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黒い炎  作者: 陸奥守
第十一章 遠き故郷へ手を伸ばす為に
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人を育てると言うことの本質

~承前




 左右に展開した両翼の動きを観察しつつ、テッドは広大な農場を前進した。

 最初は左右の畑地が背の高い野菜畑だったのだが、やがては麦畑になった。



 ――――風通しが良すぎる……



 麦畑は背が低い。

 全員が腰を低くして前進するが、見通しの良すぎる戦場は命に関わる。


 経験的にそれを知っているテッドは『止まれ』と指示を出した。

 肩で息をする生身達を余所に、サイボーグ達は麦畑に沈んだ。

 敵勢力はまだ背の高い畑地の向こうにいて、塊りになっていた。


「なぜ止まるんですか?」


 全員が集まってきたとき、率直な言葉でティアマットは問うた。

 その疑問は当然だし良い観察眼だと思ったテッドは振り返って言った。


「見通し距離が2キロを越えると大口径狙撃銃が問題になる」


 音速を超えて飛んでくる.50の弾丸は被害が出てから存在を認識する。

 そして、まともな装甲服を着ていない以上、直撃は即死になりかねない。


 手にしている銃の威力を思えば、サイボーグだって十分危険だ。

 脳殻を収容している頭部の基礎装甲を一撃で貫通しかねないのだから。


「シェル戦闘みたいッすね」


 ロニーはワクワク感を抑えきれないような言葉を吐いた。

 思えばこの男も随分とスリルジャンキーだな。


 テッドはそんな事を思うモノの、今はまず目の前の任務が大事。


 油断や慢心は死への招待状でしかない。

 ましてや地上戦だ。僅かな油断や見落としが手痛い一撃になる。


「笑ってねぇで警戒しろ」


 軽く窘めるが、実際の話として装甲に護られてない分だけ不安だった。

 まともな地上戦を経験してるのは、ここでは自分以外だとロニーのみ。


 その場数と経験は勘と観察眼を鍛えるはず。

 死線を潜った数だけ臆病になるし、時には大胆に振る舞えるのだから。


「中尉殿」


 集中して前方を観察している時だった。

 テッドのすぐ近くに居たティアマットがテッドを呼んだ。


「なんだ?」


 おそらくエディなら『どうした?』と聞く事だろう。

 ブリテンで士官教育を受けたエディは常にジェントルが染み込んでいた。


 だが、テッドは促成教育で作られた経験蓄積型の現代型士官だ。

 はっきり言えばシリウス軍士官に近い古式ゆかしいタイプ。

 だからこそフランクにモノを言う面があるのかも知れない。


「一気に前進し、突入したらどうでしょうか」


 唐突なティアマットの進言にテッドは『はぁ?』と変な声を出した。

 少し離れたところでトニーとロニーがクスクスと笑っていた。


「敵勢力は味方との交戦に集中しています。こちらへの警戒は薄いと思われます」


 妙なやる気を見せる若者の姿にテッドは薄く笑った。

 思えば自分もこうやってエディにものを言っていた。

 そんな実感が湧いたのだ。だが……


「俺も同感っすね。飛び込んでって暴れた方がはえー気がします」


 ティアマットのプランにジョンソンが賛同した。

 ただそれは、実に解りやすい無謀な挑戦でしか無い。


 そして、サイボーグになった事への過信かも知れない。

 或いは単なる手柄争いという可能性もある。


 なにより困った事に、この男は死にたがりのスリルジャンキーらしい。

 パラシュートでの降下シーンを見れば解る通りだ。


 死ぬのが怖くないのか?と思うほどに無謀な部分がある。



 ――――おいおい……



 少しばかり呆れたテッド。

 そんなテッドにそっと意見したのはドリーだ。


「飛び込むのは簡単だけど、どっちかと言うとここで待機して敵勢力が崩れた時に対処戦闘するべきじゃないかと思いますが」


 黙っていたドリーが口を開き、テッドは少し安堵した。

 まだまともな人間がここに居るのだ……と安心していた。


「……そうだな。どちらかと言えばドリーの案が良いだろう。こっちに崩れてきたら全部殲滅する役目だ。それに――」


 不意に後方を見たテッド。

 それに釣られドリーやジョンソン達も後方を見た。


 大した距離では無い筈だが、それでも急に走ったせいか生身が疲弊している。

 北米戦線辺りで散々問題になった、生身がサイボーグの足を引っ張る構図だ。


「――あっちの連中はあまり走りたくないだろうし」


 小馬鹿にするような物言いに事務方っぽい隊員が表情を悪くしている。

 だが、じゃぁ走るかと言われれば拒否するだろうし、抵抗もするだろう。


 ならば現実的な選択肢は一つ。

 ここで殲滅用の戦線を構築することだ。そして……


「なんかあっち、一気に崩れそうですぜ」


 トニーは何かに気が付いたらしく指を指してテッドの注意を向けさせた。

 彼方ではヴァルターのチームとディージョのチームが浅い角度で十字砲火だ。


 敵勢力は塊り化したのではなく、させられたという方が正解らしい。

 三次元空間で敵を追い詰めるシェル戦闘と同じ様に敵を追い詰めるやり方。

 その鮮やかな手並みはディージョの手腕が大きそうだ。


「……後退したがってるな。情けねぇ」


 吐き捨てる様に言うジョンソンは、それでもどこか楽しそうだ。

 民間軍事会社のマークを付けたピックアップトラックが右往左往している。


 その都度にディージョかヴァルターの隊から銃撃を受けていた。

 次々にトラックが撃破され、目に見えて浮足立ち始めていた。


「あれじゃぁ……統制の取れた戦闘は無理っすね」


 呆れるように行ったロニーだが、それもやむを得ないだろう。

 様々な人種が見えるのだが、どう見たって烏合の衆状態だ。

 或いは早々に指揮官役が死んだのかも知れない。


 特定の目的や戦略があって動くなら、指揮官は最後まで死んではいけない。

 それはマザマザと解りやすく見せているこれこそが最上級の教育だ。



 ――――少しは学んで欲しいもんだ……



 ふと、テッドはそんな事を思った。

 ジョンソンは言うに及ばず、ドリーやティアマットもだ。


 エディが言う通り、凪の海は船乗りを鍛えない。

 つまり、例えそれが敵であっても、失敗を見て覚えなければいけない。


「中尉。あれ、後退と言うより逃散ですよ」


 トニーが何かに気が付き、そう言った。

 その理由が思い浮かばなかったのだが、様子を見ればその通りだ。


 攻勢を掛ける側の圧が強すぎて戦線が維持出来ない。

 その様子に戦列を作る兵士達が我先にと逃げ出し始めていた。



       ――――サイボーグすげぇ……



 そんな事を言いたげな様子のティアマット。

 だが、その直後に想定外のことが起きた。


「チャンスですよ中尉! 行きましょう!」


 ティアマットは手にしていたパンツァーファウストを構えて走り出した。

 何処に行くつもりなんだ?と叫ぶ前に、真っ直ぐ敵に向かって……だ。



 ――――あのバカ!



 言葉にならない怒りが沸き起こり、テッドはティアマットの後を追った。


「ロニー! トニー! 支援しろ! 距離を詰める! あのバカを殺すな!」


 テッドの怒声が響き、麦畑から全員が立ち上がって前進した。

 もはや敵勢から丸見えなんてのは大した問題じゃなかった。


「兄貴! あれがやべぇ!」


 走りながらもロニーが指さした先。

 ピックアップトラックの荷台にM2重機関銃が見えた。


 50口径弾をばら撒く重火器だが、扱いやすく壊れない。

 そして、サイボーグですらも一撃で行動不能になりかねない。

 いや、行動不能で済めばいいが、頭に貰えば即死だろう。


 一瞬、ジョニーの心がゾワゾワと粟立った。

 ここしばらくすっかり見なくなっていた死神の影が見えた。


「あいつを――


 何かを言いかけた時だった。

 テッドのすぐ前にパンツァーファウストのバックブラストが駆け抜けた。

 真っ赤に見える塊が飛んで行き、ピックアップトラックが爆散した。


「マット!」


 勝手に攻撃すんな!と思いつつも、戦果だけは大きいのが解る。

 こうなると次がやりにくい。しかし、釘は刺さなきゃ意味がない。


 一発張り倒すか……とテッドは思った。

 だが、追いついた先のティアマットは笑っていた。


「やりましたよ中尉! 次です! 次をぶっ潰してやる!」


 再び榴弾をセットしたティアマットはスッと立ち上がった。

 銃弾が飛んでくるだろうが!と怒鳴りかけて、その言葉を飲み込んだ。


 見込みがある。いや、見込みと言うより適性がある。

 兵士としての適性であり、もっと言えば土壇場で迷わないマインドだ。


 そして……



 ――――適応率が高いと良いな……



 不意にそんな事を思い、その全てをグッと飲み込んだ。

 理屈とか綺麗事じゃない部分で、口には出せない願望をテッドは抱えた。


「中尉! 敵勢力が戦線を崩しました!」


 結果的な話でしか無いが、ティアマットの突入は最高のタイミングだった。

 民間軍事会社を装う武装勢力は完全に烏合の衆と化した様だ。


 様々な機動力でその場からの離脱を試みている。

 こうなった場合は破れかぶれの流れ弾が怖い。


『エディ! どうやら敵勢力の本体がバラバラになった!』


 ヴァルターの報告が飛び、テッドは状況的に逃げる段だと考えた。

 中央広場の集合ポイントへ移動し、そこへ近づけない様にするのだ。


 だが、そんな思惑を余所に、ティアマットはひとり盛り上がっていた。

 逃散しつつある敵勢力の中に見える機動車輌へ再び撃ち込んだ。



 ――――車か……



 テッドは視界をズームアップして対象を捉えた。

 ティアマットが破壊したのは軽装甲を施された高機動車輌だ。


 市販のAWD系車輌を装甲化したモノで、小銃程度なら問題無い。

 テッド達サイボーグが持つ50口径ライフルでも距離が有れば大丈夫だ。


 ある意味、現代戦闘に於いて一番面倒な車輌。

 装甲を持ち、機動力があり、車内に携帯ミサイルを持っている場合がある。

 レーザー誘導型の場合、AIで狙われたらシーカーからは逃げられない。


 だが……


「よっしゃ!」


 ティアマットは再び歓声を上げた。

 高機動車輌を見事に吹っ飛ばし、そのまま次の獲物を狙っている。

 榴弾は2発しか無かった筈なので、次は破甲弾系になるはず。


 装甲の柔らかい車輌では返って不向き。

 この場合は……


「マット! 俺の持ってる弾頭を持って行け!」


 いつもオチャラケているロニーがきつい声でティアマットを呼んだ。

 ただ、その声には噛み殺した笑いがあり、活躍を喜んでいた。


「あざっす! やってやりますよ!」


 ススッとロニーに近寄り弾頭を受け取ったティアマット。

 だが、その僅かな時間が極上のピンチを招いた。


「ロニー! 伏せろ!」


 テッドが叫んだ瞬間、ロニーはティアマットをテイクダウンして伏せた。

 そのすぐ上を弾丸が猛烈な速度で通過し、ロニーは変な声を出していた。



 ――――何が来た?



 50口径弾よりも遥かに優速の何かが通過していた。

 その武器がなんなのかは解らないが、テッドは既に窮地だと判断した。


 その直後、今度は爆発系の武器が炸裂し、土砂が空中へと舞い上がった。

 迫撃砲かライフル発射のグレネードだと思った。


「ロニー! 平気か!」


 咄嗟に声を掛けたテッド。

 ロニーは『平気ッス!』と返答し、腰を落としたまま走り出した。

 そのすぐ近くにはドリーが居て、ティアマットを置き去りにしていた。



 ――――なるほどな



 ロニーは囮になったのだ。ティアマットの機動力がお話にならないから。

 不整地でもサイボーグなら速度に乗って移動できる程度には高性能だ。

 戦場という苛酷な環境で一気にトップスピードは生身には無理な相談だった。


 ただ、その理由。囮になった訳が大問題だった。


「戦車か!」


 トニーがそう叫んだとき、それが姿を現した。

 国連軍も使っているM223兵員輸送車が姿を現す。

 シリウスの地上で散々使った装甲戦闘車輌で主兵装は30ミリ機関砲だ。


 あいつを貰えば一撃で吹っ飛ぶ。

 発射サイクルはそれほど早くないが、なにせ射撃管制が優秀だ。

 AIによる動態予測と見越し射撃のコンボはシリウスの地上で経験済み。


「……ッチ!」


 小さく舌打ちしたテッドはトニーに前進を指示しつつ、その場に立ち上がった。

 理屈ではなく直感で『それ』を理解し、作戦を立てた。


 AIに誤差を混ぜ込んでやる。

 究極レベルで冷静かつ沈着な思考にノイズを混ぜてやる。


 こちらに向かって走り始めているM223はロニーをロックオンしていた。

 そんなAIに対し、ここにもあっちにも敵が居るぞ?と教えてやったのだ。


「マット! ビビるんじゃねぇ!」


 テッドの怒声が農場に響き渡った。

 その瞬間、逃散しつつあった敵勢力から銃弾が一斉に降り注いだ。


 しっかりした装甲服など無かったテッドだ。当たれば痛いじゃ済まない。

 だが、ほんの一瞬の隙をつくるためには、これが必要なんだと解っていた。


「中尉!」


 マットの声が事実上悲鳴だった。

 M223の砲塔が回転してテッドを狙っているのが解った。

 その瞬間、ティアマットは立ち上がってパンツァーファウストを構えた。


 AIが新たな敵を認識し、攻撃優先目標を一瞬だけ迷ったらしい。

 僅かに砲塔が動いたのをティアマットは見逃さなかった。

 狙いを定めトリガーを絞った時、30ミリ砲が火を噴いた。


 それと同時、M223のエンジンルーム辺りが大爆発し、砲塔が吹っ飛んだ。


「やった! やりました! 中尉!」


 左腕でグッとガッツポーズを決めたティアマットは振り返ってテッドを見た。

 そしてその時、彼は全てを理解した。自分が持つ兵器を使わせる為だったと。

 あの装甲戦闘車両を撃破する為に、意識を分散させたのだ……と。


「中尉!」


 慌てて走り始めたマットは見た。

 ニヤリと笑って立っているテッドの左腕が無くなっていた。

 肘から上あたりで破断し、小さなスパークと作動油を垂らしていた。


「よしよし、上出来だ。残りを掃討しろ」


 そう指示を出したテッド。

 ロニーはトニーと共に逃散する敵勢力の封じ込めに動くのだった。






    ――――5時間後






「なんで俺がこんな事してるか解るか?」


 農場の戦闘が終わり、501中隊はVTOL機に収容された。

 その機内。テッドは破断した左腕部の応急修復を受けていた。

 テッドの前にはティアマットが居て、中隊全員が衆人環視していた。


「さ、30ミリで撃たれたから……ですね」


 絞り出すような声のティアマット。

 そんなマットをディージョやジャンが厳しい表情で睨み付けている。

 テッドの応急修復はミシュリーヌが行っていて、こちらも厳しい表情だ。


「そうだ。その通りだ。じゃぁ――」


 怒るでも呆れるでもなく、テッドは真顔になっている。

 およそ感情的な部分を一切窺い知れない姿にマットは小さくなっていた。


「――なんで撃たれた?」


 テッドの叱責。

 別室にいるエディはウッディからこっそり映像を貰ってワッチしていた。

 エディだけでなくブルやアリョーシャもまたワッチ中だ。

 時には面々が視線を交わし、ニヤリと笑った。


 確実な成長。そして責任感の涵養。


 テッドはまた一つ、大きなステップを登った。

 それを実感したエディは、ただ黙って成り行きを眺めていた。


「お、囮になったからですね」

「あぁ」


 たった一言だけ『あぁ』と返したテッド。

 それを見ればマジ切れ寸前だと解る。


「じゃぁなんで俺が囮になった?」


 いわゆる、なぜなぜ問答だ。


 問題が発生した時、5段階の『なぜ?』を繰り返すと問題の核心に至る。

 そんな指導法で部下などを完全に潰してしまう無能はかなり多い。


 そう。己の無能さを認識出来ないバカは形だけ真似てこれをやりたがる。

 着地点を先に設定できず、単に反省させたような気になるケースばかり。

 確実な成長を果たせるとか間違った認識が蔓延った、問題の多い指導法だ。


 ただ、困った事にこの指導法は問題児は効くのだ。

 それこそ、スタンドプレーの目立つ思慮の浅いバカには覿面に効く。

 命のやり取りをする戦場で自己中に振る舞うバカを叱責するには最適だった。


「……じ、自分が突出したから……で、あります」


 自分の失敗を認識させ、それについて反省を促す。

 ここまではある意味、誰でも出来るのだ。


 問題はここから先。どうやって成長させようかが何より重要だ。

 それについての手札が無い者は、このなぜなぜ問答をしてはいけない。


 何故なら、やる気や意欲と言ったモノをすべて失ってしまう。

 どうせないをしても怒られると理解した時、人は学習性無力に陥る。

 それは叱責される個人の資質ではなく、指導する側が無能だからだ。


 率先垂範と言うように、じゃぁどうするのか?を示せねばならない。

 人を成長させるには我慢と忍耐。そして、絶対に潰さないという愛が要る。


「俺はサイボーグだ。万が一ボディに直撃を貰っても、まぁ吹っ飛ぶ程度で即死はしねぇで済む。けど、もし俺が指揮官で俺しか知らねぇ情報があったら、お前は後から困るんだぞ?」


 小さく『はい』と返答したティアマット。

 それを見ていたテッドは、エディなら次にどうするかを考えていた。


「今回はたまたま肘辺りから先が無くなった程度で、後から色々と整備の連中に文句言われながら修理すれば済む。けどよぉ、それで終りって訳には……いかねぇのは解るよな?」


 消え入りそうな声で『もちろんであります』と返答したティアマット。

 その姿は痛々しいほどだが、始めた以上は終わらせねばならない。

 例え恨みを買ってでも、この男を一人前にせねばならない。



 ――――エディには苦労させたんだな……



 妙な実感を覚えつつ、テッドはニヤリと笑っていた。


「後から震えるほど後悔するなら、次からは同じ事をしねぇ事だ。戦線って奴は勝手に飛び出した奴から死ぬ仕組みになってる。俺たちはシェルに乗って宇宙でドンパチもやった関係で、そいつを嫌って程に味わってる。その差が出たな」


 場数と経験の差。テッドはその辺りを落としどころにした。

 そして、〆が重要なのを痛感していた。


「ジョン。先ずは周りを観察しろ。そんで、飛び出すな。複数でフォローしあって前進するのが多分一番良いんだろうと俺は思う。もしかしたら違うかもしれねぇから絶対だなんていうつもりはねぇ。けど、他でもねぇ俺は生き残ってる。だろ?」


 最後に付け加えた『だろ?』の威力がティアマットを撃ち抜いた。

 どんな理屈や理論を並べた所で、死ななかったという説得力の前には無力だ。


「次は飛び出すんじゃねぇ。慎重にフォローしあって前進しろ。いいな」


 テッドが淡々と叱り付けているのを見ていたエディは満足そうに笑った。

 相手のやる気を折る事無く、次に続く叱責をした。


「小僧も一人前だな」


 ブルがそう言った時、エディは満足そうに微笑むのだった。

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