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第14話 青葉☆ガールズ・ウォー

青葉学院高等部では6月になると1年生の学年をあげてのバレーボール大会が実施される。

各クラスの男女がそれぞれA.Bの2チームずつを作り男女別のクラスで対抗戦を行うのである。


ボクは103女子のAチーム。

みーちゃんやエリちゃん、そして中等部のときはバレー部のエースで現在も高等部女子バレー部期待の星のチハルなどが同じチームの仲間。

しかしミコは残念なことにBチームだ。


ボクたちのAチームは午前中の試合で4勝1敗と予想外の好成績を出して予選を突破し本選へと進んだ。


そして午後になって迎えた準決勝戦。

相手は因縁の107HR。

しかもあの川島弥生のいるAチームだ。


コートの周りにはすでに試合に敗れた女子チームの他、試合が終わった男子も応援に取り囲んでいる。


107HRはバレー部員1名の他、テニス部、バスケ部、ソフトボール部、陸上部などの体育系部員を中心に構成されている。

それに対しウチのチームはバレー部員のチハルの他はチア部のボクとみーちゃん、剣道部のエリちゃん以外は文化部系。

体力と技術差はチームワークで補うしかない。



ピィィーーーー!

「それではこれより試合を開始します。」


そしていよいよ因縁の試合は始まった。


まずは107HRチームからのサーブ。

低く強い弾道でボールがこちらに向かってくる。


それを美術部の咲が上手く拾い、剣道部のエリちゃんがトス、そして前衛のみーちゃんがアタック!


しかしこれは相手に拾われてしまう。


そして高く上がったトスを相手チームのバレー部員石野さんがスゴイ勢いでアタック!


(ボクのほうにくるっ!)


「アッ!」

しかしボクにそんなボールを拾えるはずもなく、ボクの身体は弾き飛ばされるようにして後ろに倒れた。


「凛、ドンマイッ!」

周りのチームメイトがそう言って励ましてくれる。

ボクは立ち上がってまた身構えた。


そして再び相手チームのサーブ


すると

サーブされたボールはまたボクのところへきた。


ボクは何とかこれを拾い、トスされたボールはそのまま相手コートに流れた。


ところが

それを素早くトスしまた107HRのバレー部員石野さんがアタックしたボールはまたまたボクへと向かってきた。


「イタッ!」

ものすごい弾丸アタックは今度はボクの手をまっすぐ直撃


「ちょっとタイム!」

さすがにその様子を見かねてウチのチームのキャプテンのチハルが主審にそう告げる。

そしてコートの中のみんなが集まってきた。


「ねぇ、なんか変じゃない?」

「でしょ!?これって絶対凛のこと狙ってきてるヨ」


するとチハルがニヤっと笑いみんなにこう耳打ちする。

「よし、次からこっちも川島弥生狙いでいくヨ。凛の周りをみーとエリが援護してやって。それでなるべく高いトスをあげてアタシがアタックするから」

「オッケー!」


みんながそう合図したところで再び主審のホイッスルが鳴り試合が再開した。


案の定相手のサーブしたボールはまたもボクを目がけてやってくる。

それをみーちゃんがうまくレシーブして、美咲が高いトスを上げてチハルが強烈なアタック!


「キャァッ!」

ボールは正確に川島弥生を狙い彼女の手を弾き飛ばした。


そしてサーブ権はこちらへ。

チハルの打った低い弾道の強烈なサーブはそのまま川島弥生の身体をバンっ!

と弾き飛ばす。


弾かれた彼女はしばらくコートの床に腰を落としていた。


そこにみーちゃんが

「ちょっと、ボールこっちに返してヨッ!」

ニヤっと笑い川島弥生に言った。


すると

彼女は重い腰を上げると、落ちているボールを拾い上げ……


キッとした目でみーちゃんの横にいるボクを睨みつける。

そしてそのボールをボクに向かっていきなり投げつけてきたのだ。


ダンッ!

バンッ!!


「キャァッッ!!」


5mほどの距離でそのボールはボクの肩に命中し、ボクは足をすくわれてその場に倒れてしまう。


「イタァァーー」

「ちょっとっ!アンタ、何すんのヨッ!」

みーちゃんがびっくりしてそう叫び、倒れたボクの身体を起こそうとする。


そして起き上がったボクは

「よくもやったなぁぁーーーー!」


そう叫んでそのボールを今度は川島弥生目がけて投げつけてやった。


バンッ!!

「キャァッッ!!」


今度は川島弥生が弾かれて床に足を取られ倒れた。


すると!

相手チームの後衛のひとりが

「アンタら、弥生ばっかり狙って汚いことするんじゃないヨッ!」

そう叫んで、近くにあったボールの山積みされたカゴを引っ張ってくると

その中のボールをボクらのチームに投げつけてきたのだ。


「じょ-だんじゃないわヨッ!アンタらが先に凛を狙ってきたんでしょーーっ!」

投げつけられたボールを今度はボクらが相手チームに投げ返す。


ワァーワァー!!

キャァーキャァー!!


もう試合はメチャクチャ

何がなんだかわからない状態になった。


「アタシたちも応援に行くヨーッ!」

そう叫んでBチームのミコたちがコートの中に入ってくる。

すると相手のBチームも同じように応援に参加してきた。


「エ、ちょ、ちょっと、アナタたち・・・」

審判役の古里先生たちはその様子を見てボーゼン自失

「おい、おい、どうなってるんだよ?」

周りいる男子は目を点にして突っ立っているだけだ。


しばらくして主審の先生はハッとして

「ちょっと!アナタたち、やめなさい!」

ボクたちを静止しようと大声で叫んだ。


しかし興奮したボクたちはそんなのお構いなしだ。

コートのあっちこっちでボールが飛び交っている。


「やめなさいっ!やめなさぁぁぁーーーーーっ!!」

その叫び声にようやくボクらはお互いの手を止めた。


「ハァ、ハァ、ハァ……」

それでもお互いの興奮はまだ収まっていない。


「試合は中止!103HRと107HRの女のコは全員103の教室に集まりなさいっ!わかったわねっ!」

小里先生のきつい声にボクたちは手に持っていたボールを下ろし、そしてゾロゾロトコートから出たのだった。



それからしばらくして

ここは103HRの教室


中では103と107の女のコたちが教室を真っ二つにして分かれて、お互い睨み合って座っている。


女のコ同士の喧嘩ということで、107担任の日下先生は遠慮してもらっていて、副担任の女性の瀬戸先生、そしてウチの担任の佐藤先生、女子体育主任で主審だった古里先生の3人が教壇の前に立っている。


「さて、まずは説明してほしいわね。これはなんなの?」

古里先生の問いかけに


「だって!107が悪いんですーー!」

「ちがいます!103の女のコたちがーーーー」

ワーワーと叫びお互い何を言ってるんだかわからない。


「ちょっと待ちなさいっ!何言ってるかぜんぜんわかんないわヨ!それぞれ代表2名ずつ出てきてちょうだい」

佐藤先生がそう言うと


「凛はここで待ってて。アタシとみーで行こう」

そう言ってミコとみーちゃんが前に出た。

向こうも川島弥生に事件のきっかけになった最初に廊下で話しかけたときの2人が出てくる。


しばらくその4名の話を交互に聞いた先生たちは

「わかったわ」

そう言って4名を席に戻した。


そして佐藤先生は

「ホゥー・・・」とため息をつき

「まったくアンタらはそんな下らないことで・・・」

と嘆くように言う。


「だってぇーーー!」

ワァーワァーとまた両サイドの女のコたちが騒ぎ出す。


「わかったっ!わかったわっ!」

そう言うと佐藤先生は2人の先生を教室の隅に連れて行きコショコショと内緒話を囁き始めた。


「エ、だって、そんな・・・」

「いいのヨ」

「ホントにいいんですか?」


しばらくそう囁き合うと3人の先生は再び教壇の前に上がりこう言った。

「じゃあ、お互いのクラスの感情に決着をつけましょう」


「どうするんですか?」

ウチのクラスのエリちゃんがそう尋ねる。


「この2つのクラスで最後の試合をします。今までのチームは関係なくお互いメンバーを選んでちょうだい。ただし条件が2つ。ひとつは当事者は必ず入れること。それともうひとつはバレー部員は双方1名ずつまでヨ」

「試合ーーー!?」


教室の中がザワザワとなる。


「ハイッ!それじゃ30分後に体育館に集合ヨッ!」


そういうわけでボクらは早速メンバー選出にかかる。

ボクとバレー部のチハル、そしてみーちゃんに水泳部のミコ、剣道部のエリちゃん他にも体育部系のメンバーを加えて最強チームを編成する。


そして両クラスのメンバーと応援の女のコたちが体育館に集合した。

男子は問題が複雑化すると面倒なので立ち入らせないそうだ。


「さて、みんな集まったわね?」

広い体育館には3人の先生と103HR、107HRの46人の女のコたち。


「それじゃメンバーは前に出てきてちょうだい」


双方のメンバー9人ずつが分かれて前に集合する。


「次にそのメンバーを5人と4人に分ける。はい、始めて」


「エ、なんでですか?」

それぞれのクラスの女のコは不思議そうに尋ねた。


「いいから!」

佐藤先生の厳しい口調にボクたちは2つずつに分ける。


ボクとミコは別々になった。


「それじゃ、次に103の4人が107の5人と合流。そして107の4人は103の5人と合流して」

「エー!それじゃ敵と同じチームじゃん!」


「なんでー!?」

「黙って言われたとおりにするっ!」


女のコたちは渋々と移動し

そしてボクたちは新しいチームを作る。


「ハイ、それじゃこれから試合を始めます。」

「ちょっと待ってください。これじゃ試合じゃないじゃないですか?」


「試合よ」

「だって敵どうし同じチームなんて・・・」


そう文句を言う女のコたちに佐藤先生は飄々と答える。

「あら、アタシはクラスで決着をつけるなんて一言も言ってないわヨ。『お互いのクラスの感情に決着を付ける』、そういったはずだけど」


「そんなー!」

「そんなもこんなもないっ!じゃあ、古里先生、主審をお願いしますね。はじめるわヨー!」


そして、何がどうなったかわからないけど、103HRと107HRの混成チーム同士の試合が始まってしまったのだ。


試合は一進一退を繰り返す。

3セットマッチで最初の1セットをボクたちが取り、次のセットを相手チームが取った。


3セット目は18VS20でウチのチームはとうとう追い詰められる。

何度かラリーをしたボールだが

最後は107の女のコがトスをあげ


「ハイ!藤本さん!」


そう言って107の女のコがトスをあげると

ミコは高くジャンプしてアタック!

ボールは見事にボクらのコートの中央に突き刺さった。


ハァ、ハァ、ハァ……。

誰もが激しく息を切らしている。


「ハイ、終了!」

ピーという主審の古里先生のホイッスルに女のコたちはその場に座り込んでしまった。


「アー、疲れたぁー!」

「アハハ、もうなんかどっちでもいって感じー」

「結果は21VS18で103&107混成Bチームの勝ち!どう?すっきりした?」


「すっきりしたぁーーー!」

どっちのクラスの女のコたちもみんなが一斉にそう声を上げる。


「じゃあ、これでこれからはお互い友達同士ヨ。いつか同じクラスになるかもしれないんだから仲良くすること。女同士っていうのはいがみ合いもあるけど、いざとなったら異性以上にお互い頼りになるものヨ」


そのとき体育館の入口の方から107副担任の先生が

「佐藤先生、買ってきましたヨー!」

と声をかけた。


「それじゃ、ここにいる女のコたちみんなに、今日の思い出にアタシたち3人からのおごりヨッ!」

そう言って先生が渡してくれた袋の中を見ると、青葉学院大学名物のソフトクリームが山ほど入っている。


「わぁーーーっ!」

女のコたちは大喜びでそれを手にして舐めだした。


もうどっちのクラスもない。

両方のクラスの女のコたちはごちゃごちゃに混ざり合いぺちゃくちゃとおしゃべりをしながらソフトクリームを頬張る。


そしてボクやミコの隣には川島弥生さんもいた。


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