15話 親権問題
隆二は、香と智也を乗せ谷津遊園より帰宅した。
庭に車を停め、「楽しかったね〜」「おっきくなったらジェットコースター乗るんだ!」とはしゃぐ二人を隆二は、温かい目で見ていた。
〝嗚呼‥こんな家庭って幸せだよな〟と勝手に未来を描いていた。
座敷から何やら話声が聞こえる。
「そんなんが、パーソナルコンピュータかい!
たまげたねぇ!」
「そうなんですよ、未来はすぐそこです!」
隆二達が「ただいま!」と玄関の引き戸を開けると中で、婆ちゃんと爺ちゃんと清一と楽しそうに話す白いスーツの男がいた。
白いスーツの男は、香を見るなり、立ち上がり「香!」と叫んだ!
香は、顔色が見る見る変わり、走って逃げようとした!香は、走りだすと、婆ちゃんが「隆二!止めるんじゃ!」と声をかけ、隆二は香をすぐに追いかけた。
香の右手を掴んだ隆二が見たのは、泣いている香であった。
古川雑貨店 座敷
清一が聞く「香さん‥酒癖が悪いとかかい?」
香は、首を横に振る。
スーツの男も「私は酒は飲みません!」と言う。
清一は、「じゃあ、女癖が悪いとかかい?」と聞くと、香は、またも首を横に振る。
「わかった!ギャンブルだ!」と清一が聞くと、香は、また首を横に振った。
清一は、「どうしてなんだ!こんないい旦那さんから逃げるなんて!聞いたら〝松田電気〟の御曹子だそうじゃないか!」と言うと、隆二が、横から「〝松田電気〟ってあのテレビや洗濯機作ってる⁈」と聞いた。
松田電気の御曹子、松田悟は、「どうしてなんだ!香?俺が何したって言うんだ!何不自由なく生活してたじゃないか⁈智也も産まれて、俺の何がいけなかったんだ!」と言って立ち上がった。
香はずっと俯いたままだったが、ボソっと何か言った。
婆ちゃんが「どうしたんじゃ?香さん?」と聞くと香は、「馬鹿にした‥」と呟いた。
婆ちゃんが「馬鹿にしたって何を?」と聞くと、
香は、覚悟を決めたように、立ち上がり、
「馬鹿にしたじゃない!〝ひょっこりひょうたん島〟を!私にはね!私には〝ひょっこりひょうたん島〟が全てなのよ!それを貴方!ひょっこりひょうたん島を見てた私に、〝そんなくだらない番組みて〟って馬鹿にしたじゃない!ひょっこりひょうたん島を理解出来ないなんて!そんな人と一緒にくらせません!」と言い切った!
『へ⁈それだけ』と婆ちゃん以外は、呆気にとられた!
「たった、それくらいの事で智也を連れて蒸発したって言うのかい!」と松田は呆気に取られた。
「たったそれだけ!たったそれだけって言うの!
私を何も理解してない!だから出てったのよ!」と香は言い返した!
「分かる!」と婆ちゃんが突然大声をだした。
「ひょっこりひょうたん島をくだらないなど言う男は、何もわかっとらん!ワシもひょうたん島は
見ているぞ!あれを理解できんとは、見損なったぞ!松田さん!」と婆ちゃんは香の肩を持った。
松田は、苛々として、「わかったよ!わかった!
お前の置いていった離婚届にサインするよ!
だが、智也は渡さない!智也は松田電気を将来背負って立つ子だ!智也は、連れて帰る、女独りでどうやって育てるんだ!」と言って智也の手を取ろうとした!
香は、咄嗟に智也の手を取り、隆二の背中に隠れた。
「私はこの人と再婚するんです!何の心配もいりません!」と隆二に抱きついた。
全員が目を丸くした!
当の隆二は、「俺⁈」と訳がわからず動揺した。




