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リベルラ・ロッサ  作者: わをんわをーん
3章
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によよよ

 ロッサはソリーソと別れると、そのまま足早に、東居住区5番街へと向かった。


 モウエ銀行横の薄暗い路地に入る。


 井戸端会議をしていた奥様グルーブがロッサに気づいて、話しかけてきた。


「あらロッサ君、昨日は大変だったわねぇ」


 と、奥様A。


「ほんとよ、いきなり火が上がるもんだから驚いちゃってぇ」


 と、奥様B。


「またチュウ爺さんの仕業だったんでしょ、まったく迷惑ね」


 と、奥様C。


「え?」


 ロッサは言葉に詰まった。


「前も煙、すごかったわぁ。今回はなんでロッサ君の家で爆破が?」


 と、奥様D。


「チュウ爺さんのせいってなんですか?」

「あら、知らなかったの?」

「そうらしいわよ、騒ぎで駆け付けたモウエ銀行の警備員が言ってたのよ」

「……そうなん、ですか……じゃ、ファレナをさらって行った人、見ませんでした?」


 奥様方が、首をひねる。


「さらわれたって何なの?」

「えっ? ファレナちゃんに何かあったの?」

「ほら、なんだかんだあって、姉さん……処刑人がやられて、僕らはロンで離脱したでしょ、その時、ファレナが男に抱えられてたじゃないですか」


 奥様方が、互いに顔を見合わせた。


「何それ?」

「何の事なの? そんな事、なかったわよ」


(……どういう事だ……?)


「男って、どんな男よ」

「……高そうな白い服を着てた事……くらいしか……」

「ノゲさんの事……?」

「誰です、それ……」

「モウエ銀行の総裁のノゲさんって人よ、めちゃカッコいいのよ」

「警備の人と来て、指揮を取ってたわ」

「ああ、ピシッと高そうな白い服がさえてたわねぇ」

「独身でしょ、たしか」

「うちの娘とか欲しがらないかしら……」

「あの、僕もう行きますね」


 奥様方が話しているのを尻目に、ロッサは急いでチュウの工場へと向かった。


「すいませーん!」


 叫びながら工場2階にある住居のドアをノックする。


「すいませーん!」


 と、22回叫んで激しくノックをした時、やっとドアが開いた。


「何じゃ何じゃ……」


 眠気眼で、水玉模様のパジャマを上だけ着て腹巻をしたチュウが顔を出す。


「チュウ爺さん、おはようございます」


 ロッサは妙にゆっくりとした言い方で挨拶をした。


「ああ、ロッサ君おはよう……何か、ぐっすり寝ていたよ……、しかしまだ朝じゃないの? この感じって?」


 寝起きで呂律の回らず、ごにゃごにゃした声でそう言いながらチュウは青い空を仰ぐ。


「はいそうです、ところで昨日の事で来たんです」

「……昨日って何の事じゃ?」


 目をこすりながら、チュウは尋ねる。


「……チュウ爺さんも覚えてないんですか? 昨日の騒動の事ですよ」

「昨日の騒動?」

「……昨日、家が燃えて、そのあと姉さんが何者かにやられて、ファレナが連れ去られたんです……あんた、その場にいたで――」


――チュウの髭が逆立ち、しおれていた細長い耳がビンっとなって、目がパッチリ見開かれ、


「なななななな、なんじゃってーーーーー!? 襲われた!?  なんじゃ、また暴漢に襲われたのかい!?」」


 仰天して、ずっこけた。


「覚えてないんですか? その場に駆けつけてきたんですよ……」

「知らんよ! わし、そんな事あったのなんて! ああ……わし、日課の鍛錬してから……。あれ……してから、なにやってたっけ?」

「記憶がないんですか……?」

「ずっと寝てたっぼいんじゃ! だんだん頭が回りだしてきたぞい……変じゃぞ、これは……」

「ついでに、その騒動の犯人はチュウ爺さんって事になってます」

「なんじゃってーーーーー!?」


 仰天して、また、ずっこけた。


「なんでじゃ!?」

「さあ? モウエ銀行の警備の人が間違えたんかなんかでしょうね……」

「ロッサ君、わしは記憶を消されてるのかも知れん……」

「……消された?」

「無論、ファレナを連れ去った奴にじゃ。グスーじゃったっけ? 消す魔法って」

「はい……まぁファイヤーレーザー打てる奴ですから、グスーも使えても何もおかしくありません……」


(……街の皆も……?)


「ファイヤーレーザー使えるの!? ただの暴漢じゃないぞい……」

「考えにくいですが、グスーを使って騒動を見ていた路地の人間全員の記憶を消しているっぽいです……」

「……そんな大規模にグスーなんて唱えるなんて……とんでもない魔力じゃ……きっと、今頃動けなくなってるぞい」


(……でも、なんでだ……?)


「ということは、ロッサ君の記憶だけが頼りになるという事になるの。犯人をよん思い出すんじゃ」

「……記憶は曖昧です……すごく高そうな白い服着てた事くらいしか……顔は老けてたような……若くはないです、でも爺さんでもないです……」

「顔つきはどうじゃ、太ってた? 悪人面じゃったか?」

「いえ、別に太ってないし、面は整ってました。特徴と言われると、もうぼんやりして、わかんない……うーん……」


 チュウが首をひねる。


「すごく高そうな白い服着た、顔が整ってる老けたおっさん……まさかノゲさん……?」

「誰ですか?」

「ノゲ・レイさん、モウエ銀行の総裁じゃ」


(……ノゲ・レイ……? どっかで聞いたような……)


「でも、理由がないからのぅ……」

「……もう手あたり次第行きましょう。それにモウエ銀行の警備はあの時、駆け付けて来たそうですから、何か知ってるかも……」

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