お金がほしい!②
クラーリに向かいながら、悠真は老人に聞く。
「…てか、本当に3万円出るんですよね?」
「安心せい。ワシの米屋は最近儲かっとるからの!」老人は、ニヤリと笑う。
——買い占めとかしてないだろうな、このじいさん……
悠真は、胡散臭そうな目で老人を見つめた。
(でも、子どものために仮装したりして、きっと根はいい人なんだろう)
悠真は、なるべく前向きに考えることにした。
***
クラーリの控え室に着くと、悠真は思わず言葉を失った。
そこには、全身タイツを着た男たちがいた。
ただし、全員お尻の色だけが違う。
——赤、黄、緑、ピンク、そして悠真の担当する青。
「なんというか……すごい光景ですね……」
悠真は、若干引き気味でつぶやいた。
「ふふん、どうじゃ、これが サルレンジャー じゃ!!」
サル爺 (レッド) は 誇らしげに胸を張った。
「……で、何するんです?」
「簡単じゃ! ワシら『サルレンジャー』が悪の組織から街を守るというショーじゃ!」
「いや、それ戦隊モノですよね……」
「そうじゃ!」
サル爺はなぜか誇らしげに頷いた。
「お主はサルブルー! クールな知性派という設定じゃ。そして、これがサルブルーの衣装じゃ!」
そう言って老人が悠真に渡したのは—— 尻が青い猿の全身タイツだった。
「これを……着るんですか?」
「そうじゃ! みんなそうしとる!」
悠真は横を見る。
すでに他のメンバーは着替えを終えており、各々のお尻を誇示するようにポーズをとっていた。
「……正気ですか?」
「正義じゃ!」
サル爺は拳を握りしめた。
「ワシらは地域の子供たちの笑顔を守る戦士! さあ、お主も正義のために立ち上がるのじゃ!!」
「いや、俺はバイト代のためですけど……」
悠真は、覚悟を決めて衣装を手に取った。




