20話 冷蔵庫の故障
ある日曜日、隆二の家の黒電話がジリリと鳴る。
「隆二か?おはよう」と電話の相手は、婆ちゃんであった。
「氷?買ってこい?冷蔵庫が壊れた?ふん、‥」
「わかった、すぐ行くよ」と隆二は受話器を置く。
朝食の支度をしていた香が「お婆ちゃん?なんだって?」と電話の声を聞いて、隆二に問う。
「いや、冷蔵庫が壊れて、昔使っていた〝氷式の冷蔵庫〟をとりあえず使うから、氷を買ってきて欲しいんだと、今日の午後には、電気屋さんが来てくれるらしいが、それまでの間に、だと」と答える。
香は、「わかった、朝ご飯急ぐね」と古川雑貨店に向かう支度を急いだ。
古川雑貨店 台所
婆ちゃん、爺ちゃん、清一、隆二は、固唾を飲んで、修理にあたってくれている電気屋さんに注目する。
「こりゃダメですわ!買い替えですね!」
冷蔵庫を分解し、対応にあたってくれたが、どうやら駄目らしい。
婆ちゃんは、「そうか、仕方ないな〜爺ちゃん買うしかなかろう?」と爺ちゃんを見る。
爺ちゃんは、「電気屋さん、おすすめの冷蔵庫はあるかね?」と電気屋に聞くと、電気屋は、鞄から、〝松田電気〟の新型冷蔵庫のパンフレットを
出して「今、丁度、松田電気のキャンペーンやってまして、この2ドアの冷蔵庫が7万2000円で目玉商品です!そうだ、買ってくれたら、ジューサーミキサーもサービスで付けますよ!」と松田電気の冷蔵庫を勧めてきた。
「松田電気⁈」と隆二は、香の元、夫の件もあり、そっぽを向いた。
清一は、「そりゃ安い!婆ちゃん、松田電気にしようよ!」と大乗り気である。
爺ちゃんも「ワシも、ジューサーミキサーが欲しいのう、リンゴジュースを作りたいんじゃ!」と乗り気だ。
座敷で、智也の相手をしていた香が「お婆ちゃん、気になさらないでください!冷蔵庫と、元夫は関係ありませんから!」と声をかけた。
婆ちゃんは、「東立は、どうじゃ?」と電気屋に聞くと、電気屋は、「東立ですか?東立は、今置いてないんですよ、取り寄せになりますし、1週間はかかりますよ!」と渋い顔をした。
婆ちゃんは、そっぽを向いている隆二を見た。
隆二の背中からは、〝悔しさ〟がにじみ出ている。
『なんで東立にしたんですか!』と隆二以外から婆ちゃんは責められた。
「いいんじゃ、1週間くらい隆二が〝氷〟を持って来てくれるじゃろ?なあ、隆二?」と隆二に聞くと、隆二は満更でもなさそうに「別に、松田電気でも良かったんだぞ、婆ちゃん‥」とにこやかである。
婆ちゃんは、「〝武士に二言は無い〟だろ?隆二?」と言い、皆は、智也の実の父の前で隆二が言った〝松田電気は二度と買わん!〟を思いだした。
爺ちゃんは、「ジュウサーミキサーが‥」としょんぼり肩を落とした。
1週間後
古川雑貨店にピカピカの東立の冷蔵庫が届けられた、誰よりも嬉しかったのは、隆二であった。




