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大団円


「ご主人様、おきるのね!! 朝ごはんの時間なの! ビビアンも起きるのね!」


 一番早起きであるアリスがいつも俺を起こしに来てくれる。

 俺たちはみんなでゼンジの別宅に住むことになった。

 アリスとビビアンがどうしても俺と一緒に住みたい、と、ゼンジに頼み込んだ。


 ゼンジは『ふぉふぉ、構わないのじゃ。マサキ殿はわしらの命の恩人、わしのモノはマサキ殿のものなのじゃ』と言ってくれた。


 俺とヒカリは寮を出た。ゼンジは、俺が住むならヒカリも一緒じゃなきゃ駄目と言って聞かない。――正直、意味がわからなかったけど、まあいいか。

 というわけで、俺達はみんなで一緒に住んでいる。


 俺の横で寝ていたビビアンがもぞもぞと動く。


「……眠いのだ。我は……闇の眷属……、朝は苦手なのだ」


 アリスの聖なる魔法がビビアンに襲いかかる。

 毎朝のルーティーンみたいなものだ。こいつらもこいつらで大概仲が良い。


「ご飯出来てるのさ。今日はうちが当番だから頑張ったのさ!」


 マリサもすっかり元気になった。心の傷も癒えて、今日から騎士候補生学校中等部に編入する。心なしか緊張した面持ちである。

 俺は布団から出て、大きく伸びをする。

 布団を剥ぐと、そこには枕に抱きついているヒカリがいた……。


「またか……、全く、女の子だから俺の布団に入っちゃ駄目だろ?」

「……おはよ……すー、すーっ……、おやすみ」

「馬鹿っ! 起きろよ!? 今日はマリサの初登校日だろ? みんなで登校するって昨日はしゃいでいただろ!」


 そんなこんなでヒカリも目覚めて、朝食の時間となった。




 朝食は東方の伝統料理であった。

 俺たちは東方食器である箸の使い方もすっかりうまくなった。


「お、これが焼き魚と納豆ってヤツか。味噌汁もうまいな! マリサ、料理うまくなったな!」

「えへへ、嬉しいのさ……」


 マリサもすっかり普通の中等部の女の子みたいになった。

 初めて会った時は俺たちを殺そうとしてたけどな。


「マサキ殿、今日はキリュウインとレオンハルトの裁判ですが傍聴はいかがしますか?」


 黒装束をまとったスバルが俺に聞いてくる。

 こいつはこいつで帝都の女神教の残党の調査を任している。戦闘は得意じゃないけど、諜報活動は優秀であった。シリルほどじゃないけどな。


「んあ? 面倒だから行かないよ。ギルとエリさんに任せる。ていうか、女神教の残党って結構いるんだよな……」


 スバルが調査をすればするほど、女神教が湧いて出てくる。しかも他国の女神教がテツコの失脚を知って、乗り込んで来た。

 あいつらは非情に嫌らしい。女神っていう種族はみんな性格悪いんだな。


「御意、それでは学校を楽しんで下さい――」


 スバルはそれだけ言って、姿を消した。というか、気配を消して闇に紛れたって感じ?

 最近はリュータロウさんのギルドでスバルを慕う冒険者も増えて、一緒に仕事をしているらしい。あいつ結構熱血馬鹿だから面倒見がいいんだよな。


 ビビアンとご飯を食べ終わると、いつもならゼンジと対局をしている。ただ、今日はマリサの晴れ舞台だからお出かけの準備で毛並みをブラッシングしていた。


「ふむ、この姿も慣れてきたのだ。我の毛並みは美しいのだ」

「うっさい犬っころね。早く準備するのね!」


 アリスとビビアンは相変わらず仲が良い。

 喧嘩というよりあれはじゃれ合いだな。前世に何があったか知らないけど、いつか話してくれた時に真剣に聞いてやるか。


「ごちそう様! 準備出来たら学校行くのさ! ……き、緊張するのさ」

「大丈夫ね! わっちがこっそり教室を見張るのね!」


 いや、それは駄目だろ。

 まあ心配なのは分かる。だけど今のマリサなら大丈夫だ。


 俺たちは準備を終えて、学校へと向かうことにした――






 ***************





 ヒカリは上機嫌に鼻歌を歌いながら通学路を歩く。

 ていうか、歌うめえよなヒカリって。


 アリスとビビアンはマリサと手を繋いでいる。

 ……犬と兎だけど、親子みたいだな。


「あれ? って事はアリスとビビアンは夫婦か」


 二人はとてつもなく嫌そうな顔をする。

「そ、それはいくらご主人の命令でも絶対ムリなのだ!」

「う、うん、無理ね。こいつとはそんな関係じゃないのね」


 友達とも違う……、まあいいか、マリサも楽しそうだし。


 通学路には大勢の学生が学校へと向かっていた。


「あら、マサキ君にアリスちゃんおはよう!」

「ビビアンちゃんもいるじゃん! 可愛い!!」

「マリサちゃん今日から中等部でしょ? ふふ、楽しみだね」


 円卓ガールズの女子生徒たちが近づいて来て話しかけてくる。

 エリさんのわがままでストレスが溜まっている女子生徒たちは、アリスたちをもふもふする事によってストレスを解消している。

 マリサは妹ポジションを獲得して、なんやかんや世話を焼いてくる。


 俺は寒気を感じた。

 思わず横に身体を躱すと、エリさんが残念そうな顔で立っていた。


「あらあら、残念ね……。ふふ、おはよう」

「全く、油断も隙もあったもんじゃねえな。おはよっ」


 女神教壊滅事件の後処理はエリさんが各方面に根回して処理をしてくれた。

 もちろんギルも手伝った。ギルいわく、政治的な事はエリさんに家の方が得意みたいだ。

 そういえばエリさんがタンゲたちを助けた時の戦いは見れなかったけど、どのくらい強いんだろう?


『……大司教を超える強さを獲得していました。ただ……、まだ何か隠し持っている雰囲気を感じます』


 ――雰囲気? 随分ホワッとした答えだな。シリルにしては珍しい。


『はい、女の勘です。このまま成長すれば世界有数の強者になります』


 やっぱ怖い人だな。絶対敵に回したくない。俺の方が存在値は高いけど、勝負したらいつの間にか負けてそうな感じなんだよな。


「ふふっ、また悪いこと考えているのね? 今日はマリサちゃんの初登校日でしょ? 私も中等部校舎まで一緒に行くわ」


 エリさんの後ろから人影が見えた。俺たちを見て微笑んでいる。


「私も一緒に同行してもいいかな? 断るのは無しですよ」


 超絶イケメンのギルである。朝から爽やかな男だ。もちろん親衛隊も一緒だ。

 親衛隊は裁判の件で激務を抱えているのか、非常に疲れた顔をしていた。


「お、ギルじゃん、おはよう!」

「ああ、おはよう。……マサキはエリと仲が良いな。婚約でもするのか?」


 俺は思わず吹き出してしまった。


「いやいや、ありえないっしょ!? 俺って平民だぜ? それこそ身分違うだし――」


「あら、わたくしはよろしくてよ? 爵位なら女神教を潰した功績でいくらでもあげられるし、皇族に根回しできるわ」


「い、いや――」


 ヒカリが俺とエリさんの間に割り込んだ。


「むぅ、無理矢理は駄目! マサキは貴族になりたくないもん」

「な、なんだよヒカリ。安心しろよ、俺はエリさんなんてこれっぽっちも一欠片も恋愛感情がないから――」


 エリさんの眉毛がピクピクしていた。なにかポロっとまずい事を言った気分だ。

 こんな顔をしているエリさんを見るのは初めてであった。


「あ、あなたね。すごいわよ。ふふ、初めて振られちゃったわ。――あらあら、ギルが慰めてくれるの?」


 今度はギルがすごく嫌そうな顔になった。


「……絶対嫌だ」

「ふーん、子供の頃の約束覚えてるかしら? なんならここで思い出させましょうか? あれはギルが幼稚園の時――『ぼ、僕はエリと結――』」

「や、やめーー!!! あれは私の黒歴史なんだ!! うわぁぁぁぁ」


 いつもクールなギルが恐ろしく取り乱している。

 ……うん、聞かなかったことにしよう。


 そんなこんなで中等部の校舎は目の前であった。







「ね、ねえ、あれってマサキ様のグループじゃない?」

「四帝のうち、三帝が所属している伝説のパーティー」

「マサキ様素敵……」

「なんでもFランクのスキルでも有用な使い方を提示したとか」

「やべーよ、おれ昔あいつに喧嘩売っちゃったよ……」

「俺はヒカリさん派だな」

「はっ? エリ様の美しさはやべえだろ」

「ギルバード様……」

「はぁ……、分かってないな。アリスさんとビビアンさん一番可愛いだろ」


 高等部の生徒も、中等部の生徒も入り混じって適当な事を言っているが、俺達はあまり気にしない。いつもの事だ。


 それよりもマリサを見送らなければならない。


 俺たちは中等部の前で立ち止まった。


「んっ、行ってくるのさ――」


 マリサがアリスとビビアンの手を離し……、深呼吸をして校舎に向かって歩き出した。

 マリサはしばらくすると後ろを振り返って、俺達に手を振って走り出した。


 その顔は微笑みを浮かべていた。だからきっと大丈夫だ。

 たくさん友達できるといいな――





 **********




 教室に着くと、ジャイアとサナエがクラスメイトに囲まれていた。

 ハカセやエリさんと仲良くなったこともあるが、二人はそれを鼻にかけない。

 調子に乗らずに謙虚な姿勢でクラスメイトと接していた。


「うん、その方程式はこうした方が綺麗だね」

「あ、ありがとう。ジャイア君頭いいんだね!」

「サナエ〜、今度お菓子の作り方教えてよ〜」

「いいよ、あっ、その代わり食材費は払ってね!」


 教室は穏やかな雰囲気であった。

 ジャイアは意外と頭が良かった。まあそうじゃないとハカセの助手なんて出来ねえよな。


 二人の周りはすごく自然な雰囲気で見ててこっちまで嬉しくなってくる。

 ――良かったなジャイア、サナエ。


「マサキーー! お前日直だろ!? もっと早く来いよ!」

「俺が準備しておいたから感謝しろよ」

「ヒカリさん、おはよう!」

「ヒカリちゃん〜、ねえねえこの歌手知ってる? ヒカリちゃんが好きそうな感じよね〜」

「マサキ! 小休憩の時に体術の技を教えてくれ!」


 俺もヒカリもみんなに挨拶を交わす。

 なんだろう、トゲトゲしい雰囲気は無くなった。

 ……もしかしてテツコが教室をかき乱していたのか? 


 女神であるテツコの扱いは非常に難しいものになった。

 女神だからみんなどうしていいかわからなかった。

 牢獄に入れても絶対脱走する。またどこか知らないところで迷惑をかける。

 死刑にしても死なないから意味がない。


 だから、俺はダンジョン最深部にある女神城にテツコを閉じ込めた。

 当分はそこで反省を促して、時折俺とヒカリが出向いて遊んであげる。


 ……ゲームばっかしてるけどな。


 テツコは常識がなかった。というよりも人の痛みをわからない。だってあいつは女神だ。

 死ぬ事のない強靭な身体、千年近く生きる精神力。

 俺は漫画活劇やゲームを通して、テツコに常識を教えている。

 そんなテツコは、

『当分ここでマサキと遊ぶじゃん! 暇なときはロープレしてんじゃん!』


 と、囚われているのに楽しそうであった――

 くそ、俺はお前のおかげで大変な目にあったのに――


「おーい、マサキ、ハカセ先輩が放課後、実験台になってほしいって……、うん、俺は伝えたから。……あとはよろしく」


 ジャイアが俺に向かってよく通る声で話しかける。

 その声色には気負いもなく、虚勢もなく、自虐もなく――友達に自然と話しかける声であった。

 ――でも、ハカセのところには行かねえよ!!





 **********





 放課後、俺とヒカリは二人で街を歩く。

 ここ最近、色々な事がたくさんあった。

 こんなにゆっくりとした時間を過ごすのは久しぶりだ。


 ヒカリは俺の横を嬉しそうに歩く。

 時折俺を見て笑っている。


「んあ? なんで笑ってんだよ?」

「ん? だって久しぶりの二人っきりでしょ? なんか嬉しいんだよ」


『……わ、私もいます』


 ――うん、おうち帰ったらお風呂入っていいから。たまには二人っきりにさせてよ。


『……わかりました。それでは魔力粒子になって家でゆっくりします』

 シリルは俺の中から出ていった。


 俺たちは屋台でジュースを買って、公園のベンチに座った。

 本当にちょっと前の日常の放課後みたいだ。

 あの時は俺とヒカリしかいなかった。


 二人だけですごく楽しかったんだ。


 でも――


「えへへ、二人っきりは嬉しいけど、みんなと仲良くなれてもっと嬉しいんだ」

「そうだな……、いつの間にか仲良くなっていたな」


 殺し合った奴らもいた。それでも悪いヤツはいなかった。

 気がつくと、俺達のそばにいる。



 ヒカリは俺の方へ少し距離を詰めた。

 ……ちょっとドキドキするじゃねえかよ。……シリルがいないと不安になる。


「カラオケ最近行ってないね」


「そういやそうだな。……今度みんなでカラオケ行くか?」


「うーん、それも楽しそうだけど、たまにはマサキと二人でいきたいな」


 ずっと二人っきりだった俺たち。

 本当は寂しかったんだ。お互い不器用だからクラスメイトとうまく接する事が出来なかった。

 ヒカリは俺を見て寂しそうだと思った。

 俺はヒカリを見て寂しそうだと思った。


 なんか似ているんだよな。

 俺にとって、ヒカリは大切なマブダチ――、いや、なんだろう? 言葉に言い表せない。


「なあ、ヒカリ」


 俺は勇気を出してヒカリの手を握った。

 いつものじゃれ合った感じではなく、優しく大切に扱うように――

 心臓がバクバクしてきた。


 ヒカリの顔が赤くなる。俺の手からヒカリの体温が伝わる。

 ヒカリは俺の手を握りしめてくれた。


 ただ、それだけで、俺は嬉しくなってしまった。

 細かい事はどうでもいい――

 俺はヒカリと一緒にいると嬉しくなる。


 俺は立ち上がった。


「うん、今から一緒にカラオケ行こうぜ!」


「えへへ、マサキ、嬉しい……」


「ば、馬鹿、にやけてんじゃねぞ!」


「マサキだってにやけてるよ?」


「こ、これは……その、嬉しいからだ――」


 俺は恥ずかしくなって、ヒカリの顔を見ずに歩き出した。

 ヒカリは俺の手をしっかりと握り直し、俺に体当たりをする。


「早く行こ!!」

「ちょ、ヒカリ早いって!!」


 その時見たヒカリは……とても綺麗な笑顔だった。





 **********





 俺は自分が不幸だと思っていた。

 両親を亡くし、田舎では差別にあい、幼馴染には振られた。


 だけど、俺には大切な友達がいた。

 ヒカリがいたから俺は道を外れなかった。

 ヒカリが俺を守ってくれたからスキルの本当の意味を知ることができた。


 友達もたくさんできた。

 一人では出来ない事もみんなで立ち向かえば問題なかった。


 みんなと過ごすうちに、自分の本当に大切な人の存在を自覚した。

 俺は、大切な人を守りたい。

 だから、この先何があっても俺はヒカリのそばにいる――




 これは、彼女の幼馴染に振られたけど、本当に大切な人が誰か分かって、その子が殺されるなら俺が死んでも守る。と、覚悟してから始まった青春学校物語だ!!






(帝国騎士候補生学校の劣等生、幼馴染の彼女に振られた俺は死ぬ覚悟を決めたら偽装スキルが解除された――【覇王】スキルで最強の軍団を作り出す 完)





絶対不可能かと思ってましたが、ま、間に合いました!

無心で書いててすごく楽しかったです!


文字数が到達したのも嬉しいですが、完結した事が一番嬉しいです!完結は本当に難しいので……。

ざまぁ少なめで追放も無いけど、今までのファンタジー作品の中で一番お気に入りです!


なんか完結したら一位になりそうな気がする不思議な作品でした。


ブクマを外す前に最後の応援をお願いします!


完結お疲れ!

他のも完結させろよ!

現実恋愛書けよ!

面白かった!

続きを見たい!

追放に負けるんじゃねえぞ!



と、思ったら最後の★★★★★の評価の応援をお願いします!


ここまで本当にありがとうございました!

応援が励みになって完結まで行けました!




以下新作の宣伝です!

【俺の事を馬鹿にする幼馴染をわからせたい】

https://ncode.syosetu.com/n5469hb/





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― 新着の感想 ―
[一言] 大円団ではなく、大団円ですよ。
[一言] この作品も、他作品も、いつも楽しく読ませていただいています。次回作も期待しています(* ॑꒳ ॑* )⋆*
[一言] 完結すること雷光のごとし 1話目から楽しく読ませていただきました、よければ次回作も期待してます お疲れさまでした
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