お金がほしい!⑤
(……こんなレベルのショーだとは思わなかった……)
悠真は、内心焦っていた。
もっと、町内会の余興程度のものを想像していたのに、蓋を開けてみれば、キャラ設定も演出も、妙に本格的ではないか。
悠真の心配をよそに、オープニングショーのセットは手際よく片付けられ、いよいよ本編の物語が始まる。
「さて、今日も川越の平和を守るとするかの!」
サル爺 (サルレッド)が、威勢よく宣言する。
このショーのストーリーは、街の平和を守るサルレンジャーが、市民からの依頼を受け、問題を解決するというものらしい。
イエローが、とぼけたことを言い、グリーンが、それを拾って笑いに変え、ピンクが、的確にツッコミを入れ、サル爺が、うまくまとめる。
……意外にも、完成されたチームワークだった。
(おいおい、普通に盛り上がってるじゃん……!?)
観客の子どもたちは、そんなサルレンジャーのやりとりを安心した様子で楽しんでいる。
一方で、サルブルーの出番はというと、
「そーですね」
と、サル爺に相槌を打つだけだった。
……それ以外、台詞はない。
(これ……おれ、いる意味あるか?)
悠真は、複雑な心境になりながら、しっかりとした流れで進行するステージをただ見守るしかなかった。




