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圧倒的


 同級生であるテツコの姿をしたモノが最奥の部屋にいた。

 ついでにキリュウイン先生もいたけど、明らかに裏切り者っぽかったからとりあえず寝てもらった。


「ちょ、あんたマジ空気読んでよ。だからあんたあのクラスで嫌われるのよ」

「なんだ、テツコが女神だったのか?」

「ち、違うわよ! わ、私は攫われただけじゃんか!」


 目が明後日の方向に行ってんぞ……。

 そういえばテツコってたまにしか見かけなかったもんな。

 ていうか、俺って運が良かったのか。こいつがアホの子だったから俺が王系スキルの持ち主だってバレなかったんだ……。


「ていうか、テツコって女神なの? マジ超すごいな」

「でしょ! 私って超すごいのよ! なにせ千年くらい生きているしさ!」

「……やっぱ女神だな」

「……あっ……、マサキ天才? ていうか、あんた何なのさ!! 私が長い時間をかけて作った軍団が壊滅してるじゃんか! マジ弁償してよ!」


「はっ? お前が先に喧嘩売ってきたんだろ?」


「う……、そ、それはマサキが王系って知らなくて……、ていうか、意味わかんないよ! なんで勇者と魔王を従えてんのよ! あいつら一匹でもヤバいのにそれが二匹よ! それに、姫系スキルの子――あの子は聖女に匹敵する魔力だし! ヒカリもなんであんなに強くなってるのよ……剣聖こえてるじゃん……剣で魔法無効って……理不尽すぎるわよ。あーもう、四帝のうち三人はマサキの仲間だし、なんか強化されてるし……、エリさんマジぱねえし……」


「知らねえよ、気がついたら友達になってただけだ」


 そうだ、本当に気がついたら友達になっていた。俺の周りにはヒカリしかいなかった。

 それがここ数日でえらい事になった。

 と言ってもその繋がりは前々から蓄積されたものだ。それがいま花開いた。


 女神テツコは大きなため息を吐く。


「はぁぁぁぁ……、マジで私がやるしかないわね。……ちょっとイケメンだから気に入ってたけど、世界の平和のためだから仕方ないじゃん」


 シリルが俺にささやく。


『ランク外、種族女神。鑑定不能。ですが私はご主人様を信じています』


 ――おう、任せろよ。






「ていうか、テツコ、女神教潰れてくんねえか?」

「いやー、流石にちょっとそれは……、あんたの力を奪って作り直すじゃん」


 俺たちは軽口を言い合いながらも、お互い魔力を高める。

 テツコの魔力は尋常じゃない。女神と名乗るだけはある。

 多分、アリス達全員でかかっても勝てないだろう。


 だけどな――俺にはみんなの力が上乗せされてんだよ――

 テツコがシンプルに俺の顔めがけて魔力弾を放つ。その魔力量はエンシェントノヴァの数十倍はくだらない。

 しかも時間をずらされた。一瞬俺の認識がずれる。


 俺の頭に魔力弾が突き刺さる瞬間――


「えっ? な、なんで私がこっちにいるの? ……超痛いんですけど」


 俺は空間と時間を揺さぶって、テツコと俺の位置を変えた。

 テツコは自分の魔力弾によって頭の半分が弾け飛んだ。


 俺は直感で物理攻撃だけでは倒せないと認識する。

 再生するテツコの頭を鷲掴みにして――俺は【覇王】の力を魂に直接注ぎ込んだ――


「ひ、ひぃぃぃぃぃ!? は、覇王をそんな使い方するやつ見たことないじゃん! て、ていうか、洗脳? マジ、勘弁して……」


 俺の覇王の力が極悪な精神攻撃に変わる。テツコの魂が耐えきれそうにない。――こいつは完全な女神じゃない。ならこの身体の魂が耐えきれない攻撃をすればいいだけの話だ。


 そのうち、テツコはぐったりして気絶してしまった。

 が、油断しない俺はテツコの頭を床に叩きつけた。


「――っ!? あ、あんたマジで鬼なの!?」

「馬鹿野郎! やっぱ意識あるじゃねーか! 騙されねえぞ!」

「ま、まって! も、もうやめよ? ね? 私も反省するからさ……」

「はっ? ちゃんと叩きのめさないと後で復讐されるんだよ。だからもう少し付き合えや」

「むきーっ!! たかが人間如きが!! わ、私の真の力を見せてあげるじゃん!」

「いや、何も変わってねえけど……」

「うぅ……神界じゃないから……。あっ、ヒカリ! マサキ君にいじめられて――」


 最奥の部屋にヒカリが追いついてきた。

 ヒカリは走りながら躊躇なくテツコの頭めがけて剣を振るう。


 テツコは死ぬ物狂いでそれを躱した。少しほっぺたが切れているけど……。

 ていうか、今の一撃はやべえ。俺でも避けられる気がしない。

 現にテツコは自分が無事なのを信じられない表情をしていた。


 そして、テツコは安心する暇もなく、ヒカリの返す刀によって首を刎ねられた――




 ****************





 エリさんから念話があった。


『こっちは無事保護したわよ。一応全員無事よ。たまには本気出すのもいいわね。また機会があったら誘ってね?』

『こちらも施設の制圧は完了してエリと合流した。大型魔獣と高ランク冒険者が厄介だったけど、どうにかなったよ』

『拙者……、あまり活躍出来なかったです。……か、代わりに生徒たちを取りまとめています!』

『ふぉふぉ、そういう役割も必要じゃ』

『ご主人! 敵が出てこなくなったのだ! 我の魔力はまだ半分も減ってないのだ!』

『もきゅ……、やっぱり聖女が女神だったきゅ……ムカつくね』


 俺は一人ひとりに返事をして、指示を出し、再び女神テツコと向き直る。

 流石にテツコは観念したのか、肩を落として地べたに座っていた。


「もういいわ。女神教は解散よ。……刑務所でもなんでも行ってあげるわよ!」

「いや、お前が入る刑務所無いだろ……、絶対脱走するだろうし」

「うん……狭いのは嫌じゃん……」


 俺はこいつがよくわからなかった。

 話す分には普通の学生に見えるが、俺を殺そうとした時は、非情な女神に見えた。


「ていうか、お前はなんで女神教の信者を増やしてたんだ? 洗脳したり学校の生徒を狙ったり」


「うーん、正直、洗脳とかはどうでもいいと思ってるじゃん。とりあえず戦力を増強したかった感じ? っていうか、部下が勝手にやったし」


「なんでそんなに戦力が必要なんだよ。お前の女神教ってこの国だけじゃねえだろ」


「あ、勘違いしないで! 他の国の女神教は、同じように見えて同じじゃないから! 志は一緒で知らない奴が運営してるじゃん! 年に一度、女神会議があってそこで色々取り決めしてるんだ」


「……くそ、嫌な事実を聞いたな。……で、戦力は?」


 テツコは首をかしげる。


「うーん、本当に世界平和のためなんだけどね。……ぶっちゃけ平和になるなら犠牲はいいかなって思うし……、あ、い、今は違うよ! で、戦力は来る戦いに備えるためじゃん」


「はっ? 来る戦いって? マジで冗談じゃなく?」


「うん、あと数年、もしかしたら数十年先、この世界に災厄が訪れるんだ。ループの輪から抜け出した女神が言ってたから本当じゃんか。ていうか、世界が破滅するじゃんかよ!」


 俺は少し頭を整理したかった。

 意味がわからない言葉が多すぎる。

 世界が滅びる? なんだその漠然とした理由は……。


 シリルが口を挟む。


『……女神の脳内を探りましたが、嘘を言っているわけではないです。どうやら、この世界は文明が栄え、星の魔力を一定量使い切ると、星の防衛本能で地上全ての生物を駆除しようと動きます。女神から切り取った漠然とした知識しかないのでうまく説明できませんが、魔神と呼ばれるモノが世界を覆い尽くします』


 ――マジで?


『マジです』


 だからと言って――


「犯罪をしていい理由にならない。いいか、テツコ。お前は責任者だ。部下の行為で泣いたやつがたくさんいるんだ。そいつらは世界が破滅するなんて知らない。ていうかみんな生きるのに精一杯なんだよ。お前が無理やり洗脳して戦力を集めたって駄目なんだよ」


 テツコはそっぽを向いた。


「……わかってるよ、そんなの。……だって、仲間の集め方なんてわからないじゃん。勉強しようと学校に潜り込んだけど、もっとわからなくなったじゃん。……だから、強制的に戦力にしようとしたんだ。……いつの間にか部下が派閥を作って、勝手に人間を攫って、しかも恐怖で洗脳するし。責任者ながら、ひどいなーって思ったじゃん。ていうか人間って残酷すぎじゃね?」


「……まあ否定できないけどな。まあいっか、とりあえずテツコはアリスに任せよう」


 ちょうど、ビビアンとアリス、マリサが最奥の部屋に到着した。

 アリスたちはテツコを見て嫌そうな顔をした。


「……姿は変わっているけど、聖女なのね。このクソ女は千年前も大惨事を引き起こしやがったのね」

「ふむ、悪い子ではないのだ。旧王国に散々利用されたアホの子なのだ」


「あははっ、ひ、久しぶりじゃん! てか、あんたたち可愛くなったじゃんか! マジ水晶写真撮っていい?」


 テツコの事はアリスとビビアンに任せて、俺は死んだふりをしているキリュウイン先生に近づいた――


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