「……なんだか仕組まれてる気がしますね」
ここに来ていきなり押し付けられた形のコロニー防衛だが、シリウスサイドにしてみれば何があっても阻止したいと言うことなのだろうし、邪魔を入れずに嵩に掛かって押しつぶす作戦を取るなら絶好の条件と言える。
「さて……」
攻撃陣が全滅したとしても、ニューホライズンの上空から501中隊を引きはがせるなら、戦列艦は丸裸に近い状況となる。501中隊の数を減らせるなら重畳。コロニーに被害を出せるだけでも御の字。
そんな状況にも拘わらず、エディは状況を楽しんでいる。そして、あまつさえその言葉にそこはかと無いやる気を感じさせるとテッドは思った。
「シリウスの連中はどう転んでも損しないって辺りが陰湿だな」
ディージョの言葉に皆がひとしきり笑う。
その笑い声の最中にシェルのセンサーが重力震を捉えた。
ダークマターを揺らす重力震は、超光速飛行から減速する際の現象だ。
「来たらしいな」
編隊の最左翼にいたオーリスのレーダーがエコーを捉えた。
レーダー上の大きな反応が空母、小さな反応は駆逐艦だろう。
「先ずは砲撃戦を挑むってか?」
誰かが楽しそうに言うと同時。
駆逐艦の船体に直接装備されている火砲が発砲された。
眩い光の柱が見え、同じタイミングでコロニーの外殻が弾け飛んだ。
「デブリ増やすんじゃねぇ!」
不機嫌そうにボヤいたディージョ。
コロニーのパーツは一つ一つが大きいので回避も面倒だ。いま剥がれ落ちたのは、縦横100メートルはあろうかというサイズで、それは外殻構造材の一部だった。
「しかし、駆逐艦の主砲ってこんなもんか」
「なんかショボいっすね」
変な所で感心したテッドとロニー。
戦列艦が持つ主砲の如き破壊力は見られない。
「シリウス側だってコロニーを手に入れたいのさ。だからあまり壊したくない」
エディの説明にテッドが『あぁ……』と言葉を漏らし、腑に落ちた。
シリウスだってコレだけの規模の宇宙船は欲しいのだ。
その欲しがる理由を思ったテッドは、ふと脳内に『ペイバック』という言葉が浮かんだ。
――大船団を仕立てて地球へ侵攻する……
一瞬だけニヤリと笑うものの、それはシリウス人から見た愉悦であって、地球市民の苦しみを思えば暗澹とした気分になるものだった。なにより、そんな実績を作ってしまえば、あのシリウス闘争委員会なる集団がますます幅を効かせてしまう。それは歓迎しないし、むしろ邪魔したい。
――地球の安全のためにシリウス人同士が殺しあう……ってか
コックピットのなかでホウと息を吐き、テッドは改めてモニターを見つめた。
駆逐艦の主砲が続々と砲撃を開始し、連邦側の対応が一瞬遅れている。だが、連邦軍も大したもので、ハルゼーの護衛に付いてきていた駆逐艦が攻撃を開始した。
「スゲェな!」
「迫力が違うぜ!」
ヴァルターとジャンが無邪気に笑った。
シェルの持つ火砲とは違う次元での大迫力な艦隊戦闘だ。
超光速飛行を可能とする駆逐艦での戦闘は、亜光速にまで至らぬ程度での戦闘速力を維持して火砲を打ち合うものだ。なにせ船体が大きいのだから、小回りが利くと行ってもたかが知れている。
大きく旋回し艦首を敵に向け、持てる火砲を全部使っての砲撃戦だ。
「お! シリウス側。旗色悪し!」
マイクの言葉が弾んでいる。
シリウス側の駆逐艦オライオンは複数の艦艇から砲撃を受け、各部に直撃弾を受けたらしく沈黙してしまっていた。火砲に発砲の気配は無く、船体各所で光っているはずの光源から灯りが消えた。
「電源が飛んだか?」
「リアクターがスクラムかけたっぽいな」
アレックスとマイクはそんな分析をしている。
その話を聞いていたテッドは、ふとシリウス側の空母を探した。
コロニーの影に二隻の小型空母がいて、シェルの発艦準備を進めていた。
「敵空母からシェル発艦準備!」
テッドは叫ぶと同時に機を捻って空母への最短距離を飛んだ。
両軍艦艇の主砲が左右から飛び交う交戦領域を一気に突っ切っていった。
秒速38キロで飛んでいるが、荷電粒子の塊と比べれば蟻の歩みにすぎない。
「おい!」
「無茶すんな!」
ドッドとリーナーが叫ぶものの、テッドに続いてディージョとヴァルターが飛んでいき、その後ろにはロニーとジャンが続いていた。
「この方がはえぇ!」
「当たる方が悪いっす!」
「まぁ、運がねぇんだよ! 運がよ!」
ガハハと笑う無鉄砲さはジャンの真骨頂だが、それ以上に先頭切って突入したテッドの無鉄砲さが目立つ。それなりに距離が有り、また、シェルの速度は次元が違う。ただ、予測射撃をカマされれば、機動余裕がない分だけ意図も容易く撃墜される危険をはらんでいた。
――いけるぜ!
チラリと見た砲のプロパティ画面にはAPDSの表示が見えた。シェルの戦闘支援AIは対艦攻撃を前に、あのぶ厚い装甲をぶち抜いてやろうという気概を見せたのだった。
真っ直ぐに突入していくテッドは、280ミリを構えて狙いを定めた。砲弾が火薬発射なのだから、シェル自体の運動速度も加味してとんでもない高速弾頭になると言う事だ。
――へぇ……
――やる気じゃ無いか!
人格を持たないはずのシェルAIがニヤリと笑ったような気がしたテッド。
コックピットの中だけで、シェルに聞こえるように大声をあげた。
「いっとけぇ!」
初弾を放ったテッドは、そのまま尚も接近していく事を選択した。まるで自分自身が砲弾になったような感覚だが、あながち間違ってはいない。
惑星状の重力影響下で放たれる榴弾などは初速として秒速1000メートルも出ないのだが、シェルの持つ火砲はシェル自身の運動エネルギーを加味できる。なにより空気抵抗と言った減速ファクターが一切無い。
その環境下で放たれたAPDSは、重力圏下ですら2000メートルを実現しているものだ。当然の様にその速度にシェルの速度が加わり、常識外れの超高速徹甲弾として敵に迫っていく。
運動エネルギーそれ自体が武器になるAPDS系弾頭は、弾芯部分に重元素をたっぷりと使い、直径88ミリ。弾長はL/D比実に7を誇る60センチオーバーだ。
「オラオラ!」
「くたばれ!」
後方を飛ぶディージョやヴァルターがノリノリになっている。それ自体は良いのだが、仲間達が突撃してくるのを確かめたテッドは、どっち咆哮へ旋回するかを考えて気がついた。
――どっちに逃げても後方から撃たれんじゃね?
こうなると、速度を維持したまま突き抜けるしかない。
ただ、超光速船の外殻がどれ程強靭かは言うまでも無いことだ。
――ッチ……
軽く舌打ちしつつ、テッドは後方監視レーダーにチラリと眼をやり、後続の砲弾が追い越していくのを確かめる。後方にいた相対速度差の無いシェルが放ったAPDS弾頭は、テッド機を軽く追い越して空母へと飛んでいく。
――よし!
僅かに変進し空母の砲座が見える辺りへモーターカノンを放ちつつ、テッドは迷わずに突っ込んで行った。シェルの速度もあいまって、モーターカノンといえど最大効率で当れば砲座自体を揺するのだ。
――おっ!
次々と砲弾が命中するのが見える。空母の装甲板が次々に割れている。
APDS弾の速度がありすぎるので、弾頭衝突面がユゴニオ弾性限界を越え流体の様に振舞い、結果として強靱な空母の船体装甲に穴を開けているのだ。
速度が乗りすぎていて穿孔の拡大にエネルギーが費やされているが、それで良いのだ。なぜなら宇宙船はそれ自体が一つの巨大な気密タンクでしかなく、穿孔が開いた時点で内部の空気が漏れていく。各所を閉鎖し空気漏れを防ぐにしても、様々な隙間や艦内に張り巡らされた空調パイプなどからの漏洩は避けられない。
――艦内はパニックだな
ふとそんな事を思ったテッドは、最高速で空母のすぐ脇を通り抜けた。
距離を詰めてのモーターカノン射撃では、装甲の弱い部分が破断されていくのが見えた。宇宙船も案外脆いと印象を持ったのだが、逆に言えばシェルの運動エネルギーがでたらめ過ぎるのだった。
「あっ!」
「出ちまった!」
ロニーとジャンが叫んだ。
既に通り過ぎたテッドの死角にあたる部分。空母のハッチが開き、シリウスのシェルが射出されて行った。1機2機3機と数えていって、総勢で40機近い数になっていた。
「空母を先にやっちまおう……『シェルを優先しろ!』
ヴァルターがそう提案し掛けてエディが声を上げた。
一瞬だけテッドは考えたのだが、ハッと気がついた。
ハルゼーが危ない……
「了解!」
テッドは大声で叫んだ後、大きく旋回していって射出されたばかりのシリウスシェルに襲い掛かった。まだ速度が乗ってないうちなら鴨だ。相対速度を生かして必殺の一撃を浴びせに行くテッド。
その視界に浮かぶシリウスシェルは、純白に塗られていて赤い薔薇のマークがやけに目立っているのだった。
――エッ?
一秒に満たない僅かな時間だが、テッドの意識は完全に現実から抜け落ちた。
そこにいた爆発型重装甲のシリウスシェルは、間違い無くウルフライダーのカラーを纏っているのだった。
――うそだ……ろ?
連邦軍シェルの先頭を飛ぶテッドの意識は、一面の雪原の様に真っ白だった。




