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黒い炎  作者: 陸奥守
第三章 抵抗の為に
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命の重さ


 ――シリウス太陽系 第4惑星ニューホライズン 周回軌道上

    シリウス標準時間 9月7日 午後



 衝撃的なシェルデビュー戦をやった日の午後、ハルゼ―への帰り道を急ぐ501中隊のシェルは、ニューホライズンの周回軌道上高度700キロを飛んでいた。見事な編隊を組んで飛ぶその姿は、徹底的に訓練されている隊列行進の成果とも言えるものだ。

 その、一糸乱れぬ統制を見せる501編隊の中、ジョニーは何ともつかみ所の無い焦燥感に駆られていた。シリウス戦闘機を良いように、一方的に撃破した後だ。普通ならば無敵ぶりを発揮した自分の万能感や全能感に酔うものだ。だが……


 ――あいつら何者なんだ


 それを帳消しにしてしまう経験を戦闘の締め括りで味わってしまった。推定でバンデットと同程度の戦闘能力しか無い戦闘機により、シェルを装備して無敵だったはずの自分が見事に押し返されたからだ。

 一方的な戦闘を行い、文字通り紙のように敵機を撃破した直後の敗北。それは殊更に劣等感を煽る衝撃的な出来事だった。そしてもっと言えば、単に機体の性能だけで敵を撃破したに過ぎないと雄弁に語る出来事だ。


 ――今日は命拾いしたな……


 もし今日の出撃がバンデットだったら、ジョニーは一方的に撃破されていた可能性がある。機動力で全く次元が違うはずのシェルだが、シリウスのあの戦闘機乗り達は互角に戦っていた。

 純粋に戦闘機乗りとして見たらならば、あの腕前はジョニーを遙かに凌ぐと言う事を嫌でも認めざるを得ない。優れたパイロットは優れた兵器に勝ると言う極々当たり前のことをジョニーは突きつけられたのだった。


 ――もっと練習しないとな……


 そんな事を考えていたジョニーの心中にあるのは敗北感でしか無い。ただ、次は必ず勝ってやると心に固く誓っている。その意気さえ有れば、人はまだまだ成長出来るのだろう。

 事実、疲労感を覚えるこの帰り道だが、ジョニーのシェルは進路に些かのブレも起こしていなかった……


「前方に漂流物。サイズからして戦闘機の残骸だな」


 冷静に読み上げたアレックスからデータが各機へ送られた。縦横寸法を思えばバンデットのなれの果てという状態だ。先の戦闘でシリウスの戦闘機に撃破されたらしいバンデットの残骸は、全ての推進力を失ってデブリとなりニューホライズンを周回しているらしい。パイロットが回収されたことを祈るしか無いのだが……


「アレックス、IFF(敵味方識別装置)の反応はどうだ?」

「ずっとUNKNOWN(正体不明)のままだ。電源を全部失ってるか、もしくはパイロットがシートごと脱出して回収済みか……」


 ウーンと声を漏らして処置を考えているエディ。そんな姿勢になんとなく嫌な空気を感じたジョニーは、なんとなく身構えてしまっていた。


「ここらで周回軌道に入ったままだと迷惑だな。回収しても修理不能だろうから落下させて焼却しよう。ジョニー! ヴァルター! ディージョ! ウッディ! 慎重に接近して地上へ押して落下させろ。良い練習だ」


 ――また無茶ブリしやがって……


 本音が出掛かって飲み込んだジョニー。ふと隣を飛んでいるはずのヴァルターを見たとき、理屈では無く直感で目が合ったとジョニーは思った。


「でもまぁ、いきなり『やれ』というのは酷だな」


 軽やかに笑ったエディはシェルを縦に捻って機体の向きを変え、漂流するバンデットの胴体部分裏側へ浅い角度で接近していった、


「相対距離をしっかりと掴むんだ。宇宙では距離感を失いやすい。おまけにシェルはとにかく高速だ。リズム感を忘れないようにな」


 エディのシェルはまるで磁石が吸い寄せられるようにピタッと張り付いた。その一部始終を見ていたジョニーは言葉を失って唖然としつつ眺めていた。少なくとも人間業では無い。そんな印象だ


「さて、じゃぁやってみよう。大事な機体だからちゃんと持って帰れ。間違っても衝突なんて無様はするなよ。みんな見ているからな」

「みんなって?」


 思わずジョニーは聞き返した。『みんな』の意味を掴み損ねたからだ。


「言わなかったか? 帰還後に整備班が戦闘ログを吸い出して解析している。シェルの戦闘支援AIをドンドン賢くするためにな」


 ――へっ?


 訓練から帰還する都度に反省会を行ってきたし、次のテーマを決めるべくフライトログの再確認も行ったのだが、まさかシェルの戦闘AI調整にデータを使われているとは思わなかった。少なくともサイボーグの場合は自分の身体としてシェルを使えるのだから、思考制御の状態にすればAIの介入を挟む必要は無いと思わる。


「なんでシェルにAIが要るんですか?」

「生身が乗るときに困るだろ?」

「え?」


 事も無げに言い切ったエディだが、ジョニーは驚きを通り越して精神が一時的にフリーズした。


「気を抜くな小僧! しっかりやれ!」


 マイクの叱責で我に返ったモノの、どうにも衝撃が大きすぎて言葉が無い。ただ、宇宙で衝突するのは余り歓迎出来ない事態なのだから、嫌が負うにもジョニーは慎重な接近を心掛けた。


「最終的に戦闘機はシェルに置き換わる。ただ、サイボーグの数は足りてないから生身が乗る事になるだろう。その時、シェル自身が自立戦闘を出来るくらい賢くなっていてくれるとパイロットが楽と言う事だ。さすがに生身で秒速30キロは無理だからな。俺たちは感覚的な部分をアクセラレート出来るが、普通のパイロットはそれが出来ないから速度を秒速12キロ程度まで絞って使う事に成る。まぁ、それにしたって並の戦闘機と比べれば充分高性能って事さ」


 エディの説明を聞いていたジョニーだが、実際はその言葉をほとんど聞いていなかった。グングンと接近して来るバンデットの残骸を見つつ機体制御に集中していたからだ。

 減速を試みたのだが、低速では機体の姿勢制御が上手く行かないのだ。バーニアを吹かした所で反応が悪い上に細かな挙動が不安定になる。慣性の法則で進むその行き足を考慮して姿勢を整えてやらねばならないのだが、いかんせん慣性重量が大きすぎて微調整は効かない。


「考えすぎても始まらない。フィーリングで行け」


 気休めにもならないアレックスの言葉を話半分に聞きつつ、ジョニーは慎重に接近した。残骸の軌道を読み、自分の進行方向が最も重なる軌道を選んでやる。こうすればシェルの速度を少しでもカバー出来ると踏んだのだ。

 そんなジョニーの動きにあわせ、ヴァルターやディージョも同じような動きで接近を試みた。相対的な速度差を少しでも減らす彼ら少尉候補生の発想の柔軟さに、エディはそっとほくそ笑む。


「近くで見ると案外デカイな」

「バンデットってこんなサイズだったんだな」


 バンデットライダーだったジョニーとヴァルターは新鮮に驚く。

 そんなふたりの言葉にウッディが呟いた。


「元戦闘機乗りはある意味で有利だな」

「そうか?」


 少しだけ嬉しそうなリアクションを見せたヴァルター。

 だが、それを打ち消すかのようにドッドが言う。


「何事も場数と経験だ。その意味じゃ俺たちはみな横一線なのさ。まぁ、それでも多少は有利かもしれない。ただ、逆に経験があるからこそ上手く行かないときの歯がゆさは増すと思うけどな」


 下士官の長だったドッドらしい物言いに思わずウェイドが笑い出した。同じ様にマイクやアレックスも笑う。もちろんエディもだ。機材転換訓練最大の目的はこの違和感の解消なのだから、積み重ねた場数と経験が新規材の使いこなし最大の障壁になる皮肉は、もう笑うしかない。


「距離200!」


 ウッディの冷静な読み上げを飲み込んだジョニーは、両手を広げて接近しつつ衝撃に備えた。バンデットの残骸は右方向にゆっくりロールし続けている。フンワリと着地するイメージで近づいたジョニーはコックピットの中にあり得ないものを見た。


「コックピットにパイロット!」


 冷静に言ったつもりのジョニーだが、その声は半ば叫び声になっていた。コックピット付近に直撃弾を受けたらしいそのパイロットは左腕と左足をうしなっていて、コックピットの中にはミスト状になった血が漂っている。キャノピーのクラックには挽き肉になった腕や足が詰まっていて、幸か不幸かそれ以上の空気漏洩を防いでいた。


「あちゃー。こりゃダメなパターンだ」


 衛生兵でもあるウェイドは一目見るなりそう結論付けだ。だが、遺体の回収も大事な任務だ。ウェイドの隣に張り付いたドッドもパイロットを確認し小さくため息をこぼした。


「家族の所へ帰してやろう。地球から遠く離れた場所で衛星になってグルグル回るのは寂しいたろうさ。本人も、家族もな」


 ドッドのシェルは右腕でキャノピーを割りに掛かった。それなりに強靭なバンデットのキャノピーだが油圧で動くシェルの握力は強力の一言だ。コックピット部分へとシェルのアンカーを打ち込み機体をロックさせると、ドッドは迷うことなくキャノピーを強引に開けに掛かった。


「おい! ちょっと待てドッド!」

「とうした?」

「このパイロット生きてるぞ!」

「なんだって!」


 ドッドが揺り動かした機体の中、死んだと思われていたパイロットの身体が痙攣し始めた。


「死後硬直による痙攣じゃない!」


 ドッド機の手を払いのけたウェイドはコックピットを覗き込んだ。

 ヘルメットの中に見えるパイロットの顔はあどけなさの残る少年のようだった。


「エディ! 間違い無くまだ生きてる! ハルゼーへ曳航して救助を提案する!」

「もちろん異存はない。アレックス、ハルゼーにエマージェンシーを通告しろ。ウェイド、ドッド、ヴァルター。機体にアンカーを打ち込んで曳航するんだ。ジョニー、ディージョ、ウッディ。曳航を支援しろ。掛かれ!」


 エディの素早く的確な指示を聞き、ジョニーは素早くバンデットから距離を取って周囲の警戒を始めた。バンデットは身動き出来ないし、それを曳航する仲間達のシェルも機動力を大幅に制限されるはずだ。

 となる、万が一にも他の残骸が接近したときには押しのけてやる必要がある。そして、こんな時に限ってシリウスの戦闘機がやって来る事もある。悪いことには悪いことが重なってしまうのを、ジョニー自身も何度か経験していた。


「ハルゼ―の医療チームから返答が来た。万全の体制で待ち受けるそうだ」

「よし。先を急ぐぞ!」


 エディの号令一下、3機のシェルが推力を合わせてバンデットの軌道を強引に変えた。ニューホライズンの周回軌道を航行するハルゼ―までしばらく掛かりそうな速度だが、これ以上の急激な加速はパイロットの失血死を招きかねない。

 そして、加速した以上は減速しなければならない。そのマイナス側へ触れたGにパイロットが堪えられる保証など何処にも無い。故に細心の注意を払い最善の軌道を取るしか無い。そんな細々とした心配りの必要な作業は、オペレーションのレベルをグンと押し上げてくれる。


「よーし! 良いぞ! その調子だ!」


 すぐ傍らで様子を観察し声を掛けるエディは言葉の支援を忘れない。

 その姿をやや離れた場所から見ていたジョニーは、なんとなく自分が無視されているような錯覚を持った。周囲をサポートしている自分の存在が忘れ去られているような、あたかも自分の存在を否定されたかのような、そんな印象だ。


「……エディ」

「どうしたジョニー」

「……あ、いや」

「なんかあったのか?」


 思わず口を突いて出た言葉に自分自身が戸惑って咄嗟に何を言えば良いか解らなくなった。


「レーダーに妙なエコーが浮いたんだけど、単なるゴーストだと思う」

「余り緊張するな。気楽にやれ。気負いすぎても良い事は何も無い」

「……了解」


 なんとなくぎこちない言葉になったジョニー。だが、エディはジョニーが抱えていた答えの出ない葛藤を見抜いていた。

 もちろん、手を差し伸べ導くことは出来る。だが、それをしてしまえばジョニーはダメになる。自分で落ち込んだトラップは自力で脱出せねばならない。そうしないと、これから先のジョニーは誰かに依存して生きていくことになる。


「ジョニー。問題の本質を見失うな。迷ったときはシンプルに考えろ。そして判断に迷ったときは直感に従え。後悔するときは自分に問え。その後悔が10年20年先になっても落ち込むような問題か?ってな」


 『わかった』と言おうとしたのだが、何故か言葉が出なかった。だからジョニーはシェルの右手でサムアップを返すことにした。まだまだ経験が足りない若者なのだから、失うものを怖れずに当たってぶつかっていけば良い。

 それを可能とする年齢だし、また、いま持っているものを失ったとしても、まだ取り返せるタイミングだ。最も、ジョニーくらいの年齢だと、失う事の怖さの方が何倍も大きいのだから難しいのだが……









 それから約1時間後……




 何とも形容しがたい悶々とした感情に悶えるジョニーを余所に、バンデットを曳航して来たシェルの集団は一時間程でハルゼーへと到着した。さすが巨艦だけのことはあり、艦内の医療施設も充実している。


「助かるかな?」

「さぁな。後は本人の運じゃ無いか?」


 祈るような言葉を吐いたヴァルターだが、元来のメディコ(医療兵)であるウェイドはどこか虚無的な言葉を吐いた。死神に見込まれた兵士が神の御許へと旅立つか、それともこの世でもっと苦しむのか。その境目は越えてみなければ解らない。幾多の死を見てきた医療兵にしてみれば、安易な楽観論など全く無意味だと身にしみて解っているのだ。


「慎重にやれ。下手に当てるなよ。ショック死するかもしれん」


 エディですら息を呑んで見守る中、慎重に慎重にハルゼーのハンガーへバンデットを持ち込み、気密の取れる小さな区画へとバンデットを押し込む501中隊のシェル。

 まるで外科手術のように慎重なオペレーションを行った後、損傷したマイク機を除く501中隊の9機は艦内のオープンデッキに整列した。一糸乱れぬ統制を見せるその列も、嫌と言うほどハンガーデッキの中で訓練した成果だ。


「さて、反省会と行こうか」


 エディの声に促され、中隊のメンツは艦内を目指す。無酸素環境どころか真空中でも問題無いサイボーグはこの状態でシェルのコックピットハッチを開け、命綱を頼りにハルゼーへの艦内入口を目指すのだ。

 気密環境と真空環境を行き来するスタッフがいる宇宙船の常として、酸素を含めた空気の漏洩には気を使わざるを得ないし、また、大量の空気を宇宙へ放出してしまうと、一気圧環境へ戻す手間とコストがシャレにならない。

 気密環境への入口となる小部屋に集まったエディ以下の9名は真空側ハッチの閉鎖を確認し、小部屋に圧搾空気を充填して気圧差を解消してから艦内へと入る。その一連の作業が実に儀式掛かっているとジョニーはいつも思っていた。


「あのパイロット。助かると良いな」

「あぁ。ただ、中途半端に生き残ると……」


 ジョニーとヴァルターが顔を見合わせる。

 ふたりとも言いたい事は飲み込んだ。もはや手遅れなのだから、今更になってアレコレ言う事も有るまいと開き直っている部分がある。ただ、これから。まだ可能性的に間に合うのであれば。完全サイボーグ化では無く違う手段を……と、そう願ってしまう。


「所でヴァルターはいつ?」

「ジョニーがエディとニューホライズンへ降下する直前だ。被弾したジョニーをエディが助けに行って、そのサポートをしてる時にシリウスの戦闘機と接触したんだよ。かなり良い角度だったから、即死しなかったのが不思議なくらいだ」


 肩をすぼめて恥ずかしそうに笑ったヴァルターは、一緒に歩いていたデルガディージョとウッディを見た。その視線がカミングアウトを促していると気が付き、デルガディージョが先に口を開いた。


「俺は……地上戦の真っ最中に目の前で榴弾が炸裂して、で、全身に爆風を浴びて戦車の装甲に叩き付けられた。全く偶然だったんだが胸から上はすぐ前に居た仲間の影になったおかげで脳が即死を免れた。で、気が付いたら医療艦の中に居たって訳さ」


 恥かしそうに笑ったデルガディージョは横に居たウッディをチラリと見た。その眼差しの意味を察し、ウッディはジョニーとヴァルターを順番に見てから口を開いた。


「ロングマーチの補給廠で事務方をしていたんだが、実はいきなり連邦軍に艦砲射撃されて……」


 いきなりシビアなことを切り出したウッディの弁に、ジョニーやヴァルターが息を呑んだ。いや、サイボーグになったふたりなのだから息を呑むという表現は本質的に正しくないが、少なくとも何事かを言わんとした全ての気勢を殺がれたのは事実なのだろう。

 そして、そのふたりだけでなくデルガディージョやドッドやウェイドもまた言葉を失っていた。背中で話を聞いたまま平然としているのはエディ達4人だけだ。


「それで?」

「その砲撃は誤射だったと説明されたんだけど、その説明を受けたときは医療救護艦のサイボーグ処置室の中だった。直撃を受けて私が居た建物は綺麗さっぱり破壊されたんだけど、本当に偶然に私だけが瀕死の重傷で生き残った。後で聞いたらシリウスの海兵隊が連邦軍の戦列艦に進入して破壊工作をしたらしい。それで……」


 両手を広げてうんざりのポーズを取ったウッディ。ただ、その話を聞いていたジョニーは『あぁ、あの時の……』とシーンが目に浮かんだのだった。


「なんだかんだ言って、結局は運が良かった連中って訳なんだ。俺たちは」


 自嘲気味に呟いたデルガディージョは、腰に手を当てたポーズで苦笑いを浮かべるだけだった。


「まぁ、なんだ生き残ってるって言うのはそれだけで運が良いって事さ。拾った命だから大事にした方が良いぜ。だって……」


 話を聞いていたウェイドが急に真面目な顔になってドッドを見た。幾多の死を見てきた衛生兵の言葉にドッドも頷きつつ言った。


「俺たちがいま過ごしているこの時間て奴は、死ぬほど夢見た明日なんだぜ。戦死した連中にとってはな。どれ程手を伸ばしても届かなかった、指の間をすり抜けた未来なんだよ。生きられなかった明日だ」


 ドッドの目がジョニーを貫いた。

 何を言いたいのか、なんとなくジョニーも察しが付く。

 なんとも形容出来ない辛い空気が流れ、不意にエディが振り返った。


「少なくとも自棄(やけ)を起こすな。ふて腐ったりもするな。大事に、大切に生きろ。生きられなかった連中の分もな」


 言い含めるように、染みこむように、諭す様に。エディの言葉がジンワリと染みこんでいったジョニーは、不意にリディアの笑顔を思い出した。


 ――リディアの分も……


「ジョニー! 行くぞ!」


 気が付けば一人だけ落後していたジョニー。

 エディに呼ばれ走って行くのだが、この後の反省会でジョニーは徹底的に絞られるのだった……

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