恵との出会い
あなたが枯れるまでの、別の目線からのストーリーです。
突然さらわれて早くも1週間。
後宮と呼称されるこの場所のことも少しずつ分かってきたような気がする。僕がこれまでに知ったことを以下にまとめる。
・ここは後宮と呼ばれており、僕達を攫った大元の元凶である村鬼しげおに見初められ、さらわれた少女たちが囚われている。(なぜ男である僕を狙ったのかは不明だが)
・ここでは、実際に昔あった後宮と同じように位があるらしく、さらわれた者たちはより上の位になれるよう、日々蹴落としあっているらしい。ちなみに僕の現在の位は下から数えて5番目。それなのになぜか本邸にいる。(後宮にもいくつかの屋敷があるそうで別に記載する)最上位の位を持つ四夫人、貴妃、淑妃、徳妃、賢妃は、別格のようで、皆四夫人になりたいらしい。
・後宮は、本邸、花ノ宮、二ノ宮、三ノ宮があり、それぞれ別の屋敷で、散らばって存在しているとのこと。(そこまで遠く離れているわけではなく、車で10分くらい)自分の位によって住む屋敷も変わる。僕の位だと三ノ宮に住むはずだが、なぜか本邸にいる。聞くところによると、本邸に住むのは、公主、四夫人、もしくは彼女らの妹たちだそう。ただ、ここでは村鬼の言うことが絶対のため、特例で本邸に住まう人もいるよう。(僕がまさに)
・また、公主とは、後宮の頂点に立つ存在で、現在はまだ公主は決まっていない。公主という存在は、相当に優秀な娘が村鬼家のさらなる発展のために就けられる地位で、一度就けば、基本すげ替えられることはない。そして、後宮に囚われた少女たちの中で唯一外に出ることが許される。公主は、四夫人の中から選ばれるが、基準がかなり厳しい。
そのため、四夫人になると村鬼の寵愛だけでなく、家庭教師がつけられ、厳しく教養や、作法を教え込まれる。
・四夫人は、姉妹の契りを結ぶことができる。姉妹の契りとは、四夫人が、自分より下の位(四夫人以外の)の娘と双方の同意のうえで結ぶものであり、これは一度行うと、どちらかが死ぬまで破ることができない。契りを結んだ姉(四夫人)が失脚すると妹も、共に失脚するが、逆に姉が権威を振るうと、妹の格も上がり、位も上がるという、一蓮托生のような関係になる。姉妹の契りを結んだ妹は、姉の庇護下で守られることになるため、位が下のいじめに遭いやすい娘にとっては安全を手に入れられる利点がある。また、リスクは背負うが、契りを結ぶことで本邸に住むことができるため、村鬼の寵愛を得て妹の位が上がることも多い。
姉側にも、自分に従うものができるので、妹の数が増えれば自分の後宮での影響力が増すメリットがある。ただ、妹の失態も、監督不行き届きということで姉もろとも罰せられることもあるので誰を妹にするかは慎重に決めるそうだ。
かなり情報が多く、ごちゃごちゃとしてしまった。ここでは、位が低いと、その分ひどい扱いを受けやすく、逆に位が上だと、豪華で優雅な暮らしができる。だからここでは、日々蹴落とし合い、お互いに警戒し合ってるのだそう。本来なら、皆攫われた娘たちであり、仲間だと思うのだけれど、生きることに必死になればそうも言っていられないんだろう。ここに来てまだ1週間だが、もう3人も死んでしまった。1人は自殺、1人は処刑、最後の1人は事故死したと聞くが後宮では人が死ぬのは当たり前らしい。まるでゴミのように片付けられていた。人間の尊厳を奪われ、傷つけられ、挙句の果てに死んでしまうだなんて!!こんな場所、あってはならない。
だが、村鬼たちの誘拐は全国規模で行われているらしい。なぜ警察は気づいていないんだ。ここには何十人もの娘たちが集められている。それに、入れ替わりが激しいから、相当な件数の誘拐がおきているはずだ。まさか…いや考えたくない。それに今は外からの助けを待ったところで無駄だろう。こうして自分の思いを書き連ねているが、だんだんと気が重くなってきたので、図書室に本を借りにいくことにする。ここは、本邸なので屋敷も広く、図書室まで備えている。僕自身は、別に本を読むことは好きではないけれど、あそこには僕にとって2つの楽しみがある。
今日も気になる「あのヒト」がいるかも知れないし、前の時の返事があるかもしれない。
そうして僕は、実家よりもかなりゴテゴテした装飾品で溢れた廊下を歩き、図書室へ向かった。
(またいた!!)
彼女の姿を見て思わず隠れてしまったが、図書室にはいつも、見ているとドキドキする女の人がいる。僕は昔いろいろとあって女性に苦手意識を持っているのだが、あのヒトは、なんというか、見ていて惹きつけられる魅力がある。白髪の混じった髪に、やつれて物憂げなうつろな目をしているから老けて見えるが、そこまで年をとっていないようにも見える。いつもゆらゆらと本をパラパラとめくっては急に興味が失せたようにパタンと閉じて、別の本棚に吸い寄せられている。
不思議な人だった。
1回だけ目が合ったことがあるが、とても寂しそうな、すべてに絶望したような哀しい目をしていた。
彼女は、またいつものように本に触れては戻し、めくっては閉じていた。高いところにある本を戻そうとしたときに、体のバランスが崩れた。それを見て、考えるより先に体が動き、倒れ込みそうになった彼女を受け止めた。ビクッと、驚いたように彼女の肩が跳ね、怯えるように僕を見た。間近で彼女を見てみると、整った中性的な顔立ちをしており、凛々しくも美しかった。だが、全体的に青白く、相変わらずとても悲しげな目をしていた。「怪我とかはありませんか?」と聞くと、『いえ…ありません。ありがとうございます』とつぶやき、足早に去ろうとしたので思わず彼女の腕を掴んで引き留めた。
警戒心の籠もった訝しげな目で見つめてくる彼女を引き留めたのは、とある直感が働いたからだった。「本の中にメッセージを入れていたのは貴女ですよね 小鳥さん」
それを聞いた彼女は警戒の籠もった眼差しから、驚きの籠もった目になった。『せせらぎさん?』僕の秘密の文通相手しか知らないであろうはずの僕の秘密の名前を知っている彼女は、やはり小鳥なのだろう。
説明を省いてしまったのでわけが分からないと思うが、実は僕には本の中にこっそりと手紙を入れてメッセージを送り合う相手がいたのだ。初めてその手紙を見たときは驚いた。借りてきた本の中に、小鳥という名で書かれたメッセージがあったのだ。書いてある事自体は他愛のないものだし、何ら特別性はなかったが、何だか心の温まる、読んでいるとほっとできる力が数行のメッセージにはあった。僕はそれに返事を書き、図書室にその本を入れておいた。そうして、僕「せせらぎ」と、彼女「小鳥」のささやかな文通が始まったのだ。このささやかな文通と彼女に会うこと、これが僕の図書室での2つの楽しみだった。まぁ、まさか小鳥と同一人物だったとは思っていなかったが。
僕が秘密裏にメッセージを送り合うせせらぎだと分かると、彼女は、いくぶんか警戒を解いてくれたようだった。
『まさか、あの手紙の主が男性だとは思いませんでした…その、あなたはここではどういった立ち位置にいるのでしょうか?』
彼女の小鳥という名前からから、小鳥がさえずるような、か細く高い声をしているのかと思ったら、意外にも低くしっとりとした深みのある声で問いかけてきた。
恐らく、少女しか攫われないはずの、男といえば労働をするための大人しかいないはずのこの場所で、攫われてきた年長の少女たちと同じような年齢の僕のことを不思議に思っているのだろう。
「僕の名前はたくみと言います。年は13歳。僕も後宮にさらわれここでは宝林の位を与えられています。」
僕が名乗ると、彼女は驚いたようにわずかに目を見開いた。そして、何かを考えるように視線が左右に泳ぎ、独り言をつぶやいた。
『なぜ、男を妃の位に据えた?あの男は年若い少女のみを好むはず。何を考えてるの?』
うまく聞き取れなかったが、しばらく1人で何かを呟き続け、突然僕が目の前にいたことを思い出したように、こちらに顔を上げた。
『その、失礼いたしました。貴方様が目の前にいらっしゃるにも関わらず…それに、名乗っていただいたのにこちらのご挨拶が遅れてしまって… 私の名前は恵と申します。年はあなたと同じ13歳です。賢妃の位を与えられております』
ケンヒ…ケンヒ…けんひ…?賢妃?!
目の前にいるこの人!!メグミさん?がケンヒ?
このヒト、今、賢妃って言ったよな。
賢妃といえば、後宮最上位の四夫人の1人に与えられる称号だぞ。四夫人の中では一番低い位とは言え、後宮内で何不自由なく贅沢に暮らし、後宮中の人間から羨望のまなざしを向けられる頂点に近い位だぞ。
いや、まてまてまずいぞ。この人が、賢妃だとしたら、僕処刑されるかもしれない。上の位のものに対して、下のものは絶対服従。
上の位の人間に会ったらまず、後宮流の挨拶をしなければならない。しなければ不敬と捉えられ、処罰されても文句は言えない。
それが後宮の絶対のルールだ。上の人間への不敬として処刑された者たちも少なくない。
詰んだ。死んだ。母さんごめん。できれば生きて帰りたかったけど、僕はここで処刑されて死ぬんだ。ああ、できれば家族なみんなにもちゃんとお別れ言いたかったな。父さんや皆にもっと…なんか走馬灯みたいにいろいろ思いがあふれてき『もし?もしっっ?!どうされたのですか?突然顔が真っ青になられて大丈夫ですか?』僕はまだ死んではいなかったようだ。どうやら顔を真っ青にして、倒れ込みそうになっていたらしい。それを受け止めてくれた彼女の顔が、心配そうに僕の顔を見ていた。意識が現実に戻ってきた僕は、急いで起き上がると、後宮で最上位の人にする挨拶として、土下座し、平伏しながら、
「賢妃様におかれましてはご検討?あぁいやご機嫌麗しゅうございます。先ほどからの無礼、たいらん、たへいん、大変っ、失礼をいらしましたっ!!」
最悪だーーー
今からでも挨拶して、謝ったら処刑されないかもと思ったら、言葉は出てこないし、噛みまくるしで、逆に不敬の罪が増えた気がする。死んだ…短い人生だった。
『あの、ご挨拶いただき、ありがとうございます』ほらー、やっぱ怒ってるよ。きっとこの後、《このような挨拶、なんという侮辱、即刻処刑よー》となるんだろう。 肝心なときにもいつも僕は、僕は……
『ですが、私はそのような挨拶をしていただくような人間ではありません…どうかそんなに恐れず、顔を上げては頂けませんか?あなたを不敬罪で処刑…とかそのような恐ろしいことをしようなど思っていませんから』
恐る恐る顔を上げると、心配しながら、労るような、そんな優しげな賢妃様の顔があった。彼女の優しさが滲み出たその顔を見ていて、段々と冷静になることができた。
『せせらぎさん、いえ、たくみさん。
私はあなたとの文通…と言っても良いのか分からないけれど、あなたとのやりとりにとても救われていたんです。あなたのお人柄が、手紙を読んでいて伝わってくるようで…手紙を読むたびに心が温まるのを感じていました。
私の凍てついた心が、もう、温まることなどないと思っていた心が温まったのです。ですからどうか、2人で居るときだけは、私のことを、賢妃としてではなく、1人の対等な立場の、恵として接しては頂けないでしょうか』
……この人も、恵さんも僕たちの手紙のやり取りで救われていたのか。てっきり、心のぬくもりを感じたのは僕だけだと思っていたけれど、2人共胸があったかかったんだ。そう思うと、何だかとても嬉しくて、くすぐったいような思わずニヤけてしまうような、そんな気になった。僕は平伏するのをやめて立ち上がった。彼女に言われた通り、四夫人の一画である賢妃を見るのではなく、そこにいる、恵さんを見た。真正面でじっくりと見てみると、ますます美人だと思った。僕がこっそりと見ていた時の彼女は、虚ろな、悲しげな目をしていて、幽霊と見間違うほど存在感が儚げだった。だが、今目の前にいる恵さんは、いつもとは違いシャンとした、気品溢れる存在感があって、目も、いつものような虚ろさはなく、わずかに光の灯った、かつて彼女が光り輝いていた時その瞳が、強く持っていたであろう、人を惹きつける力があった。
黒の瞳の中にわずかに琥珀色の混じった、吸い込まれるような美しさを持った目から、僕は目が離せなくなってしまった。
「とても美しい瞳だ…」気づけばそんな言葉が口から出ていた。あっと思い、彼女を見ると、恥ずかしさからか、顔をほんのりと赤らめて、『ご冗談を』と言った。
『私の目など、とうの昔に汚れています。きっとたくみさんの眼が美しい故、汚れた目を持つ私などが綺麗な目に見えたのでしょう』
そう言った後、彼女の目はまた、昏く、虚ろな哀しげな目になり、儚げな影を持つ「小鳥」に戻ってしまった。心を閉ざしてしまったようになった彼女に、なんて声をかけて良いか分からなかった。ただ、彼女のこんな姿はもう見たくないと思った。その顔で心から笑った時の彼女は、どれほど美しいだろう。その唇が弧を描き、花が開いたように笑う彼女の顔が見てみたい。
彼女とは、初めて話したというのに、なぜか、もっとずっと昔にもあっているような気がする…彼女が笑ったときの美しさを知っている気がする。この感覚は、何なんだろう。
でも、1つ言えるのは、もう彼女を悲しませたり、苦しませたりさせたくない。暗い顔をさせたくない、ずっと彼女の幸せ溢れる顔を見ていたい。僕の隣で笑っていてほしい。
そう、強く強く思うのだ。
「こっち」それだけ言うと、自分でもよく分からないまま、困惑する彼女の手を引いて走り出した。(いったい僕は何をしてるんだ?なぜこんなことをしてる?何で走ってる?)でも、どこに行こうとしてるかだけは、はっきり分かっていた。
僕たちは図書室から庭に出て、しばらく走った。そして、以前見つけた場所にたどり着いた。
『ここは…?』息切れしながら彼女に聞かれ、彼女と同じく息切れしている僕は呼吸を乱しながらも答えた。
「ここは、前に見つけた自由になれる場所です」
『自由になれる場所?』彼女は、どういうことかと戸惑いながら周囲を見渡した。
彼女を連れてきたのは、甘い香りを纏う大きな金木犀の木と、生い茂る茂みに隠された花が咲き乱れる丘で、ここならば本邸の建物側から見ても、見つけることはできない。
本邸は、周囲をぐるりと高い塀で囲まれているのだが、この丘は、対岸とかなり距離がありここから逃げるのは難しい。そして、そんなところに塀を作る必要はないだろう…とでも思われたのか、丘につながる場所のみ綺麗に塀がないのだ。本邸側から見ても、こんなところがあるとは全く分からないので、僕も初めて見つけたときは驚いた。だが、ここだけは、後宮の息苦しさを、塀を感じることもなく、自由を感じることのできる場所だった。
日が沈み始め、カラスたちの鳴き声が聞こえる。
塀で囲まれ、朝陽も、夕陽も見れない本邸で、唯一、西に沈む陽を見ることができるのもお気に入りだった。
「ここにいると、僕は後宮なんかに縛られていない。空を飛ぶ鳥たちと同じように自由なんだ。そう思える。それにほら、夕陽がすごくきれいだ。本邸にいると、朝陽や、夕陽は見れないけれど、ここでなら夕陽も見ることができる。ここに攫われる前は当たり前のように見ていた夕陽だけど、この丘に立って久々に見た時、胸が締め付けられるぐらい美しいと感じたんです」夢中になって話していたら、いつの間にか敬語も忘れて喋っていた。彼女に元気をだしてもらうのが目的だったはずなのに、自分ばかり話してしまった。そう思って、ソロソロと彼女に目をやると、
彼女は泣いていた。夕日を見ながら、唇を噛み締めて、一声も発さずに泣いていた。今まで溜め込んでいた苦しみが、辛さが、せき止めていたものが溢れ出てきたんだろう。
その様を見ていれば、どれほど、彼女がここで苦しんできたか容易に知ることができた。
僕は、黙って彼女の隣にいた。それしか、自分ができることが分からなかった。ただ、ひたすら、苦しんでいる小鳥のそばにいた。慰めの言葉1つかけられず、何と情けないことか。でも、今はそれしかできなかった。
重く、苦しい沈黙の中、
ゴーンゴーン
と自室に戻らなければならない門限の時間30分前を知らせる鐘が鳴り響いた。いつの間にか、夕陽が完全に沈みかけていた。
この鐘を聞いたら、自室に戻り始めなければならない。門限を過ぎて自室外にいた場合は、罰を受けることになるのだ。
「恵さん、そろそろ」彼女に声をかけるのは気が引けたが、お互い罰を受けるわけにはいかない。恐る恐る、地面に向けていた視線を彼女に戻すと、彼女は泣き腫らした目をしながら涙を拭い、わずかに笑った、泣き笑いの表情を見せた。
『ありがとう。たくみさん。お見苦しいところをお見せしてしまって…
私はそこそこ長く後宮にいるけれど、こんな素敵な場所知りませんでした。また、ここに来ても良いかしら?』
泣き笑いとはいえ、彼女の笑顔に一瞬見とれていた僕は現実に戻ると彼女に伝えた。
「ここは、別に僕の場所じゃありませんから、好きな時にお互いここに来ましょう。
それから、その…僕はあなたともっと話したい。それで、あなたが嫌でなければ、お互い敬語は辞めて、さん付けも辞めて話しませんか?あの、あの、分不相応なのはよく分かってますし、僕なんかが、あなたと話すのもな〜、とも思うので、嫌ならここではっきり断ってもらいたいデス!!」また、感情的になり、最後の方は彼女の目も見ずにまくし立ててしまった。でも、彼女は、まっすぐこちらを見つめて言った。『たくみさ…たくみ。私も、もっとあなたと話したいと思ってまし…話したいと思ってた。私は敬語とか完全に無くすの時間がかかってしまうかもしれないけど、私でよければぜひ』
そう言って微笑む彼女は、わずかな夕陽に照らされた女神のようだった。
そこから先は、お互い、会話もそこそこに急いで自室に戻った。部屋に戻れたのが門限一分前だったので、監視役、じゃなくて、一応僕の世話係としてついてくれている執事、
田村に相も変わらずゴミを見るような目で見られながら怒られた。田村にネチネチと文句を言われている間も、僕はあの女神の微笑みを思い出し、その余韻に浸ることができた。遠目で見惚れていた彼女と話し、仲良くなれるなんて!!
これからはもっと彼女と話せる機会も増えていくかもしれないし、ここでの生活も悪くない、なんてほんの一瞬考えてしまうほどその日は幸せだった。まぁ、それが田村には気に食わなかったのか、門限ギリギリに帰った罰として、いつもよりもさらに夕食の量は少なくされてしまったが…
そんなこと気にならないくらい今日の僕は幸福感で満たされていた。
美しい彼女とまた会うことを思い浮かべながら、僕は寝床で、微睡み始めたのだった。
今作では、後宮の説明を多めに挟みました。