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迷い家(まよいが)①

四月だというのに、真夏のような日差しが照りつける午後だった。アスファルトがじんわりと熱を持ち、風もほとんど吹かない。そんな中、悠真は汗をぬぐいながら川越の街を歩いていた。


「おかしいな……確か、この角を右だったよな」


ぽつりと呟いて、そこの角を右に曲がる。すると、左手に閉店した酒屋が見えた。シャッターには「長い間ありがとうございました」の貼り紙が日焼けしている。そこをそのまましばらく歩くと、大きな杉の木が生えている角があった。涼しげな影が地面に伸びている。


「よし、ここを左だ」


曲がった先に見えたのは、「蔵造りの街並みはこちら」と書かれた立て看板。看板は、古い民家の前に立っていて、いかにも観光案内っぽい。安心して真っ直ぐ進んでいった悠真だったが――


目の前は、まさかの行き止まりだった。


「……は?」


立ち止まり、周囲を見渡す。細い路地の突き当たりには、苔むした塀が静かに立っていて、道はそこでぷっつりと終わっていた。


「おかしい、絶対さっきの看板に従ったのに……」


引き返して最初の角を曲がると、またしても酒屋が現れた。シャッターの「長い間ありがとうございました」の貼り紙が目に止まる。


「……え? デジャヴ?」


悠真は足を止めた。頭上では、カラスが一声「カァ」と鳴いた。まるでどこかから見られているような、不思議な気配が漂っていた。


「なんか、これ……また変なことが起こってんじゃ……」


汗とは別のものが、背中をじんわり濡らしていた。

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