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閉ざされた雪塚①

みなさんこんにちは。雪です。


皆さんは、開かずの○○って知っていますか?


例えば、ある時までは普通に利用していた部屋も、何かのきっかけで使用されなくなって、扉の鍵もどこかに行ってしまえば、月日が経つにつれて中に何があるのか誰もわからなくなってしまいます。


事情を知らない人からすれば、「中に何が入っているんだろう?」「何のために扉は閉まっているのだろう?」「何かを隠している?」などと想像が膨らみますね。


そうやって、”開かずの扉”は生まれます。


そして、ここにも開かずの扉が一つ。


果たして中には何が入っているのでしょうか?



***


ある日、悠真がいつものように喫茶「雪塚」に行くと、荷物を抱えた千鶴が店の前に立っていた。


「千鶴、何してるの?」


悠真が話しかけると、千鶴はほっとした様子で振り向く。


「あ、悠真。あのね、店のドアが開かなくて…」


見ると、まだ喫茶店の看板は出されておらず、ドアは閉まっていた。


「鍵をなくしたとか?」


「違うの。鍵はあるんだけど、鍵が開かなくて…」


なんだそりゃ?と、悠真は鍵を受け取り、鍵穴に刺して回した。


鍵が開くカチャッという音は鳴ったが、ドアを押したり引いたりしても、全く手ごたえがない。


「中で何かが引っかかってるとか?」


「えーっ、そんな物、置いてないけどなぁ…」


千鶴は首をかしげて、困った顔をする。


「窓から覗けない?」


二人は窓に顔を近づける。しかし、カーテンが半分閉まっていて、店内の様子はよくわからない。


(うん?なんか店内で動いたような…)


悠真がそう思った矢先、店の奥からガタっ!という音が響いた。


「…!」


「な、何の音?」


千鶴がビクッと肩を震わせる。


「…泥棒とか?」


「えぇぇ…」


二人が顔を見合わせていると、後ろからのんびりとした声が飛んできた。



「どうしたのー?」


振り向くと、よく店に来るおばさま3人組が立っていた。


「いつもの紅茶が飲みにきたわ」


「あれ?今日はお休み?」



千鶴が申し訳なさそうに頭を下げる。


「いえ、そうじゃないんです。ドアが開かなくなっちゃって…」


「まあ、大変!」


おばさまたちは、興味津々な顔で、交互にドアと千鶴の顔を見比べた。


「中に誰かが閉じこもってるとか?」


「それとも、まさかの幽霊?」


「やめてくださいよー」


千鶴がそう答えたとき、また背後から別の声がした。


「どうしたんじゃ?」


振り向くと、サルの全身タイツを着たサル爺が立っている。


「…今日も、その恰好なんですね」


「商工会のイベントがあるんじゃ!で、どうした?」


悠真は、色々言いたいことはあったが、とりあえず事情を説明する。サル爺は腕を組み、ドアをじっと見つめた。


「ふむ…なるほどのぅ」


「何かわかります?」


「うむ…これは…」


サル爺は何かを悟ったように頷き、厳かに言った。


「ドアが開かんのじゃ!」


「知っとるわ!!」


悠真と千鶴のツッコミがハモる。


「他に入口はないのかの?」


サル爺の言葉に、千鶴がはっとする。


「…ある!」


(あるんかい!)


「普段使ってないけど、裏口が!」


千鶴は、店の裏側へと走って行った。悠真と、なぜかおばさまたちとサル爺もそれについて慌てて後を追う。


(千鶴も意外とうっかりしてるな…)


悠真は、心の中で苦笑した。だが、彼はまだ知らなかった。


世の中には、開けてはならない扉があるということを。

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