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三題噺もどき5

暇つぶし

作者: 狐彪
掲載日:2026/04/21

三題噺もどき―はっぴゃくろくじゅう。

 




 スマホを片手に、机の上に置かれている飲み物に手を伸ばす。

 冷えた缶が指先に触れ、だんだんと冷えていく。

 中身は冷たいココア。

「……」

 その前に、スマホの画面に映し出されたトランプを動かす。

 あまりこういうパズルゲームパズル的な得意ではないのだけど、なんとなくたまにやってみたくなる。

 基本的に考えることが好きではないので、頭を使うゲームは苦手なのだ。単にバカと言うだけだが。すぐにヒントを使うし、何も考えずに動かしすぎてすぐに積む。何が楽しいのかと言われれば、何もと言うしかない。

「……」

 まぁ、それでも目の前の現実から目をそらすには丁度いい。

 視線をスマホから動かすことなく、手に持った缶を口元に持ってくる。

 ヒヤリとした冷たいアルミが口先に触れ、そこから甘い香りが漂う。

「……」

 こぼれないように傾ければ、口内に甘味料の塊のような甘さが広がる。

 喉に流し込めばまとわりつくような甘さに変わる。

 ココアと言うのは美味しいのだけど、市販のものは甘すぎると言うのが難点だ。

 美味しいから飲むけど。

「……」

 周囲はざわざわと騒がしい。

 昼休みだから当たり前なのだけど。

 これでも校内に居る人数は少ない方だろう。

 今日は天気も程よく晴れているし、さほど暑いという事もない。

 なんだか久しぶりに心地のいい天気に見舞われている。

「……」

 なんだかこういういい方は好きではないが、男子というモノはいくつになっても外遊びが好きなんだな……小学校から変わらずサッカーボールを取り出し、校庭で駆け回り、ボールを取り出し、当て合って。ここからは見えないから実際どうかは知らないけど。

「……」

 まぁ、その点女子も変わらないのか。

 集団を作ってきゃっきゃと楽しそうに話をしていると思えば、他の集団に向けてのあれこれを言い出して。仲間外れは当たり前で、いじめなんて大抵陰湿なモノばかり。

 頭がいいのか悪いのか……。私も言えたことではないので。何もこれ以上はやめておこう。

「……」

 目の前では、いつものメンバーが楽しそうに話している。

 その中にはもちろん、あの子がいる。

 長い髪の毛先をほんの少し切ってきたらしい。

 動くたびにさらりと揺れて、どこか少し艶やかにさえ見える。

「……」

 その先に見える制服のボタンが。

 一か所だけ外れているのが見えた。

 らしくもなく。

「……」

 スマホを閉じ、膝の上に置く。

 手に持っていた缶を机の上に置き、その手を伸ばす。

 目の前で楽しそうに話すその横顔に。

「……、」

「ん、どうしたの」

 まぁ、直接その頬に触れるなんてことは出来ないので。

 細い腕を覆う制服を軽く引っ張るにとどめる。

 驚くこともなく、ただきょとんと、こちらに顔を向ける。

 大きな瞳と、ぱちりと目があい、それだけで、なぜか不思議な気持ちになる。

「ボタン、外れてる」

「え、ほんとだ」

 顔を伏せると同時に、長い髪がさらりと落ちる。

 輪をくぐらせるタイプではなく、ぱちんと止めるタイプ。

 何かの拍子で取れたのか、止め忘れていただけなのかは分からないけれど。

 あまり外れることもなさそうなのに。

「ありがと」

「ん、」

 外れていたボタンを、パチンと止め、会話に戻ることなく。

 身体ごとこちらに向ける。

 もうお話は終わったんだろうか。

 いつものように机を挟んで、座っている。

「なにしてたの」

「……暇つぶし?」

「え~」

 ニコニコと。

 いや、にやにやと?

 楽しそうに。

「……」

 こんな表情を見せるのが、私にだけだったらなんて。

 思ってもいいのだろうか。











 お題:ボタン・甘味料・トランプ

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