美童好みの女神の逸話、その語り3
深々たる森夜の気配が去り、柔らかな日差しが空を青く彩っていく。
まだ柔らかな日差しが朝露を照らす。
天狗と一戦交えてから、女神が目覚める気配がない。
「お前たちはいったん座所へ戻るがよい」
ヌシは二人にそう言った。
宗次とサトミはいったんは固辞したものの、ヌシの意思も変わらなかった。
「大物主命に会いにいかねばならぬ」
「でしたら、女神様が目覚めるまではここにいます」
宗次はそう申し出たが、ヌシは首を振った。
「女神を案ずることはない。じき目覚めよう。それに、待てと約束したのだから先方も昨日の今日で事を仕掛けることもあるまい」
そうして。
昼を過ぎる頃には宗次とサトミは自分たちの社へと戻っていた。
だが、宗次にしてもサトミにしても心ここにあらずといったていで何をするでもなくじっとしていることしかできなかった。
子供たちは相変わらず境内で勝手に遊んでいる。
その様子を眺めながら、宗次はじっと座していた。
心配ではあったが、今何かできることがあるとは思えなかったし、思いつく気力もなかった。
ただ。
神とはなんぞや。
と。
天狗たちが口にした言葉が脳内を反芻する。
女神の本性。
それが蛇であることは間違いない。
しかし、神であるのか、妖であるのか。
その境とは何であるのか。
なんとなく答えはわかる。
だが、サトミを神としたヌシは、なぜ女神を神としなかったのか。
自然と深いため息がでた。
聞いていい答えなのか。
それとも。
女神は女神だといったヌシの真意はいったいどこにあるのか。
はたして大物主は祟りの縁を切ってくれるのか。
ぼんやりとまとまらない考えをめぐらせながら、宗次は境内の子供たちを見る。
この世の理に、本当に必要なものはなんなのか。
もし、ここまで女神たちとの縁が深くなければこんなことも思わなかったのではないか。
ただ、女神の無事と事の収束を祈るしかなかった。