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4話 男の子視点での話 ②

【夏のホラー2024用に作った連載文章です】

【この物語はフィクションです】

【登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません】

【男の子視点での物語です】

 ここは、日本。○○県の、××市というところ。

 今は、202X年の7月。そしてここは、母ちゃんの車。



 たぶん普通の自動車の中に。

「母ちゃんゴメン。仕事中だったんだろ?」

 オレは後部座席。運転している母ちゃんに、今さらだけど。

「いいわ。そもそもナオキは被害者なんだから」

 時間は午後3時過ぎ。ついでにいうとここは街中。この××市はいわゆる地方都市だとか言われているところで、それなりに色んな建物はあると思う。

 そのうちの1つ・・・と言うほどでもないか。病院・・・と言うほどでもない。何とかクリニック。その駐車場に、車を停めて。

「ナオキは少し待ってて。受け付けに行ってくるわ」

 オレを残して、母ちゃんが1人で出て行く。オレはとりあえずスマホをいじっている。いわゆる子供スマホってやつだけど、ゲームもネットもできるんだぜ。もちろん電話やメッセージを送ったりも・・・チッ。

 クラスの連中からだ。やっぱりアレは言い過ぎだとか、謝った方がいいと思うだとか。だったら一緒に直接謝りに行くか?アイツに直接会いに行きたいやつがいるのなら一緒に行ってやるよ。どうする?誰が行くんだ?

 ・・・既読は付いた。返事は無い。ふん、綺麗ごとばかり言ってんじゃねーよ。オレは綺麗ごとばかり言ってる噓つきにはなりたくないからな。嘘ついたら地獄に連れて行かれるんだぜ?実際に地獄ってものがあるのかは知らねーけど。

「ダメだったわ。別のところに行くわね」

 おっと、母ちゃんが帰ってきた。10分くらいは出て行ってたから、てっきりオレは話や受け付けを済ませたのかと思ってたのに・・・駐車場を出る前、もとい車を走らせる前に、母ちゃんはスマホで何かを調べている。運転中にスマホを触ったら逮捕されちゃうからな。たぶん近くの病院を探しているのだろう。


 しばらくして、母ちゃんはスマホを触るのをやめて、ハンドルを握った。オレのスマホには未だに返事が来ない。まあ、どうでもいいけど。

 ・・・また小さめの病院、正しく言えば個人診療所ってやつかな?そこの駐車場に車を停めた――とほぼ同時に、誰かが近寄ってくる。

「こんにちは。まずはご用件を伺ってもよろしいでしょうか?」

 一言で言えば、完全フル装備の看護師さん。上からビニールのようなものを被ってて、長いゴム手袋も付けていて。声からして女の人だとは思うけど、顔すらもよく分かんない。そこまでの完全フル装備な人だ。

伝染うつっているかどうかの検査をしたいの。息子よ」

 オレ達は車に乗ったまま。母ちゃんは運転席では無く助手席の窓を少しだけ降ろして喋っている。いくら相手がフル装備で、車越しで話をするだけでも、できるだけ距離を取りたいという母ちゃんの意図はよく分かるぜ。

「・・・恐れながら、息子さんはお元気のようですが?」

 うん。だってオレ、普通に朝から学校に行って、昼まで普通にクラスにいたんだぜ?しいて言えば、アイツに噛まれた右腕がちょっと痛いだけだ。

「そんなの調べないと分からないでしょう?熱くらいは測ってよ」

「えっ?熱発・・・失礼、熱があるかどうかすらも調べていないのでしょうか?ええと・・・他に、何かしらの自覚症状がありますか?例えば」

「そんなのどうでもいいから調べてよ。伝染ってるかもしれないのよ?」

「・・・ええ、と。すみません、息子さんにお話を伺っても?」

 看護師さんは体をスライドさせて、後部座席に・・・なるほど、オレと話がしたいんだな?とりあえずオレも窓をちょっと開けといてやるぜ。


「改めてだけど、こんにちは。お話、聞いてもいい?」

 うん。車越しだけど、とりあえず頭は下げておくぜ。

「どこか、気分が悪いところはある?頭が痛いとか、体がダルいとか」

「いや、無いけど?」

「・・・熱っぽいとか、風邪っぽいとか、食欲が無いとかは」

「大丈夫。昼もちゃんと残さず食べたし」

「え、えっと。キミがお母さんに、病院に行きたいって言ったの?」

「いいかげんにしなさいよ。こんなことしたって時間の無駄よ」

 おっと、母ちゃんが乱入して来たぜ。運転席に座ったままだけど。

「いいから、調べて。検査ぐらいなら、できるんでしょ?」

「・・・まずはこちらの質問に答えてください」

 看護師さんの声のトーンが変わった。ちょっと不機嫌っぽい。

「この子が。息子さんが、伝染ったかもしれないという、根拠は」

「濃厚接触者。それ以上に理由はいる?」

「あ、なるほど。そういう理由なら・・・ちなみにその相手は、熱はどれくらいだったのです?接触した場所と、できれば詳しい時間帯も」

「たぶん熱は無いと思う。アイツも普通に学校に来てたし」

「・・・んんん?」

 おっと、看護師さんは頭を抱えちまったぞ?

「あのう・・・失礼ながら、濃厚接触者というのは、その相手が陽性だとハッキリ診断されている、というのが定義にありまして、そうなると」

「いいから検査してって言ってるでしょ!?こっちは客よ!?アンタ達にとっては利益になるんだから別にいいでしょ!?ああもう、こうなったら!」

「ひいっ!?ちょ、ちょっとお待ちください!?」

 オレも何かしらの反応をしたかったけど、母ちゃんは有無を言わせず車を降りて、後ろに乗ってたオレを引っ張るように降ろして・・・か、母ちゃん?強行突破する気!?うわわわ引きずるのはやめてくれって!服が破けちゃうって!


 診療所の玄関を抜けて、いざ入場。

「えっ・・・ええと、何の要件でしょうか?」

 受け付けの人は戸惑っている。この人もフル装備だな。

「伝染ってるかどうかの検査に来たのよ。できるんでしょ?」

「あ、あの・・・外の者からは、何も聞いて無いのですが?」

 外の者・・・ああ、駐車場にいた看護師の人か。

「勝手に入らないでください!何のために駐車場で応対してると思ってるんですか!?あなたのような人達があまりにも多いから、私達は!」

 そして間髪入れず、さっきまでオレ達と話していた人がやって来た。だけど母ちゃんはギロリと周囲を見回している。・・・ここまでくると、オレや母ちゃんが悪者なんだな、って理解できるよ。だけど母ちゃんはお構いなしに、

「これだから病院の人間は信用できないのよ!ワクチンだってアンタ達が独り占めしてるんでしょ!?そういうウワサなのよ!?一般市民は予約すら取れないのに、病院の人間とその家族は優先して、だなんて・・・ふざけんじゃないわ!」

 か、母ちゃん、もういいって。オレはどうにか母ちゃんの手を引いて、ここから立ち去ろうとする。いくらオレが子供だからって、場の空気を読むくらいはできるよ。だけど今の母ちゃんは、オレすらも眼中にないようだ。

「ウチの息子は、××病院で働いている人間の、その子供に噛み付かれたのよ!?飛沫感染だとか接触感染だとかそういうレベルじゃないわ!昨日まで知らなかったわよ!××病院が感染者の受け入れ先だったなんて!」

「――どこが、濃厚接触よ。それに、その病院は」

 誰かが呟いた。誰が言ったのかは分からないけど、その声は、とても怒ってた。それだけは分かるんだ。母ちゃん、もういいよ、早く帰ろうよ。

 こんなに患者がいるんだから、迷惑になるよ。むしろここに居たら伝染っちゃうよ。ここに居る人達は、そのためにここに居るんだからさ。



 最終的には。ここで一番偉い先生がやってきて、そこそこ長めに話をして、ようやく母ちゃんは引き下がった。・・・母ちゃん、大丈夫?

「――ふざけんな。納得、しないわ」

 うわぁ、大丈夫じゃなさそうだ。だけどアレは母ちゃんが・・・うん、綺麗ごとは言ってはダメだよな。それに今さら謝るのもなぁ。また明日から休みだから、アイツはおろか、当分はみんなとも会えないだろうし。

 ・・・ハァ。どうして日本は、世界は、こうなっちまったんだろ?

元々はハロウィン2023(なろう系成人向けサイトの企画)で書こうとして断念したものを全年齢向けに矯正するのは無理があったか・・・?

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