閉ざされた雪塚③
「なにぃ!?」
サル爺が、バタバタと倉庫からキッチンに入ってきて、悠真の隣に並んだ。
「……き、北村さんかの!?」
サル爺が驚愕の声を上げる。
床に倒れていたのは、サルレンジャーのメンバー、北村さんだった。
サル爺が真っ先に駆け寄った。
「おい!北村!しっかりせい!」
肩をゆさぶるが、返事はない。
「ま、まさか……」
店内に入ってきた千鶴が思わず口元を押さえる。
サル爺は眉をひそめ、慎重に北村さんの顔を覗き込んだ。そして、静かに告げる。
「……北村さんは、死んでおる」
「えーっ!!!」
全員が一斉に叫び声を上げた。
「な、なんで!?どうして北村さんがこんなところで!?」
千鶴はわけが分からないといったように戸惑っている。
「とにかく、警察を呼ばないと…!」
悠真ばポケットからスマホを取り出そうとすると、サル爺が鋭い声で言った。
「待て!」
その真剣なトーンに、悠真は思わず手を止める。
「ど、どうしたんですか?」
サル爺は腕を組み、渋い顔で言う。
「よく考えろ。ここは密室じゃ」
「……え?」
悠真は店内を見回す。雪塚への出入口は2つ。一つはいま悠真たちが入ってきた裏口。そして、もう一つは……
(北村さんが倒れて、正面の入り口を塞いでいたのか……)
普段からカレーを愛食する北村さんは、体重100kg越えの巨漢だ。その彼が、入口を塞ぐように倒れており、侵入を阻んでいた。
「わしらがここに入ってきたとき、店の入り口は開かなかった。そして、裏口は誰も通った形跡がなかった。もし、誰かが北村をここで始末したなら、どうやって出たというんじゃ?」
「!?」
「……この状況は、つまり……密室殺人?」
「その通りじゃ」
「えええええ!?どうしよう!?どうすればいいの!?」
千鶴とおばさまたちは、大パニックに陥る。
「でも、それなら、なおさら警察連絡しないと……」
悠真はそう言うが、サル爺は首を振る。
「ワシらは、自分たちが犯人でないことを知っている。だが警察はどうじゃ?密室で人が死んでいたら、まず第一発見者を疑うんじゃないかの?」
「そうね」
突然、冷静になった千鶴が返事をした。
「警察を呼ぶ前に、私たちで犯人を探す。そうしないと、私たちが疑われてしまうわ!」
「え!?」
千鶴との突然の宣言に、悠真は頭が着いていかない。
(いやいや、警察に任せたほうがいいでしょ!?)
「そうね、その通りだわ!」
「私たちで密室の謎を解きましょう!」
「時間ならあるし!」
おばさまたちもノってきた。
悠真が呆然としてると、サル爺が話しかけてきた。
「ときに悠真。お主が第一発見者ということになるな?」




