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リベルラ・ロッサ  作者: わをんわをーん
3章
20/21

対決

 ロッサは部屋から走って出て行く。


 腕輪を起動させる。光の方向は間違いなくモウエ銀行の方角、光の点滅の間隔反応から、もう中に入っていてもおかしくなかった。


 急がねばならない。


 ロッサは、ソリーソからすべてを聞いた。もう何も思う事はない。ファレナを連れ戻して魔協と協力すれば、それで終われる。


 宿屋の暗い階段を駆け下り路地裏に出る。


(ファレナッ、バカ野郎、1人で行ってどうするんだっ)


 ロッサが峨々と聳えるモウエ銀行に、肩で風切って入っていく。


 銀行内の職員たちが騒めく中、

「ノゲ・レイはいらっしゃいますね」

 脅すように言い放った。


「処刑人の方、が何の御用、でしょう?」

「……ノゲ・レイに、会わしてもらいたい」

「いきなり来て会わせろでは、あまりに無法。ノゲは最上階の取締役室に居ます。面会できるよう手配いたしますので、少々お待ちいただきたい」

「……悪いが、無理やり通してもらう」


 職員たちに剣をを突き付け、上階へ上がっていく


「協会に連絡を」

 職員たちが叫んだ。

「処刑人を呼んで対処してもらうんだ」

 ロッサが階段を駆けあがり待合室フロアに、到着する。

 二つの大階段が、暗闇の中、薄く見えた。


 ロッサが階段を駆けあがり最上階に着いた時、まず目に入ったのは、フロア中 央付近で月明かりに照らされて、倒れている人であった。


「ファレナァ!」

 ロッサは絶叫する。


 ファレナは、服を脱がされ、四肢が切断されなくなっていた。

 芋虫状態になった胴体の横には、切り刻まれたファレナの体がマカロニサラダのように盛られている。


 ロッサの声に、ファレナは首だけ動かし打ち振り向いた。


「何でこんな……」

 ロッサは、ファレナの惨状を前に半分、呆然自失としてしまっていた。


「ファレナ……」

 ロッサはファレナの元へ駆け寄る。


「ファレナ……ファレナ、ファレナ……」

 しゃがみ込んで、何度も声をかける。


「ファレナぁ、しっかりしろぉ……」

 ロッサは聖なるナイフを引き抜くと投げ捨てた。


「おい! しっかり! 直ぐ診てもらおう!」

「ああ……」

 とその時、ファレナの目がロッサに向いた。


 ファレナの口が震えながら、ゆっくり開く。

「ごめんなさい……」

「ファレナ……」

「……一人じゃ、何にもできなかった……」


 涙がファレナの瞳から溢れだした。


「私も……一人じゃ、何にもできない……」

「診てもらおう、ソリーソさんが協力してくれるってさ、助けてくれるってさ、そしたら、また元通りの生活に戻れる」

「……私は……本当に馬鹿で……」

「しゃべるな、後でいっぱい話――」


 ロッサはファレナの胸から下が金色に輝いているのに気が付く。


「この光……」

「ごめんなさい……私……ロッサが……守るって言って……くれたのに……お願い……したくせに……、これ、チュウ爺さんの形見、私はもう持っておけないから……」

「ああ、必ず守る、僕が必ず守ってやるから!」

「……ずっと一緒にいて……」

「僕、頑張るから!」


 金色の光はファレナの体全体に回った。


「ロッサぁ、ありがとう……」

 パッと金色の光が弾け飛んだ。

 と同時にファレナの体も無くなっていた。


「ああ!」

 ロッサが声を上げる。

「そんな!」

 ロッサの回りを光粉が舞う。

 首を振って、きらきらと漂い消えていく光達をロッサは眺めた。


 舞う光が次々と消えていくのを恨むような目つきをして、消えたファレナを探すような首の振り方をして、光粉をただ眺めていた。


 そしてロッサは、突然正面を向いたまま動けなくなったとおもうと、肩を震わせながら、うずくまってしまう。

「ごめん……ごめん……ごめん……」

 声にならない声で、うずくまったロッサはそう繰り返していた。


 うずくまって、許しを請うしかない。


 やがて光粉が全て舞い消えてロッサを照らすのが月明かりのみになる。

 ロッサの元へ、ノゲ・レイがバルコニーから室内へと歩きだした。

 その足音が、ロッサに聞こえる。


 バッとロッサは顔を上げ、立ち上がった。


 ノゲ・レイを振り向き、睨む。

「あんたが、ノゲ・レイか……?」

 ロッサの声は震えていた。

「そうだが、何か?」

「……そうか……あんたか……あんたか」

 怒気を含んだ涙声が、悲しく大きく震えた。


「全部……あんたの……せいか……」

 唇をかみしめ、こぶしを握る。


「あんただけは……必ず殺す……この手で殺してやる!」

 ロッサは叫んだ。


 ノゲ・レイが立ち止まる。

「私は、私を殺しに来た幽霊を始末しただけだ、処刑人よ、そいつは処刑対象であるぞ」

 ロッサを睨みつけながら言った。


 ノゲ・レイが手に持っている刀の、月明かりに怪しく光っているのを見つめる。


 ロッサも、育児袋をポッケに入れると刀を構える。

 



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