21話 エレベーターガール
千葉 四越デパート
香と智也は、日曜日に千葉駅の近くにある四越デパートに買い物に来ていた。
入り口から、エレベーターの前まで来ると一台のエレベーターの扉が開いた。
「いっらっしゃいませ、上へまいります」と中にいたのは、背の高いパーマをあてた、栗色の髪の美人の女性であった。
智也は、まるで〝テレビ〟から出てきた様な出立ちに息をのんだ。
香と智也は、エレベーターに乗り、「7階をお願いします」と伝えると、美人のエレベーターガールは「かしこまりました」と言いエレベーターのボタンを押した。
智也は、小声で香りに「芸能人かな?名前なんてのかな?」と聞いた。
香は「シー!エレベーターガールのお姉さんよ」と小声で制止した。
チン!エレベーターは7階につくとエレベーターガールは、「7階です!私は青田美登里と申します!行ってらっしゃいませ!」と軽く会釈をし、答えた。
香は、「ありがとうございます」と言い、智也の声が聞こえていた事に罰の悪さを覚え、恐縮して智也の手を引いた。
智也は、振り返り「みどりねえちゃん!バイバイ!」と手を振った。
美登里は、エレベーターの中から智也に手を振り、笑顔を見せた。
翌週 日曜日 古川雑貨店
智也と土田食堂の修は、庭で雀を捕まえようと苦戦していた。
ザルに紐の付いた棒を立てかけ、米粒を撒き罠をしかけていた。
「今だ!」修の掛け声で智也は、紐を引っ張るが、雀は逃げてしまい、ザルの中は空っぽである。
そこに、通りから、「下手ったくそだっぺな!ちょっとお姉ちゃんに貸してみ〜」と訛った声が聞こえた。
智也が振り向くとそこには、エレベーターガールの青田美登里が立っていた。
智也は、「あっ美登里ねえちゃんだ!」と駆け寄る。
美登里は、腕まくりをし、スカートの裾を捲り上げ、かがんで、罠の紐を握る。
「ちゃんと、見てるんだっぺよ!」と雀が米粒に近寄るのを注意深く探る。
「今だ!」美登里が紐を引っ張ると雀は、見事にザルの中へ収まった。
「やったー!」「スッゲー」と智也と修は大喜びである。
「どんなもんだっぺよ!」と美登里は、お洒落な様相とは似つかわない力こぶをだした。
そこへ、騒ぎを聞きつけた婆ちゃんが、店から出てきた。
「ほう!捕まえたか!じゃ約束の100円じゃ」と智也と修に100円玉をそれぞれ渡した。
「ところで、どちらさんじゃろか?」と婆ちゃんは、美登里に尋ねた。
美登里は、萎縮し、「私は‥私は‥なんて言うか‥」と返答に困っていると、「悪い!遅くなった!」と清一が帰ってきた。
清一は、「婆ちゃん!紹介するよ!俺の彼女の青田美登里さん!ほら美登里!ウチの母親」と美登里に婆ちゃんを紹介した。
美登里は、「あの‥あたし、青田美登里といいますう‥清一さんと、交際させてもらってますう〜」と清一の陰に隠れる様に、恐る恐る申し出た。
婆ちゃんは、「そうかい!そうかい!よくいらっしゃった!」と歓迎した。
智也は、「え!清一兄ちゃんの彼女!やる〜」と言い辺りを小走りした。
婆ちゃんは、「むさ苦しい所ですが、中へ上がって、上がって!」と案内した。
庭には、ザルから放すの忘れられた雀が、チュンチュン鳴いていた。




