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23話 ザリガニ

 智也は、官舎の側にある〝沼〟と言うには烏滸(おこ)がましい水溜りにザリガニを釣りにきていた。

 ザリガニには、隆二から教わったイカのおつまみをエサにした。

そのイカを凧糸にしばり、一本釣りするのである。

 〝沼〟は、雑草に覆われていて、水辺に辿り着くのも一苦労であった。

水辺まで、来ると緑色に濁った水に糸を垂らす。

10分おきに、かかっていないか確認するが、なかなかザリガニはかからなかった。

 1時間は経ったであろうか?糸が、ピクピク動く。

智也は、ゆっくり、そおっと引き上げると一匹のアメリカザリガニがイカに食いついていた。

「やった!釣れた!」と智也は喜び、持って来た小さなバケツに入れ、急いで自宅へ帰った。


 夜 官舎


「ただいま!」と隆二が帰ってくると、智也はベランダで、釣ってきたザリガニに夢中になっていた。

「ザニ太郎!美味しいかい?」そうザリガニに名前をつけ、可愛がっていた。

それを見た隆二は、「おっザリガニか?日曜日にもっと取れる場所へ連れて行ってやるよ!」と智也に話かけた。

「ホント!連れてって」と智也は喜んだ。

「おお、たっぷり取ってやるよ!」と胸をたたいた。


 日曜日


 隆二は、約束通り、智也を車に乗せて30分程離れた用水路にいた。

「いいか、智也!ここは沢山取れるぞ!見てな!」そう言うと隆二は糸を垂らした。

「ほれ!」そう言って引き上げた糸には、三匹のザリガニが、掛かっていた!

「凄い!お父さん上手い!」そう言ってザリガニをバケツの中にいれる。

「智也も、やってみな!」と隆二は、智也の仕掛けを作ってやり、智也に渡した。

智也も、糸を垂らすと暫くしてザリガニが、掛かった。二人はザリガニ釣りに夢中になり、1時間もするとバケツ一杯の50匹のザリガニが獲れた。

 二人は、満足してザリガニをお土産に帰路についた。


 「ただいま!」と隆二と智也が帰って来ると香は「お帰り、獲れた?ザリガニ?」と台所から、声だけで、返事をした。

隆二は、「大漁!大漁!」とバケツの中なザリガニ50匹を〝ザニ太郎〟の入った水槽にドバドバと入れた。

 結果、水槽は、満ぱんになり、溢れかえる程であった。

 智也はその光景に唖然として、「僕のザニ太郎がどれか分からなくなった‥」と呟いた。

水槽の中では、50匹のザリガニが所狭しとうごめいている。

それを見た香は、「気持ち悪い!こんなに沢山飼ってどうするの⁈放してきなさい!隆二さん!」と隆二を叱った。

隆二も溢れるザリガニを見て気分が悪くなっていた所であった。

「どれがザニ太郎が分からないよ!」と智也の泣き声が官舎に響いた。


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