業
巻頭の記述
この世界の真実を記す
この世界は仮初である
全ての生物に誘われし者の魂が宿る
全ての魂は掟に隷属しあらゆる事象の一切を請け負う
解脱とは魂の開放であり唯一の希望である
さぁ、永劫に紡がれる輪廻に絶望する者はこの世界からの解脱を試みるが良い
シーン1「業」
背景 祭り 屋台
賑わう祭り、友を待つ少女
創名真歩「だーれだ?」
鳴瞳喜依「まほちゃん!」
笑顔で祭りを楽しむ二人
たこ焼きを頬張り栗鼠みたいだとからかう真歩と可愛らしく怒る喜衣
鳴瞳喜依「あれ欲しい!」
創名真歩「屋台に天体望遠鏡!?」
屋台に入り賽を振る喜依
出た目は5
祖念侶依「5は残念賞だね」
店主が景品の収納された箱を一瞥すると見る見る顔が青ざめる
赤く腫れた手首や爪を気にせず頭を掻き毟り血を滲ませる店主の剣幕に驚く
箱から一つ景品を受け取ると足早に立ち去る
喜依が身震いするのを見て真歩が話し掛ける
創名 真歩「この本にしたんだぁ~」
鳴瞳 喜依「ぇ・・・血!?」
夏祭りの非日常は話を咲かせ納涼色に染まる
鳴瞳 喜依「この本が畏怖譚であるとは限らない、あたしは容易に噂を鵜呑みにする査定をしない」
創名 真歩「も~、鳴ったら、またツンを拗らせてる~」
創名 真歩「そういえば真結ちゃん、お祭り好きなのにどうしたのかな」
鳴瞳 喜依「友の書斎から本を借りて行ったきり・・・もしや!」
黄色い悲鳴をあげる創名と現実的な慟哭を張る鳴瞳
創名は祖父の葬式があり鳴瞳と別れる
帰りかけに強引に客引きされ席に着く、占いのようだ
鳴瞳 喜依「わあ、綺麗な星」
装飾が施された水晶をかざす占い師の手はにわかに震える
大蛇 呉蓮「前世も、遥か前も・・・家系全ての業が今世で背負わされている・・・」
鳴瞳 喜依「なにそれ」
気分を悪くし立ち上がり屋台を去る
少し喧噪から離れた月明かりの下で本を広げて読み始める・・・冒険譚が綴られている
影が被り文字が見えなくなり前を見やる
大蛇呉蓮「おい!」
鳴瞳喜依「まさか、通貨を要求!?」
大蛇 呉蓮「それを・・・それを渡せぇ!」
鳴瞳 喜依「きゃー!」
焦り逃走を図るが追い詰められ凶刃が彼女を襲う
咄嗟に本を開き盾にする
業師「時間切れだ」
無尽蔵の闇が不意に広がり辺りは宵闇に包まれる
疾走する彼女は帰路に着き、寝る前に窓のカーテンを開き月明かりの下で改めて本を読む
鳴瞳 喜依「あれ・・・?」
おとぎ話の様に勇者が魔王を倒す話を読む・・・おかしい、何度も同じ話が繰り返されている
飽きてしまい栞を挟み巻末を捲る
鳴瞳 喜依「え・・・!」
恐るべき事に当初白紙だった巻末に、著しい勢いで手記が書き連ねられてゆく
まるで生きているかの様に・・・
目を離す事もできず全てを読み終えると本に吸い込まれる感覚に陥り意識は途絶えた
シーン2「Cradle Soul」
鳴瞳 喜依「んぅ・・・」
大蛇 呉蓮「おい、いつまでお昼寝してるんだ?」
虚ろな視界と意識、刹那の思考が確かに彼女を見たと言う
でも何も思い出せない
不知火 大悟「隣街が大業禍に見舞われている、俺達もさっさと行くぞ!」
鳴瞳 喜依「うん!」
そうだあたしは誇り高きクレイディルの冒険者!
大量の魔物を倒して街の人達を救って、いつか勇者様と魔王を倒すんだから!
シーン3「真実(絶望)」
勇者と共に魔王を倒し宝箱を開ける
鳴瞳 喜依「業?技能書?」
初めて見る本を開く
鳴瞳 喜依「この世界が仮初め?魂?」
瞬時に記述された記録と囚われる前の記憶が喜依の魂に刻み込まれる
鳴瞳 喜依「あ・・・あぁあああ!」
討伐に湧く仲間も事実に絶望する喜依も高く羽ばたく鳥も、ゆりかごに囚われた魂達の世界が止まる・・・
シーン4「貴方が望んだ世界」
鳴瞳 喜依「悲観は打開を生まない・・・」
隠遁賢者「どうしたメイ?いつもの元気が無いな、何かあるなら話に乗るぞ」
鳴瞳 喜依「・・・記憶はある?」
静かにしかしはっきりと問う
隠遁賢者「・・・まさか真実を知る者が他にも居るとは」
相談すると、業の書とはこの世界の核であり本体なのでは無いかと隠遁賢者は言う
つまりこの理不尽な世界を支配する者は情念であり魂であると言う仮説が出る
鳴瞳 喜依「何でこんな世界を創ったの・・・?」
喜依は悲し気な表情を浮かべるのだった
シーン5「誓い」
今日の喧噪は酷い
???「業の対象にする為に近づいたんでしょ!?」
???「いやお前から絡んで来たんじゃねぇか!」
耳障りな聞きたくも無い言霊が鳴り止まない
喜依「ここはダンジョンだよ!戦わなくても良い魔物がさっきから何度も来てる!」
冒険を終え酒場に戻り佇む鳴瞳
喧噪が酷くなる中、一部の記憶に関するアイテムや業を持つ者を除き、真実を知らずに死に苦しみ分かち合い自己の可愛さに裏切りを繰り返す者達に鳴瞳は悲しむ
喜依「もう挫けない・・・!」
喜依「あたし、決めた・・・!」
この負の連鎖は断ち切らねばならない
全ての魂を開放する事を彼女は誓う
シーン6 「安息日」
ここは閉店間際の酒場
鳴瞳喜依「閑古鳥が鳴いている」
隠遁賢者「安息日は何もしてはならないと注意しに来れば、メイか」
鳴瞳喜依「それは大義、事実は只の機構保守に過ぎない」
隠遁賢者「システムメンテナンスか、良いじゃないか、殺伐し枯れ果てた心には休息が必要だ」
鳴瞳喜依「故に君も飲むべき」
隠遁賢者「桃か、仮初とは言え、この天然果汁の再現性には驚かされる」
鳴瞳喜依「素直じゃない」
隠遁賢者「私は帰るとしよう、またな」
鳴瞳喜依「ばいばい」
隠遁賢者「いつも頑固な癖に時々素直になるんだよな」
ふっと笑う
家に帰り寝入る
影が映り窓は徐々に開いてゆく
ゴブリンソーサラー「・・・・・・」
魔物は悪意に満ちた笑みを浮かべた
シーン7「希望の欠片」
大蛇 呉蓮「くそ、まさか失敗するとは・・・」
業の試練を時間切れにしてしまい、業の知り合いを一秒も休む事無く占い続ける
大蛇 呉蓮「頼む、神なら私を助けてくれ」
神は笑顔で微笑む
知り合いの神「私が業の関係で占いに来ている者である時点で助ける訳が無かろう」
多くの者を占った話術で粘りに粘る
どうせ業の世界に戻れる訳が無いし業を倒せる訳も無いからと、業を打倒する術を聞き出す
大蛇 呉蓮「全てを託すしか無い」
占い師は魂の開放の為に10秒の休憩で再び星成術を発動する賭けに出る
星降りの夜の下で祈る
大蛇 呉蓮「頼む・・・」
頭上を一際大きな流星が儚く煌めく
シーン8「切望」
創名 真歩「あの本はどこにあるの!?」
祖念 侶依「もうある訳・・・」
創名が祖念の視線に気付き景品の箱を見やるとあの本がある
祖念 侶依「そんな馬鹿な・・・」
見開く彼から書を奪い取り駆けると客引きに声を掛けられる
無視しようとし側を通る
大蛇 呉蓮「私は鳴瞳喜依の行方を知っている」
創名 真歩「え!?ほんと!?」
大蛇 呉蓮「書を見せてくれ」
大蛇は業の知り合いを占ったり、業の罰を受ける内に、業の気持ちを痛い程理解する
大蛇は創名を占わず、水晶を書の傍に置き業の深淵を垣間見る
業の情念が痛い程理解っていく
大蛇は真歩にこれから取るべき道を告げる
真歩「じゃあ、この書を焼いちゃえば良いの?」
大蛇呉蓮「書を葬れば業から解放されるかもしれない、しかし囚われた御魂はどうなる?その結末は私も業も魂達も望むものでは無い」
創名が頷くと大蛇は話す
大蛇呉蓮「君の御魂に業に抗う術を記憶として刻む・・・私の魂の行方も・・・託したぞ」
情念と想いが真歩に流れ込んでゆく、鳴瞳の元へ行く術も理解した
書の巻末を目を逸らさず読む・・・創名の行く末を見届けた大蛇は静かに微笑み、誘われる宵闇の中へ自ら歩んで行く
シーン9「過保護」
魂に刻まれた名前は・・・
創名真歩「創名司」
この人は真歩にやたら世話を焼いてくれる
冒険する時は必ず同行して危ない目に遭った事は一度も無い
帰りに繁華街に行こうとすると何故か行かぬよう止められる
賭場の治安が特に悪いらしい、なんて過保護なんだろう
創名真歩「今日は大丈夫だから」
と強く言って歌の言霊を強化してくれる花を探しに行く
創名真歩「さっきまで雲一つ無かったのに~!」
豪雨に見舞われ大木の下で雨宿りをする
雫が朧な鏡面を作り不安気な表情を浮かべる少女を映し出す
その名は創名真歩
少女は全てを想い出す
創名真歩「そうか・・・そうだったんだ・・・」
シーン10「記憶の鳴動」
何回目の始まりを迎えるのだろう
重い足取りで冒険者ギルドへ向かう
創名真歩「だーれだ?」
鳴瞳喜依「えっ!?」
目が痛まない優しい視界の覆い方・・・あたしには覚えがある
この吟遊詩人には人口AIが宿っていて、魂が繰り上がって宿っている事も無い
こんな行動をする者は他に有り得ない
感嘆と期待と焦燥の入り混じる声で小さく呟く
鳴瞳喜依「・・・まほちゃん?」
創名真歩「そうだよ!過保護さはお爺ちゃん譲りの真歩が来たよ!」
鳴瞳喜依「あたし・・・あだじ!ずっともうダメだと思って・・・うぅう゛ええ゛ぇ~~」
創名真歩「よしよし・・・」
記憶のある者にとって正常な精神を保つのは厳しい世界
まるで小鳥が止まり木から希望と言う親鳥を見つけた瞬間であった
シーン11「掟の穴」
創名真歩「ギャンブラーと隠遁賢者を呼んできたよ」
隠遁賢者「面白い考えがあるみたいだね、今すぐやろうよ!」
・・・?
隠遁賢者の雰囲気がいつもと違う様な・・・休息を経て気分が良いのかもしれない
鳴瞳喜依「条件は揃っている、傲り続けた償いを今果たさせてあげるの」
業師の検討はついている
何故か頑なに教えたがらない真歩を説得するのが大変だった
狙いは2つある
ギャンブラーに業を行わせ賽を振る前に、隠遁賢者にギャンブラーと業師の魂を入れ替えさせる作戦だ
ギャンブラーの愛する者は生きている、賽を振ればまず助からない
隠遁賢者は教えてくれなかったが他にも業師を打倒する手段はあると言う
隠遁賢者はかなりの上級職らしく、長く居るあたしでさえ、その業は未知数だ
鳴瞳喜依「・・・大丈夫?」
創名真歩「うん?いつも元気だよ?」
真歩の表情がどこか暗い
全ての魂を開放する為には業師の魂の消滅が必須なのだ、真歩には心苦しいのかもしれない
鳴瞳喜依「それでもあたしは・・・」
もう苦しみたく無い、少しでも希望があるのなら抗うしか無い
隠遁賢者「ねぇねぇ、来たよ!」
喜依は訝しむ、先程から幼い口調が気になる
魂の開放の可能性があるからと言って、ここまで人格が変わるモノなのか?
魔弓術師「やぁ!珍しい顔ぶれが揃ってるじゃないか」
創名真歩「あ、えーとね」
目くばせをする、頷くのを確認する、今だ!
隠遁賢者の業で二人の肉体が束縛され、魔力が二人を繋ぐように展開される
同時にギャンブラーは賽を手に握る
鳴瞳喜依「やった!」
果たして余裕なのか、死に対する恐怖が無いのか、囚われの者は怪しく笑う
魔弓術師「せめて口喧嘩にするとか、業の練習に付き合ってくれとか言ってくれれば不自然じゃないのだが・・・しかしこのまま乖離の大きい行動として死なせてもつまらん・・・面白い、このまま乗ってやろう!」
隠遁賢者「傲慢も大概だね」
魂が入れ替わると、業師は何の躊躇いも無く賽を振るう
賽の目を確認すると落胆した表情を見せる
創名真歩「おじいちゃん・・・」
鳴瞳喜依「これで・・・終わったの」
賽の目を見やると移地が映る
隠遁賢者「嘘・・・だってあんな確率で・・・」
手を覆い驚いている、今は仕草を気にしている場合では無い
心底落胆した溜息を吐いた後、静かに呟く
業師「つまらん・・・」
・・・!?動けない!?
世界は停止し、やがて思考も緩慢になり・・・
場面は暗転し業の書が開かれ備考欄がめくられる
業の書 備考
システムエラー発生
業師の管理者権限が保護されていません
観測者システムを起動し修復に当たります
シーン12「凶兆」
鳴瞳喜依「何時まで生き残れば良いの?」
この世界で死ぬ事は魂の開放から遠ざかるのみでなく、記憶を失う事も意味する
それだけは絶対に避けなければならない
創名真歩「鳴、感傷に浸ってる所悪いんだけど・・・」
創名真歩「人口AIが多すぎない?」
言われて気付く、回を重ねる事に増えている
堅牢な糸が解ける様に記憶の欠片が合わさり、その言葉に現実味が帯びてゆく
文字通り体を震わせ、震える声で鳴瞳は呟く
鳴瞳喜依「仮にそれが真実だとして・・・魂は何処へ・・・?」
シーン13「汚れた魂」
場面は月明りの無い夜闇に変わる
不知火大悟「話って何ですか?大恩ある賢者様のお願いなら何でも聞きますよ!」
隠遁賢者「あは・・・これからは大怨だねぇ」
不知火大悟「え?」
隠遁賢者「あ~気にしないで、それよりちょっとそこに入っといてよ」
不知火大悟「新しい加護ですか?いつもありがとうございます」
隠遁賢者「何も知らないって罪だねぇ・・・」
不知火大悟「あれ、動けないや、それになんか体が・・・気持ち悪い」
その詠唱、その言葉、その全てが祝福や加護と対極に位置する言魂、囚われの者に動揺が走る
隠遁賢者「陸なスキルも無いか・・・喜んでいいよ、そんな君でも能力値だけは役に立つからね」
不知火大悟「何を言ってるんですか!冗談ですよね?」
隠遁賢者「何でも聞いてくれるんだよね?無知の子守を五回も助けたんだからさぁ~!」
不知火に関心の無い無表情で淡々と状態異常を掛ける
禍々しい結界の中で器が抗う術は無い
不知火大悟「ああああああああああああ!!」
不知火が暫く沈黙した後、何かを唱えると姿が隠遁賢者に変貌を遂げる
不知火大悟「魔力の一部を擬態に振るのは効率が悪いなぁ、でも僕が全ての魂を取り込むまでの我慢・・・」
シーン14「北東から来る者」
鳴瞳喜依「魂は狩られている」
創名真歩「わかっているなら早く帰ろう」
秘密裏に魂を狩る者の存在は全ての魂達に共通する畏怖認識だ
鳴瞳は砥石と剣に必要な金属を採掘し終えて創名に続き山道を行く
月明りの無い暗い闇夜が広がる
創名真歩「鳴、待って」
鳴瞳喜依「どうしたの?まほちゃん」
創名真歩「・・・何を言われてもいつでも逃げれる距離を保って」
鳴瞳喜依「まるで支配階級の魔物を相手する様な言い回し」
無言でゆっくりと歩みを進める
光の及ばない漆黒を幾重にも重ねた中から何かが浮かぶ様に姿を現す
不知火大悟「よっ!やっぱり採掘してたか、魔法袋に入らない分は俺が持ってやるよ」
創名真歩「・・・・・・、大悟が夜更かしは珍しいね」
不知火大悟「俺の職業は割と暇だからな、助け合いに来たんだよ」
鳴瞳喜依「大悟は淑女護衛の任を果たすべき、前方の警戒に務める事を許容する!」
不知火大悟「はは、相変わらずブレないねぇ」
三人が山道を降りてゆく、鳴瞳は安心し始める
鳴瞳喜依「今日もまほちゃんの過保護だったね」
創名真歩「そうだと良いんだけど・・・」
不知火大悟「わりぃ足を挫いちまった、痛みが引いたら転移アイテムで街に帰るから、おまえらは先に帰ってくれ」
鳴瞳喜依「大丈夫?一緒に待とうか?」
創名真歩「鳴!」
創名真歩「あーいや・・・あたし達、朝がめっちゃ早いの、気を付けて帰ってね」
不知火大悟「・・・・・・おう、気を付けて帰れよ~」
鬱蒼として木立を抜け彼が視界に入らなくなる、途端に創名は鳴瞳の手を繋ぎ危ない下り坂を駆ける
鳴瞳喜依「何で疾走するの?」
創名真歩「やばいやばいやばい、走って!」
創名真歩「深夜で油断してるのか影は無いし、見習い魔導士の魔力じゃないし、それにあの名前って・・・!?」
その時蛍が淡い光を放つ
前方が刹那の刻、明瞭となる
似合わぬ物が光を反射した
鳴瞳喜依「危ない!」
創名真歩「!?」
創名を抱えて後方に倒れ込んだ直後、すぐ目の前を耳に強く残る風切り音が薙ぐ
不知火大悟「おーおまえら、ちゃんと気を付けて帰ってて偉いぞ~」
驚愕する鳴瞳と沈黙する創名
大悟の容姿は崩れていく
隠遁賢者「少しでも魔力は節約しなきゃね、魂を喰らう様子はどっちに見せてあげようかなぁ?・・・あははは!!」
創名真歩「やばい動けない!」
鳴瞳喜依「あれ、あたしも・・・」
隠遁賢者「うーん、二人とも弱そう、全然足しにならなそう~ハズレ鉱石だね~」
残された命の砂時計は一歩死神が近付く度に激しく擦り減っていく
シーン15「疑問」
隠遁賢者「さて、魔法軸の座標を固定して・・・」
呪詛を構成する術式を、幹が貫き決壊し詠唱は途絶える
傀儡師「間に合ったか!」
隠遁賢者「なっ!んで傀儡師がこんな所に・・・!」
傀儡師の使役する傀儡が次々と襲い掛かる
呪縛が解けそれぞれ攻撃と支援へ回る
鳴瞳喜依「因果応報!」
創名真歩「大地を愛する者よ、我らの命友よ、其の力をかの者に分かちたまえ」
剣と幹が交差し、逃げ場の無い攻撃が絶え間なく続く
隠遁賢者「卑怯だっ!」
創名真歩「それは君の事!」
鳴瞳喜依「以下同文!」
傀儡師「おまえが言うな!」
防御が追いつかなくなり、傀儡師が隠遁賢者に止めを刺す
創名真歩「魂が霧散した・・・?」
傀儡師「器が無い以上、近い内に消滅するはずだ」
鳴瞳喜依「・・・危ない所をありがとう」
帰路に着く三人
傀儡師の背中を見る鳴瞳の瞳には疑問の色が見える
傀儡師の業に詠唱が無いのに不自然な程効果が高い事、業師の職業としてこの場に訪れる理由や動機が無い事
創名真歩「難しい顔してどうしたの?」
鳴瞳喜依「んー、疲れてるだけ」
街に着き解散するのだった
シーン16「まだ終わらない」
洞窟の浅層
昼行性のゴブリンは寝入っている
途絶えかけた汚れた魂が残された力を使い、杖を突いて眠る魔物を器にした
シーン17「追憶の石」
プレイヤーサポートと言う補助システムがある
これは主に採集や探検などで役立つもので、進んでも採集物が無い場合や探検時に行き止まりの場合にプレイヤーに可視化して表示され、物理的にもシステムの壁があり向こう側には行けない仕様となっている
鳴瞳と創名は採集でうっかり補助システムを起動してしまう
創名真歩「あれ・・・?魔物は通れるんだね」
鳴瞳喜依「プレイヤー縛り」
しばしの沈黙の後、アイテム袋を漁る鳴瞳
創名真歩「何探してるの?」
袋から取り出したのは安価な近距離用の転移石
鳴瞳喜依「転移を試す、補助システムはプレイヤーの盲点を突く為の概念に過ぎない」
創名は頷き石に魔力を込める
鳴瞳喜依「行けた!」
創名真歩「えー!すごい・・・けど、何も無いんだよね?」
鳴瞳喜依「非日常を味わえたと思えば悪くない」
ガッツポーズする鳴瞳の手が壁に付く、岩壁が音を立てて扉が開く
驚く彼女達
中に入ると追憶の石が中央に置いてある
二人で魔力を込めると石に刻まれた記憶が二人の魂に刻み込まれる
真に畏怖すべきは業師では無い
その答えは其れを誰よりも近しく見続け永く欲し続けた者だ
鳴瞳喜依「これだけ?」
創名真歩「畏怖すべきって・・・誰をだろう?」
鳴瞳喜依「稀有なアイテムかと思ったのに」
創名真歩「そうだね!所々に宝箱が出てくるもんね」
鳴瞳喜依「ちょ!思考の深慮を欠いて性急に結果を付与して帰結させる動はあたしが希求する情念とは相容れない!」
創名真歩「はいはい、拗らせツン鳴はチョロイン」
過保護な真歩の宝箱以上の報酬に満更でもない表情を浮かべる鳴なのであった
シーン18「急転」
鳴瞳と創名は隠形を用いて傀儡師の動向を探る
傀儡の栄養となる果実を採集しているようで不自然な点は無い
不意に魔物の群れに強襲されるが避ける素振りすら見せない
魔物の武器は弾け散り跡形も無く霧散する
魔法の弾幕も渾身の一撃もものともしない
傀儡師「邪魔だ」
手をかざすと魔物達は何かに畏怖するかの如く震えだし次々に消滅していく
足元の小石を踏み外し鳴る
慌てて業師を見るが姿が見えない
背後から声を掛けられる
業師「まさか二度見破るとは、この場所は私以外訪れる価値の無い場所だったのになぁ」
鳴瞳喜依「やはり貴方が業師だったのね・・・!」
創名真歩「やっぱり・・・助けてくれたのは・・・」
業師「・・・・・・こうなっては致し方無い、全てのプレイヤーに正体を明かすとしよう」
魂達がこちらへ転移してくる
事態を呑み込めぬ彼と彼女達に業師は事の顛末を伝える
業師「さて、これから私と戦うわけだが、職業ごとの業の発動条件を満たした者の多さよ・・・もしも私を倒した者以外が魂の開放を受けれないと言ったらどうする?諸君は努々いつ裏切られるかわからない中、私以外に留意しながら戦わねばならないだろう」
混乱と悲鳴や怒号が轟く中、光に包まれ全ての魂が肉体と共に転移していく
シーン19「業師」
鳴瞳喜依「ここは・・・」
業師「特定の条件を満たすと来れる真のゲームクリアの為の最終決戦の場だ」
創名真歩「壁が血塗れ・・・」
祖念侶依「何で・・・また戻ってるんだよぉぉおお!」
暴れる祖念を一撃で沈黙させる業師
業師「私の求める魂の開放の意に反していたからだ、最愛の人を犠牲にして得た生に何の価値がある?」
業師「・・・さて、隠し職業や称号無しではこのボスを倒すのは不可能だ、そこで私が相手をしよう、先程のズルは使わないから安心してくれ」
鳴瞳喜依「見破り業師・・・?」
業師「剣士の場合は命中率、回避率、速度、腕力、剣速などが上昇する称号だ」
業師「待ちきれん・・・戦いたい者は構わずかかって来るが良い!」
最初の数人の間は一対一の戦いだが、この戦いには全てがかかっている
次第に多勢でかかるが、劣勢が否めない
鳴瞳喜依「あの職業にこれ程の力が・・・」
創名真歩「隠し職業、超越者・・・!?」
業師「そんな目で見るなよ、私が全ての職業を経歴して条件を満たして転職したのだからな、不正は無い」
創名真歩「おじいちゃん・・・」
鳴瞳喜依「まだ可能性はある、あたしを信じて」
創名真歩「うん・・・!」
友の歌が鳴のステータスを大幅に上昇させる
自信の根拠を知る為、瞳に意識を集中する業師
システムの欠陥とも言うべき魂を抜き取る剣を業師は警戒する
シーン20「依り代」
不意に一体の魔物が現れる
鳴瞳が目を凝らすと頭上に何か表示されている・・・?
職歴:・・・(以前の職歴を表示する場合は・・・に視線を集中してください)→奇術師→占い師→瞳術師→ものまね師→魔法使い→魔導士→魔導師→賢者→隠遁賢者→ゴブリンソーサラー→隠遁賢者→ゴブリンソーサラー
称号:凄腕業師、星詠み、悟りの極致、極星魔導、奇術、マナの奇跡、滅魂法、高速詠唱、神呪業、統率者
業師の顔が曇る
業師「初めて見る称号が幾つかあるな・・・もしや・・・いやまさか・・・」
ゴブリンソーサラー「・・・ちっ、無理矢理入り込んだせいで、この体は長く持たない」
魔法使いに目を付けると押し倒し襲い掛かる
驚く魔法使いに即座に呪印を埋め込み高速詠唱により瞬く間に抵抗値を下げてゆく
悲鳴が響いた後、静かに立ち上がる
魔法使い「この恨み今晴らしてやるぞ!」
業師に襲い掛かり激しい攻防が繰り広げられる
業師「まだ肉体が馴染んでいないな、隙だらけだ」
倒れ込み罵声を浴びせる魔法使いに止めを刺しに行く業師
不意に笑う魔法使い・・・口元で何かを囁いている?
業師の頭上に極大の星型の五芒星が浮かび対象のエネルギーを吸い取る
業師「!?何故抵抗できない!?」
魔法使い「業師の癖に把握してないのか?数多の魂を喰らった凄腕の業は必ず成就する」
業師は崩れ落ちた後、立ち上がる
業師「ちっ、うまく魂だけ逃がしやがったか、しかし肉体は手に入れたぞ」
シーン21「永く見続けた者」
絶望が広がるが様子がおかしい
業師「なんだ、体が動かせない、意識が遠のく・・・あっ・・・!?」
業師に宿る邪悪は気配を消し、肉体から閃光が放たれ神々しく輝く光が彼の肉体を包み込む
その正体は業の書が自我を持ち、数多の魂を喰らった邪悪な魂と言う名の膨大なエネルギーを取り込み、神格を持ち受肉した姿であった
創名真歩「おじいちゃん・・・一体何が・・・」
目を凝らして見る鳴瞳の表情は青ざめてゆく
人物名:業 職歴:全て アイテム:無し 称号:全て 能力値:測定不能
シーン22「業」
恐らくこれが私が感じた違和感、業師が懸念していたモノの正体だろう
淡い光が真歩に寄り添うのが見える
創名真歩「おじい・・・ちゃん?」
しばらくその場を揺らめくと御魂は鳴瞳に近寄り・・・壊れかけた剣に入ってゆく
鳴瞳喜依「・・・戦おう」
創名真歩「・・・うん!」
剣に宿る業師の情念が剣を通して鳴瞳に伝わる、不安と緊張と、今までのずっとどこか退屈したような雰囲気の業師とは真逆のようなワクワクした高揚の感情が伝わる
創名「恵みの雨を降らせる水の精霊よ、色鮮やかに染めた恋花よ」
友が歌で祝福と激励をし協力する
鳴導喜衣 「最愛の人を失った絶望も・・・」(祖念を映す)
「あたしに託してくれた切望も・・・」(呉蓮を映す)
「過保護で一番頼もしいあたしの希望も・・・」(すぐ斜め後ろで微笑む真歩を見る)
「少し頑固で悪役に徹していたけど、あたしと真歩を気に掛けてたこの御魂の為にも・・・」(手元の剣に宿る司の魂を見る)
「あたしが全部背負って・・・皆を元の世界に導くその時まで!!絶対に負けないんだから~!!!(斬り込み鍔迫り合いとなり辺りは強く光輝く)」
シーン22「結末」
・・・・・・戦いは敗北に終わった
罅割れた剣はバラバラに散り、儚く魂が悲しみの色を浮かべ真歩を見やり覚悟を決める
その姿が意識の遠のく主人公の瞳に映る
魂は追憶の石に少しのエネルギーを込め終わると、目映く輝きだす
全ての人口AIと現在の座標を除く箇所の維持システムを停止し分配されていた力が業師に収束し魂が、生前の光の肉体を形成していく
誰にも見届けられる事無く戦う業師は、生前の姿で白い輝きを放ち業に歩み寄り・・・光輝く剣で業を絶ち斬る
シーン23「情念」
業の書の巻末に書き綴られてゆく
この世界は満ち満ちていた
しかし美しい世界観とは裏腹に彼の望んだ世界には成らなかったようだ
初めて受肉した瞬間、私は心を奮わされた
この世界で生きてきた者達の魂の追憶が共有される
心地良い風、木の葉の擦れる音、どこまでも続く大陸と優しく包み込む陽射し、この世界はこんなにも満ちていたのか
業師も初めて見せる高揚の感情が私に伝わる
さあ雌雄を決しよう・・・この愛しい世界は誰にも渡さない
(徐々に本は罅割れてゆく)
私の役割は無事に終えたようだ
情念の集合体に過ぎない私が、受肉するなどあってはならなかった
私の欲もまた業であり、所詮仮初めの王に過ぎなかったのだ
永い旅に出よう
僅かに残る情念を拾い上げてくれる者にまた出逢える事を信じて・・・
(書は崩れ落ちて灰塵に還る)
登場人物
主人公
名前 鳴瞳 喜衣 めいどう きい 14さい
紹介 ツンデレが災いして騙されやすい性格である
友に初等部の頃から見守られ続けて七年になる
華奢な身体とは逆に、芯のある強い意志と思考で仮初の世界に抗う
趣味は天体観測
役割 謎解き、依り代
職業 一刀流剣士
モデル 探求者
ゲームクリアボーナス:後日談でメイドのきいちゃんが見れるよ!
友
創名 真歩 きずなまほ 14さい
紹介 思い遣りの深い良い娘に育つ
おじいちゃんっこだった彼女は祖父の葬式で誰よりも涙を流す
役割:誠実に世界を歩む、補助役
職業 吟遊詩人
モデル:性善説
ゲームクリアボーナス:後日談でサンタのまほちゃんが歌ってくれるよ!
友の祖父(業の書であり、業師)
創名 主 きずな つかさ
紹介 主人公が友の家に遊びに来ている事を知っており、一度ゲーム内の主人公の魂の消滅から助ける
役割 ゲームクリア、救世主、グノーシス主義の反宇宙的二元論としての業の書という世界の形成
モデル アザゼル 魂達の視点での悪の原因を作った業 ヤハウェ 創世神の神、グノーシス主義における悪魔
業の書
名前 業の書 ごうのしょ
紹介 主がグノーシス主義における反宇宙的二元論に依り生まれた存在、世界である
主の情念イデアで形成された真の世界であり、業の書もまた、この世界の観測者である
転機を迎えて潜在する意識に自我が芽生え、業は観測者を超える何にも縛られない権限(自由)を追い求める
祖念 侶依 そねんろい
紹介 祖念侶依が生還したと言う事は祖念侶依が最も愛する者が祖念侶依の為に死ぬ事を決めた事を意味する
職業 ギャンブラー
役割 バッドエンド、愛する者を犠牲にした罪を受け続ける
モデル 悪魔 ソロイネン
紹介 確かに存在していたが、その御魂は今はどこにも無い
ところで、とある魂は永く魔物に宿り汚れた御魂となる
その魂はやがて仮初めの肉体に宿り多くの魂を欺き襲いかかる
名前 ノートには確かに名前が書かれているが、業風に晒されバルベリと激しくめくられて見えなくなってしまう めくられたページには庵里真結あんりまゆと書かれている
職業 隠遁賢者等
役割 最初の犠牲者、悪役、殺人・冒涜の業
モデル 悪魔 アンラ・マンユ バルベリト
大蛇 呉蓮 おろち くればす
紹介 魂が渡る前の記憶は無い、しかし夢では多くの仲間達に囲まれ宴を開く情景を何度も見ている
職業 占い師
役割 補助、善者
モデル 悪魔 オロバス
不知火 大悟 しらぬい だいご
紹介 無知もまた大業である、生前はタロットカードを嗜み、明日もその次の明日もタロットカードで多くの者を占っていた
職業:魔法使い
役割 第二の犠牲者、無知の代償
モデル 悪魔 アスタロト 怠惰の業
業の書 備考欄
魂の隷属(掟)
①勇者が魔王に負けたらゲームクリア失敗、全員死亡する
②ゲームクリア後またはゲームクリア失敗時に記憶がリセットされる、例外あり
③指定された全ての登場人物を規定回数生き残りゲームクリアする事で魂の隷属から解放される
付随 100連続ゲームクリアする度に、一つ上の序列の登場人物に魂が入りゲームが始まる
入れ替わりで序列が下がった登場人物の魂の連勝数は継続する
仮に魂が宿るべき人物を上回る場合、予備の植物や樹や小虫や小動物や魔物などに強制的に宿る、人物が空き次第空いた人物に魂は戻される
付随 人物に魂が空いた時に予備に宿っている魂が精神的に空いた人物に適合しないと判断された場合、人口AIが人物を役割通りに動かす
④本来其の人物が取るべき行動との乖離が大きい場合、その事実を業師が把握した時に死亡する事がある
⑤フィールドやダンジョン内やクエスト報酬などで宝箱を獲得したプレイヤーが死亡せずにゲームクリアした場合、ゲームリセット後も装備やアイテムが継承される、各所に希少性が高いアイテムが低確率で獲得できる
⑥ゲームクリア時にプレイヤーが死亡している場合、次回のゲーム開始時に継承した記憶や装備を全て失う
魂の開放(魂を現世の肉体へ送還)
①通常クリア条件
魔王が倒されるまで生き延びる事
付随 100回連続でゲームクリアする度に次の登場人物に魂は移り、それを繰り返す
全ての登場人物でゲームクリアまで生き延びると、該当プレイヤーの魂が現世へ開放、送還
②特殊クリア条件
職業:ギャンブラー
業:最期はあなたの傍らで(無業)
1の面を二つ有する七面の賽を振り其の数字に寄り運命を左右される
業の発生条件
①通常の賭場で賭けに5連勝する事(低確率で闇賭場が出現)
②低確率で開催される闇賭場で全ての財を賭け続けて5連勝する事
付随 この仮初の世界で最も愛する者が何かしらの理由で死亡している場合、高確率で闇賭場が出現する
③最も愛する者が業を実行する前日まで生存している事
④最も愛する者が生存する場合、現在も愛されている事
最も愛する者が死亡している場合、死ぬ直前の感情として愛されている事
⑤ギャンブラーが最も愛する者のみを愛している事
業の実行
①最も愛する者が死亡している場合、死亡した座標から四歩以内の距離を超過して賽を振ると、移地の目を除いた賽が振られる
②最も愛する者が生存している場合、賽が移地を引く確率は極限まで低下する
③最も愛する者がギャンブラーの業の性質を理解した上でギャンブラーの為に自殺した場合、陸以外の全ての目が移地に変わり、運の能力値が上限値になる
失敗時
異値・・・全ての状態異常を請け負い能力値が全て1となる
現時点で最も魔物の多い箇所へ移置される
魔物の性格が狂となり全ての能力値は種族値に100を加算後10倍を乗算、命中率は必中に固定される
対象が死ぬと種族値に戻り性格も戻る
煮・・・火山噴の真上に配置する、火口に落ちる事は無いが加護付与耐性等を除外してから有毒なガスと熱気で蒸し焼き
惨・・・ランダムでアイテムに魂を封印、登場人物に魂が戻る事は無い
死・・・魂の永劫の消滅
業・・・この仮初の世界の今までの全ての死を追体験
陸・・・賽を振り直せる代わりに身体の一部を失う
両腕を失った時点で賽を振れないと見做され、ゲーム終了時まで失った部位は戻らない
欠損する順:爪→指→歯→四肢 賽一振りに付き1つ失う
成功時・・・ギャンブラーの魂を開放、現世の肉体へ魂を送還
移地・・・現世で元通りに暮らせる
但し現世に肉体が無い場合は、知り合いの神の世界に居る業の深い者の魂を異世界へ渡るエネルギーとして消費して、ギャンブラーの魂を異世界の肉体へ受肉する形を取る
職業:隠遁賢者
業:魂喰法こんくうほう (悪業)
業の発生条件
①業の対象となるプレイヤーが前回のゲームクリア時に生存している事
②プレイヤー自身が前回ゲームクリア時に生存している事
③対象と会話している事
④対象と身体を接触している事
⑤対象を現時点で危険から五回以上助けている事
⑥対象の肉体に宿る魔力の質や流れを見極めている事
⑦ゲームクリア挑戦中に対象の何かしらの業を視認している事
業の実行
①肉体を封縛する
②結界を張り魔法陣に対象を入れる
③魔法軸と魔法効果の座標を固定する
④五芒星と六芒星を複合し、対象を中心で捉える
⑤呪詛をかけ続けて対象の精神抵抗値と肉体抵抗値を下げる
⑥対象の魂を封縛する
⑦全ての魔力を用いて魂送法を詠唱して隠遁賢者の魔力や魂を対象の肉体に同調させる
⑧対象の魂を術式の糧にして、対象の魂を魔力に変換して取り込み自身の魂を空になった器に入れる
付随 対象の魂は永劫に消滅する
魂を取り込む際に魔力に変換されて吸収された負の魂の情念が、術者の精神を著しく邪に染める
魂を取り込めない場合でも魔力が高い者ならば稀に対象の人物に宿る事はできるが、宿った魂の人物の能力値や寿命は著しく低く短い
失敗時 自身の魂の消滅
成功時 魔力を中心とする能力値の上限値の大幅な開放、対象の能力値やスキルを確立で吸収、独自の称号を確立で獲得
職業:占い師
業:星成術せいじょうじゅつ(善業)
業の発生条件
①全ての職業の人物を占う事
②魔王または各地に点在するボス級の魔物の内一体の能力値を鑑定する事
③満月の下、流星が降る夜に自身に星導術を掛けて占い、業運を引き当てる事
業の実行
前提 実行する意思を持つと同時に直近で仮初の世界を訪れた魂が居た世界へ時系列を遡り転移する
①自動で対象が訪れる箇所に転移するので、占い師として対象を占う
②対象が所有する業の書を手段を問わず破壊する
③時間制限は対象を占い終えてからの10分間
失敗条件 時間切れまたは対象が業の書の最期の手記を開き見る事
失敗時 ランダムで異世界を渡り続け、仮初の世界を引き当てるまでの間、1秒も休む事無く、何の報酬も無しに指定した対象を占い続ける事
休む事は可能で上限は一度に10秒まで、1秒休む毎に1年間あらゆる苦痛が与えられる
仮初の世界へ還れる確率 分子:涅槃寂静 分母:不可説不可説転
成功時 占い師の魂を現世へ開放、送還(業の書の喪失により業師の魂は消滅する)
④登場人物の中に必ず潜むゲームマスター(業師)を直接的に殺害する事
自殺や事故や殺人依頼等の間接的手段での殺害は含まれない
依頼されて実行した殺人犯は間接と見做される
失敗条件 業師以外を殺害した時
失敗時 ゲームリセット時に魂に宿る人物の序列が一段階下がる、空いた人物には一段階下にいた魂が連勝数を維持して繰り上がる
成功時 全ての魂を開放、現世の肉体へ魂を送還
備考欄 真の意味で此の業から解放された者は居ない
唯一解放されたギャンブラーの魂が守るべきモノは未だ闇の湖底に沈んだままだ
魂の宿るアイテムが業師の理を外れ干渉を受けず存在する、効果は著しく高い
業師とは理を超越する存在であり、この仮初の世界のゲームマスターである
業の書で書かれるファンタージ世界はCradle Soulと記載されている
最期の記述で述べた願望を阻害する者はこの世界に酷く嫌われる
特殊な条件を満たす事で特別な職業やアイテムや称号を得られる
全ての記述を読み終え巻末を捲ると古びた和紙の余白がある
驚く事に筆も無しに文字が目の前で書き綴られていく
最期の記述
後悔ばかりだった
何にも縛られず自由になりたかった
あの時のあの子を救いたい
今度こそ最期まで信じたい
できるモノならこの陸でもない生をやり直したい
しかしそんな事は不可能だとわかっている
それから私は抗う様に魂の研究に没頭した
(血肉を擦った様な字で力強く大きく書かれている)
あぁ・・・積年の想いも廃れた想念も激情も淡い情念も精神も・・・
全てが等しく吸い込まれていく・・・願わくば・・・もう一度・・・