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事後処理


「なんだろうね、結局は人が集まるとそれを利用する奴らが現れるんだよな」


 あのフルーチェもそうだ。マリサを甘い言葉で誘って、誘拐して洗脳して手駒にした。女神の情報を読み取る限り、大司教たちは派閥争いをしていた。そこに教祖であるテツコの意思はなかった。


 女神はすで復活しているのに、神秘性を消したくないから公表せず、狂信者を増やしていった。

 この帝国にどれだけ被害があったのだろうか?

 女神であるテツコは本当に戦力を集めたかっただけであった。強大な力を利用するものが現れて理想と違う戦力の集め方になった。


 テツコは女神だ。人間なんて自分より格下だと思っている。だから戦力であるならどうでもいい、と思ったらしい。


 それに女神会議とやらの議事録を見ると、他の女神教も同じようなものであった。

 ある女神教は女神が率先して人を攫い洗脳する。国家の王を堕落させて国を奪った。

 政治を裏で操り、全ての権力を女神が操る。


 ……テツコがマシに感じてしまった。


 いま、俺の前で死んだふりをしているキリュウイン先生も普通の人だと思っていた。

 ロリコンで変態だけど真面目な先生だと思っていた。


「先生、起きてんでしょ? 司教ランクって分かってるからあの程度で気絶するわけないっしょ」

「…………」


 それでも起き上がろうとしない。この状況でも諦めず逃げ出そうとしている。

 ……学校関係はギルたちに任せるか。俺だとどんな風に裁けばいいかわからん。


 俺は先生の肩を掴む。同時に、転移魔法を構築した。

 この場所にいる全員を包む魔法陣。


「へっ? たかが人間が一瞬で転移魔法を構築? ありえないっしょ、マジ王系ってなんなの?」


 俺たちは転移魔法によってギルとエリさんたち救出隊と合流した。







 転移先は、洗脳部屋があった施設の前の広場であった。

 そこには攫われた生徒が土魔法で作られた椅子で休んでいる。

 スバルやゼンジ、それに親衛隊と円卓ガールズのみんなが生徒のケアを行っていた。


 エリさんは俺が転移した瞬間、抱きしめてきた。マジ勘弁してくれよ。っていうか、転移した瞬間がわかるって……、なんの魔法だよ……、もしかして時間系の魔法か?


「ふふっ、お疲れ様。こっちはいつでも移動大丈夫よ。……そっちも大丈夫そうね」


 テツコと先生が拘束されているのを見て笑みを浮かべる。


「ああ、テツコはアリスたちに任せるとして……、キリュウイン先生の処分は任せるわ」


「ええ、もちろんよ。はぁ……先生は大貴族だったから、一族全員調べなければいけないわね。……そっちのレオンハルトも裏切り者だったわ」


 エリさんがレオンハルトを見つめると、レオンハルトがガタガタ震え出した。

 唇が真っ青で、キレイな金髪が……真っ白に変化していた。

 レオンハルトの隣には……司祭っぽい女の人が倒れていた。


 ……マジで事後処理が面倒だな。


『いえ、問題ないかと。大貴族であるエリさんとギルバードさんが率先して処理をします。この状況を利用して、自分の家を大きくするつもりです』


 ――マジか……、貴族ってすげえな。俺は平民でいいや。




「ていうか、レオンハルトってミヤビの元カレじゃん……。あいつマジで男運がないな」


 そんなミヤビはタンゲと言い争いをしていた。

 えっ? タンゲどうしちゃったの?

 声がここまで聞こえてくる。俺たちが転移した事に気がついていないほど白熱していた。


「だからなんであなたが私の元から離れるのよ!」

「言うことを聞け。俺は腐った人間だ。俺が近くにいたからミヤビが駄目女になったんだ」

「……っ。そんな事ないよ。私が都会に浮かれて馬鹿なだけだったのよ……」

「俺は二度とミヤビに関わらない。これはミヤビのためであり――」

「はっ? なんであなたがそんな事言うのよ! わ、たし一人ぼっちになっちゃうでしょ……」

「……好きにするがいいさ。普通の友達を作ったり、マサキにアタックしたり――」

「へっ……、な、なんであなたがマサキを応援するのよ。あなた私の事好きって……」

「ふん、嫌いだ。俺が好きだったミヤビは昔のミヤビだ。悔しいが、マサキはお前にとって最高の彼氏だったと思う。マサキと一緒にいるミヤビを好きになったんだ」

「……うるさいわね! 勝手に私の事を語らないでよ! 絶対私はあなたから離れないんだから!」

「……はっ? ……なんて面倒な女なんだ。くそ、マサキの気持ちが少し分かってきた」


 なにやら痴話喧嘩のようだ。うん、仲が良さそうで大変結構である。

 タンゲと視線が合った。タンゲはげんなりとした顔をしていたが、どこか晴れやかであった。

 俺に小さく会釈をする。

 それがあいつの今の気持ちを表していた。


 ミヤビは俺に気がつくと、なんとも言えない表情になる。

 なんだろう、田舎にいた頃みたいに懐かしい雰囲気を感じた。


 ミヤビは俺に小さく手を振るだけで視線を切った。なんだか吹っ切れた顔をしていた。




 ふと、自分の腕に柔らかさを感じる。

 ヒカリが俺の腕を掴んでいた。


「……マサキ、ミヤビとまた付き合うの……?」

「はっ、ありえねーし。天地がひっくり返ってもそれはない」

「ふーん、そっか。へへっ、マサキはモテモテだもんね。エリさんと親密だしね」

「いやいや、エリさんはありえねー。ヒカリは知ってるだろ? 俺は地味めでふとした瞬間に可愛さを感じる女の子がいいんだよ」

「へへ、知ってるよ」


 俺はなんだかヒカリがすごく可愛い思えてしまった。

 ……大丈夫、俺にとってヒカリはマブダチだ。世界で一番大切な人なだけだ。


『……ご、ご主人様……そ、それは好きって……』


 ――んあ? ちょっとシリルは黙ってくれ! 勝手に人の心を演算するなよ? お前も大事な人の一人だからな。


『……っ、あ、ありがとうござます。ま、また一緒にお風呂に入りましょう』



 その後もヒカリと他愛もない会話をしていると、疲れた表情のギルが目の前に立っていた。


「……エリの暴走を止めるのに苦労したよ。相変わらず無茶ばかりする幼馴染だ。マサキ、そろそろ学校へ戻ろう」

「そうだな、じゃあ転移の用意すっからみんなを集めてくれ」

「了解」


 ギルがみんなに指示を出して整列させる。さすが大貴族の長男だ。


 こうして俺たちは全員無事で学校へと戻った――







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