24話 婆ちゃんの辞世の句
1990年 5月
婆ちゃんは、病院のベッドにいた。
智也は、義理とはいえ孫として婆ちゃんから余りある愛情を受け、青年となっていた。
婆ちゃんは、大腸癌を患い余命がさほど残っていない状況であった。
智也は、専門学校に通い20歳を迎える所であった。
智也は、バイクの運転を隆二の厳しい指導の元覚え、普段の移動はバイクを使っていた。
婆ちゃんの入院している病院にバイクを着け、病室へ向かう。
婆ちゃんの病室は個室でシャワールームもついている。
以前、シャワーを浴びて、夜間居眠りしていたら、婆ちゃんに「お前だけだよ、シャワー浴びたのは」と小言を言われた。
病室に入り婆ちゃんの枕元にあるイスにすわると、婆ちゃんは小声で何か智也に話かける。
「婆ちゃん?何?」と智也が聞き返すと、婆ちゃんは、渾身の力を込めて言った。
おやばかちゃんりん
そばやのふうりん
わったらばっきん
「これ何だ?」
婆ちゃんは、そう言うと悪戯めいた笑みを浮かべ眠りについた。
それから、2週間もしないうちに婆ちゃんは旅立った。
2003年 夏
智也は、運送業に従事していた。
婆ちゃんのナゾナゾ
智也はあれから10年以上ナゾナゾを考えていたが、一向に答えは見つからなかった。
そんな時、ラジオから曲が流れてきた。
いろはにおえど
ちりぬるを
わがよだれぞつれならむ
ういのおくやま
けふこえて
あさきゆめみし
えひもせず
きえてはうかび うかんではきえる
そんな、曲を聴いていたら、
オヤは バカに チャンと リンり
婆ちゃんのナゾナゾにいろはにほへとを組み込んだ。
智也は、車をとめ、メモ帳に書き込んだ。
10分あまりで、こんな句が出来た。
親は馬鹿にちゃんと倫理
側は野のぞ夫婦臨機
別つ日も垂らせず罰金
智也は、10年以上かかえてた、婆ちゃんのナゾナゾが解けた気がした。
智也は、婆ちゃんの事を思い出し、薄暮の空に話しかけた。
「婆ちゃんありがとう」
智也は、エンジンをかけ配達を始めた。
完




