廊下
「あらあら、マサキさん、ご機嫌いかがかしら? あらあらあら、そんなに逃げ腰にならなくてもよろしくてよ」
購買でジュースとついでにヒカリのおやつを買って教室に戻ろうとした時であった。
廊下で面倒なやつに捕まった。なんだってここにいるんだよ……。
三年Aクラスのリーダーである、エリ・マシュマロである。
絶大な力を持っている生徒会を牛耳るこの女は、何故かFクラスである俺にちょっかいをかけてくる。
「あ、エリさん、こんちわ、そしてさよなら!」
そそくさと逃げようとする俺を、取り巻きの女子どもが行く手を遮る。
……マジ厄介だよな。生徒会が誇る円卓ガールズ。その戦闘力一人ひとりがはランクBに近い。会長のエリに至っては未知数だ。自称ランクB+だけど……絶対違う。こいつは学園の化け物の一人だ。
ちなみにミヤビの強さはC+っていったところだ。その取り巻きはランクDだ。
「あらあら、寂しくてよ。うふふ、この学校を制するためにはマサキ君が必要なのよ。今ならお給料を――」
俺は話を聞き終える前に円卓ガールズの虚をついて逃げ出した。
「な!? わ、私達の包囲網を――」
「流石はマサキ殿。会長殿が固執するのも頷ける」
「是が非でも我らの仲間に――」
「マサキ君って超かわいいよね? ねえねえ彼女っているのかな〜」
「あらあら、逃げてしまいましたね。ふふ、次は逃しませんよ――」
「また今度詳しく聞きまーす! さよなら!」
追いかけようとする円卓ガールズを手で制止しながら不敵に微笑むエリ会長。
――怖。
若干、周囲の生徒の視線が痛いが俺は気にせず教室へ戻ろうとした。
*********
俺に構ってくる上級生はエリ会長だけじゃなかった。
騎士部の会長で帝国貴族のギルバードさん、開発部で超大国出身のハカセさん、魔導研究部の長である旧魔王領出身のレミールさん。
他の生徒は、学校の大物達が俺に構うのが気に食わないらしい。みんな人気がある生徒だからな。
俺だって関わりたくないのに……。
今も廊下を歩くと男子生徒からの視線が痛い。
「あいつだろ? ミヤビ様の事を袖にしたやつ」
「マジムカつくな。合同演習のときやっちまおうぜ」
「なんかいい嫌がらせねえかな」
「クズのFクラスのくせによ」
まあいつもどおりだから気にしないけどな。
っと、なにやら俺の教室の前に人だかりが出来ていた。
そこにはAクラスであるミヤビの取り巻きどもがいた。
ミヤビの腹心であるタンゲと目が合う。
タンゲは怯えを隠しながら俺に喋りかけてきた。めんどくせーな。
「おい、貴様! 何故貴様如きがあの変質者を撃退することが出来たのだ! どんな不正を使ったんだ! もしや、怪しいマジックアイテムを使ってミヤビ様の心を――」
不意打ちならともかく、いくらランクDでも囲まれてたらボコられる。
「貴様ーー! 聞いているのか! ミヤビ様はお前のせいで涙を――ぶぼっ!?」
「ご主人様ーー!! 休眠終わったのね!! もふもふしてね!!」
教室から飛び出して来たアリスがタンゲを吹き飛ばした。
タンゲは廊下の壁に激突して失神してしまった……、いや、俺しらねえからな。
「ていうか、アリス!? まだ休眠してる時間じゃなかったのかよ!」
「ご主人様がピンチっぽかったから頑張って短くしたのね! 褒めて!」
もふもふのアリスが飛び上がって、俺の胸に飛び込んでくる。
「な、なんだ、あの物体は? つ、使い魔か?」
「え、使い魔って、あいつは【戦うモノ】だから出来ないだろ」
「魔獣……、魔物? でもでも可愛いうさちゃんだね!」
なるほど、うちのクラスに妙に人だかりが出来ていたのはコイツラのせいか。
『――はい、眷属達は朝の出来事を察知して、自力で休眠から目覚めたようです』
はは、なんか嬉しいじゃねえか。
俺はアリスの身体をもふもふした。アリスは嬉しそうに鳴き声を上げる。
「きゅきゅっ!」
ビビアンの声も聞こえてきた。
「ええい、触るでない! 我の身体に触れていいのはご主人だけなのだ!」
教室から悠然と出てきたビビアン。ヒカリが嬉しそうにビビアンの身体をなでていた。
触るなといいながらしっぽがフリフリしている。
そういやこいつ魔王ごっこしてるんだっけ?
中々堂に入っているじゃないか。
「おー、ビビアンも目が覚めたんだな! じゃあ今日はギルドでパーティーだ!」
「御意、ご主人の心のままに――」
周りがざわついているのを感じる。
「え、つ、使い魔が二体!?」
「魔獣使いでもランクAじゃないと無理じゃね?」
「でも可愛いからいいじゃん!」
「せ、先生呼んで来いって!」
「マサキの言うこと聞いてるから大丈夫でしょ」
とりあえず面倒が広がる前に俺はビビアンとアリスを引き連れて教室へと戻った。