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リベルラ・ロッサ  作者: わをんわをーん
2章
11/21

離れ離れ

 決心の付く算段もでき、ロッサはファレナの待つ部屋に帰っていった。


「おっかえり、ロッサ!」


 と元気な声を出して、玄関横の階段から飛んできたファレナにロッサは迎えられる。


「ただいま、ファレナ」


 いつもと変わらないファレナの笑顔とこの光景に、ロッサはすこし癒された。


「……遅いぞ……すぐ帰って来いって言ったのに……」


 ファレナはぼそっと言った。


「えっ何?ごめん、聞こえなかった」

「何でもねぇよっ」


 ムスッとしながらファレナは、ロッサの方へぷかぷか飛んで肩に掴まった。


「遅いって言ったの」

「ごめんごめん、いろいろあってね」

「お姉さんの協力は得られた」

「いや、ああ、会えなかったんだ、それでいろいろ探し回ってたんだよ」

「……そうか……なぁ、私も一緒に行かしてよ」

「えっ?」

「私の事で動いてるんだよな、私も何か、私の事だし言わないとと思って」

「ああ、僕に任しておけば良いんだ、ここで待ってて」


 ロッサは優しく言った。


「ファレナは何も心配しなくて良い、僕が守るから、な?」


 その優しい言葉に、ファレナは顔をそむけた。


「ご飯を食べたいな。今日は出前を取ろう」

「そうね、私ピザ」


 ファレナはテーブルに腰かけ、ロッサの方を見ずに言った。


 出前はすぐに来た。


 ロッサはなんか機嫌の悪そうなファレナをチラチラ見ながら食べる。


 そうやってロッサが丁度食べ終えた時、


「ごめんくださーい!」


 と声がした。聞き覚えのある声に、ロッサは戦慄が走って飛び上がる。


「ファレナ、隠れて」


 ファレナを振り向き見ながらロッサは言った。


「また処刑人か?」


 怪訝そうな顔になってファレナは、ロッサを見上げながら尋ねる。


「あれ姉さんの声だ」


 少ししどろもどろになりながらロッサはそう言うと、


「早く隠れろ」

「……うん……」


 ファレナが奥の寝室に、しぶしぶ隠れた。


 恐る恐る降りていくロッサは、玄関の扉を開ける。


「ああ、姉さん」


 ロッサはできるだけ平静を装って出迎えた姉は、先で四本の白い爪が真っ赤な宝玉を掴んでいる金属製の杖を右手に持って、ラーパは警戒した様子である。


「依頼の進行状態はどうかと思いましてね」

「へっ!?いや、昨日の今日じゃないか」

「期日は2日後の日入りまでですよ、今日は何していたのですか?」


 ラーパは鋭い目つきになった。


「えっまあ……やるべきことがあって……明日から本腰入れてやるから、大丈夫だから」


 ラーパは鋭い目つきでロッサを睨んでいたが、しばらくすると案の定という軽く微笑んだ顔をして、


「ロッサ、もし教会に対して嘘を言ったり、反抗するようなことをしたら、どうなるかわかってますわよね」


 ロッサは心臓が収縮していくのを感じた。


「何?急に?」

「ロッサの部屋に来る前にね、太極拳をしてたモンスター族の方が私に話しかけて着ましてね。ロッサの知り合いだそうじゃありませんか、あのネズミは」

「ああ、チュウ爺さんですね」

「それがね、褒めてましたわよ、ロッサの事」

「僕を?」

「昨日、ファレナっていう幽霊の女の子を、暴漢から守ったそうじゃない、すごいわね」

「ああ、ははは……」


 ラーパはおもむろに腕輪を起動した。水晶の激しく点滅する緑色の光がロッサの顔を照らす。


「ヴェルデ・ファレナは、今現在もここにいますね」


 と言いながら杖を持ち上げ、ラーパは赤い宝玉をロッサに向けた。


「理由は後でじっくり聞きます」


 ラーパは目を眇めてロッサに狙いをつける。


 轟音が路地裏に響いた。荒れ狂う炎がロッサの達の部屋を吹き飛ばす。


 ファレナが、いきなりの炎に悲鳴を上げながらも、寝室の小窓から外へ飛び出して退避する。路地の中頃まで飛んで行って着地すると、すぐさま部屋を振り向き確認した。

 

 ファレナの目に、一つの巨大な火球が自分らの部屋のある建物の屋根を壊して、夜空に真っすぐ昇っていくところが映る。今までいた部屋は炎に呑まれて窓から火が噴出していた。


 と、炎に完全に飲まれている窓から、火達磨のになったロッサが飛び出して来た。


「熱い熱い熱い熱いー!」


 と叫びながら3階から地面に落ちる。


「熱い痛い!熱い痛いー!」

「おいロッサ!落ち着け!」


 ロッサは、体に付いた火を消そうとして悲鳴を上げながら激しく転げ回りった。


「熱いー!助けてー!助けてー!」


 ファレナはロッサの火の付いた体をペシペシ叩いたり、土をかぶしたりして火を消していった。


「……大丈夫かロッサ?」


 何とか消し終えてファレナが心配そうに尋ねる。


「うん、大丈夫だよ。ただ熱かったぁ」


 と火の消えたロッサはすっくと立ち上がって、焼け焦げた服をパタパタさせる。


「ファレナ、逃げるよ」

「うん」


 ロッサはファレナの手を握り、駆けようとしたその時、目の前にラーパが現れた。


 慌てて抜刀するも間に合わない。


 ラーパは杖の先端をロッサに向けた。突き出した杖の先で、強い圧力上昇が起きる。


 密度,温度も上昇、ドンという重低音が響き、空気は高速気流となってロッサとファレナを叩き飛ばして、舞い上がらしていった。



 ラーパがファレナに向け、飛んだ。その手には聖なるナイフが一振り。


「駄目だ!」


 ロッサも飛んだ。思いきり飛んで、ラーバがファレナ目掛けナイフを突き刺そうとする瞬間に、その間に入り込みファレナを抱きしめ、縦になる。


 ナイフがロッサの背中に突き刺さる。


 ロッサが背中から地面に落下した。


「大丈夫かロッサ」

「うん、なんともない」


 ロッサの背中にはチクッと刺されたぐらいの傷しかない。


「そこにいる幽霊は処刑対象よ」


 ラーバはロッサに言った。


「姉さん待ってっ、話を聞いてっ」


 ラーパは、ロッサ達に迫っていく。ロッサはファレナを背後に隠していた。


「どきなさい」


 ラーバの言葉には冷たい語気が帯びていた。その目がファレナに視点を合わせる。


「待ってってば、あのね、理由があるんだ、もしかしたら処刑情報が間違っているかも知れないんだ」

「神器が狂ったと、そう言いたいの」

「そ……そうかも知れない……明日になればわかるから、お願い、待ってっ」


 ラーパは杖の先端をロッサに向ける。ロッサは呆然として見つめた。


 強烈な電流が先端から巻き起こり、ロッサに直撃する。


 ロッサは目の前が一瞬真っ暗になり、頭から倒れた。


「……ああ……」


 ロッサは、苦痛に息を吐く。それくらいではノーダメージである。しかし体が動かない。強烈過電流は体の神経を麻痺させていた。ロッサの事を理解するラーバの技であった。


「……ファレナ……逃げないと……、……姉さん……」


 倒れながらロッサは、すぐそこに立っているラーパを仰ぎ見る。


「……ねえさん、やめて……」


 と懇願するロッサをラーパは無視し、ファレナに迫る。ロッサは動かない口で、声を出し続けた。


「……ねえさん、やめて。ファレナ、逃げて」


 ファレナは恐怖のあまり、座り込んでしまっている。


「ファレナ、逃げる、んだ」


 ラーパは懐から聖なるナイフを取り出した。


「……ねえさん!やめて!ねえさん!」


 ラーバがナイフを振り上げ、刺し殺そうとした――その時、ラーパの腹を一筋の光線がビーという音を立てて突き抜けていった。


 ラーパが力なくその場に倒れる。腹から流し続けられる血に、ラーパの体が浸っていく。


 そこへ<移動魔法>ロンの緑の光が天から降ってきた。ピロリン♪と音がすると、空から白のスーツ姿のノゲが、シュタッとラーパの前に着地する。


 ロッサは突然の事に言葉を失い、思考さえまともに働かない。


 ただ目の前に現れた男が倒れるラーパと自分をしり目に、ファレナを肩に担いでいくのを見ていた。


(誰だ? お前……ファレナをどこに連れて行く、んだ……?)


 担いだノゲは、ロッサの方を振り返り見つめる。


「ロッサ!」


 ラーパは叫んでロッサに抱き着くと、宝玉の魔力を使ってロンを唱えた。姉弟は天に伸びる緑の光に包まれるとピロリン♪の音と共に上空高く消えていく。

 

 ノゲは、それを暫く見ていると、自身もロンを唱えファレナと共に空中へと消えて行った。






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