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1話 女の子視点での話 ①

【夏のホラー2024用に作った連載文章です】

【この物語はフィクションです】

【登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません】

【女の子視点での物語です】

 ここは、日本。○○県の、××市というところ。

 今は、202X年の7月。そしてここは、私の通う小学校。



 昼休み。お昼を食べ終わった教室内に。

「ギャアアアアア!?痛ってぇぇぇ!」

 男の子の悲鳴が。だけど知らんそんなの。

「やめろって!そんなことしたら伝染うつるだろうが!」

 他の男の子もぎゃあぎゃあ騒いでいる。だけど知らんそんなの。

 噛みつきたいから、私はこうしている。ちょうど今は7月だからね、半袖で腕が丸出しだから、噛みつき甲斐があるよ。だから私はこのまま、

「いいかげんにしなさい!2人とも、離れなさい!」

 嫌だ。たとえ先生の言うことでも、このクラスで一番偉い人の命令でも。知らんそんなの。私のこの口は、もう私では制御できない。

 殺す。殺してやる。コイツは万死に値する。絶対に許さない。だからコイツの右腕を、両手で掴んで、食らいついている。他のクラスの子達が、私の体を掴んで、コイツから私を引き離そうとするけど、そうはさせない。

 だから私はもっと、強く、強く、噛みつく。鉄の味がする。ポタポタと床に、赤いものが垂れ落ちている。コイツの右腕と、私の口から。

「やめなさいって言ってるでしょ!?ううぅ、こうなったら!」

 ぎゃああん!?い、痛い、先生、この令和の時代にゲンコツはコンプラ違反だよ・・・?まぁでも先生は昭和生まれのオバサマだから仕方ないよね。うぅう、頭が痛いから、私は頭を押さえてうずくまるしかない。

「い、痛い、先生、オレってもしかして、伝染っちゃうの?」

「と、とりあえず消毒しましょう!私がやるから、他の子は絶対に触らないで!あとみんな、ギャーギャー騒がない!静かにしなさい!」

 先生は、持ってたタオルでアイツの腕を覆って、アイツと一緒に出て行った。あとに残るのは、ザワザワする教室。だって今、昼休みだからね。


 右を見る。

「ひっ!?や、やめろ、こっち来んなよ!」

 こっちの男子はビビってやがる。お次は左を見る。

「や、やめて、私にも、伝染す気!?」

 こっちの女子もビビってやがる。お次は正面を、

「お、おい。せめて、口は隠せって」

 なるほど、それはごもっともな意見だ。私もハンカチくらいは持っているから、それで口を拭いてから、マスクを付ける。これでいいでしょ?

「ひいいっ!?ご、ごめん、僕達が悪かったから、その」

 許さないよ?じいっと、周囲にいるみんなを見回す。

「だ、だって仕方ないでしょ!?そういうウワサなんだから!テレビでも、SNSでも言ってるんだもん!みんなそうウワサしてるんだもん!」

 知ってる。私もテレビくらいは見るし、子供スマホでネットくらいはするよ。だからこそ許せない。みんな、私を何だと思ってるの?

 同じ日に、この学校に入学して。年の変わり目にクラス替えしたり、誰かが転校して出て行ったり、あるいは新しい子が転校してきたりもしたけど。

 ずっと、一緒だったよね?私はみんなの同級生だよね?

 なんで、私をそんな眼で見てるの?私、何かした?

「いや、だって教室で流血沙汰は・・・やめろよ、逆ギレすんなよ」

 逆ギレって何?意味分かんない。とりあえず床は私がキレイにしておくね。みんな触りたくないんでしょ?私に近づきたくないんでしょ?

 だって、私に近づいたら伝染るから。それが、嫌なんでしょ?


 午後の授業、のはずだけど。教室には担任の先生とは別の先生が来て、その先生が授業をしている、らしい。ぶっちゃけ興味は無い。

「まったく、お宅のお子さんはどういう教育をしてるのですか!」

 だって今は、この場を乗り切るのが先だからね。

 教室からは離れた、とある部屋に。子供は私含めて2人、大人は5人。内訳は、学校の先生が2人、相手の親が1人と、私の親2人・・・でいいのかな?

「もしこれで伝染ったら、どうしてくれるのよ!これで息子が死んだら、どう責任を取るつもりなのよ!?言ってみなさいよ!」

 ええぇ、息子さんはピンピンしてらっしゃるようだけど?だけど学校に、右腕に白い布切れのアクセサリーを巻いてくるのはどうかと思うなぁ。

「こらっ!いいかげんにしなさい!誰のせいでこうなったと」

 先生。そこから先を言ったら、先生であっても許さない。

 誰のせい、って。私のせいなの?私だけが、悪いって言うの?

 ・・・ふん。担任の先生は黙っちゃった。合席している教頭先生も、何も言えないようだね。言っておくけど、私は誰が相手でもヤるよ?

 大きな机を挟んだ向こうに居る、アイツと、その母親を睨みつける。アイツは視線を逸らしちゃってるけど、お母さんはガンを飛ばして来てるね。ちなみに先生2人も向こう側にいる。なるほど、私は完全アウェーってわけか。

 もしくは、近づきたくないだけなのかな?そりゃあそうだよね、そういうウワサだもんね。いくら綺麗ごとを言ったとしても、先生達も伝染りたくないよね。あぁあ、私の味方はこの2人だけか。ゴメンね、私のせいで。

「いいのよ。・・・さて、少しは冷静にお話ししましょうか?」

 うん、さすがはお婆ちゃんだ。落ち着いてらっしゃる。


「孫から話は聞きましたが。改めて、今回の出来事について。順を追って、お話を伺いたいのですが、よろしいでしょうか?」

 ここからはお婆ちゃんに任せる。私だとケンカになりそうだからね。

「何様のつもりですか。お宅の子が、いきなり噛み付いてきたんでしょう?息子からは、そう聞いていますよ!?先生、違うんですか!?」

「え、ええ、噛み付いたのは、本当ですけど」

「だったら話なんて必要ないわ!謝りなさいよ!土下座しなさい!これは正当な要求よ!一方的に怪我させられて、しかも伝染るかもしれないのよ!?」

 相手はヒートアップしている。だけどお婆ちゃんは依然とクールだ。

「一方的、と言いますが。そちらの息子さんの落ち度については」

「いいかげんにしてよ!年寄りだからボケちゃってるの!?ウチの息子のどこに落ち度があるのか言ってみなさいよ!」

「――ゴメンなさい。オレが、悪かった」

 ほう、意外だね。お前から謝りに来るとは思わなかったよ。

「その、母ちゃんには言ってなかったけど。オレが、その、意地悪をして。みんなで、コイツに近づいたら伝染るって言ったから、それで」

 アイツは顔を伏せたまま。誰の顔を見ようともしない。

「私も、そのように聞いています。直接殴られたり、叩かれたりはしなかったけど。みんなで寄ってたかって、酷いことを言ってきたと」

「酷いこと?事実でしょうが!そういうウワサなのよ!?それともアンタ、テレビが嘘吐いてるとでも言うの!?みんな知ってるのよ、その話は!」

 なお、相手方のお母さんは逆に火が付いた模様。

 ・・・ねぇ、マジで暴れてもいい?殺意が抑えられないの。



 実際、そういうウワサだからね。

 そりゃあ心配になる気持ちは分かるよ?誰だって伝染りたくないからね。だけどさぁ、言っていいことと悪いことがあるでしょ?

 だから、私はああしたの。思ってた以上に大事になっちゃったけど、後悔は無い。私はまだ子供だけど、私の信念に従って、ああしたの。

 ・・・もし私にそういう力があるのなら。今すぐに、この2人を――いや、それだけはしてはいけないか。だけど絶対に許さないからねクソが。

ここ最近は創作物における子供の扱いが複雑なので、子供達の年齢は伏せたのでもいい・・・?

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