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女神と天狗と神鬼の境


バシリバシリと、空を割く衝撃が伝わる。

ヌシの結界に守られているのか、沼の周辺は瘴気の淀みがない。

おそらく村にも悪い影響はないだろう。

人々が脅威に怯えているだろうが。




天狗めがけて雷を落とす。

直進しない雷を操り小さな的に当てるのは至難の業である。

だが、女神はそれをやってのける。

ただし比央も雉子もむざむざ当たってやる義理はない。

羽根を身代わりに女神の雷の直撃を避ける。


避けながら指をしならせ真空の刃を散らす。

刃が女神の体に当たり鱗の表面で跳ねる。

致命傷にはなっていない。

だが、動きを鈍く封じていく。

まるで檻に閉じ込めるかのように。


「お前たちはなぜ人の子に力を貸す?」


ふいに女神が問うた。


「そなたはなぜ若宮に執着する?」


雉子が問い返す。

そして隣の比央にも。

「比央、気付いておられるか」

「ああ、こいつ変だ」

比央の若々しい口元が楽しそうに形を変える。

散る雷撃にさらされ、比央の面を留めていた紐が緩む。

じわりと顔からずれて金色の瞳が現れる。

面は遠く地面に落ちた。


「こいつの力、俺たちに似てる」


龍体をくねらせながら女神は間合いを取った。


「それに、ここには別の神の力を感じる。それと、獲物の匂い」

「さすが比央。出雲でも高天原でも、ましてや特別な時期でもないというのに複数の神体がひとところにある。実に稀有」





もし、この世の人ならざる存在を分類することができるとすれば。



何を基準として。

そは神と。

こは鬼と。



誰が分かつものなのか。


奉られるものと。

畏怖されるものと。


何によって意識されるのか。



「ああ、なるほど?どちらがそなたの本当の姿か?」



雉子がにやりと笑む。

すべてを了解したとその顔が言う。



女神は龍体のまま瞳を閉じた。


鱗を持って生まれた。

皆に恐れられた。

そして、ヌシの生贄になった。


どちらが本当の姿かと問われて思い出す。


どちら、とは。


人か、妖しか。

妖しか、神か。



「さあ?女は秘密があるほうが魅力的だろう?」



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