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女神として


『――ご主人様、魔石の使用の確認が出来ました。付与魔力の人物の元へと転移出来ますがいかがしますか?』


 俺たちは女神教の信者を戦闘不能にしつつ城へ向かっている。

 洗脳部屋がある施設は城の隣だ。といってもまだ距離もあるし、内部構造が複雑で攻略に時間がかかる。

 魔石の僅かな魔力から辿って転移するのは一人が限界だ。


 ――俺が行って……いや、女神教の教祖と幹部を相手にする場合俺たちじゃないと駄目だ。


 俺は横で走っているエリさんをちらりと見る。


「あら、どうしました? 何か悩んでいますこと?」

「うーん、一人だけなら攫われた生徒の元へ飛ばせるんだ。……多分この魔力はタンゲのものだ。誰に行ってもらうか悩んでて――」

「いいですわ。私が最適です。ギルバードの方が要塞の攻略が得意ですもの。私はどちらかというと個人戦が得意です」


 俺は即決断した。


「ならエリさんに頼む。状況がわからないから気をつけてね」

「ええ、問題ありませんわ」


 俺は走りながら転移魔法を構築する。いつもよりも小さい転移魔法陣がエリさんの身体を包む。

 俺は念話でみんなにエリさんを先行させて攫われた生徒の元へと送った事を伝えた。

 そして、俺達は分かれ道に到着して、各々の場所へと向かった――




 ***********



 城に着く頃には襲いかかってくる信者の数も減ってきた。

 というよりも、敵の質が変わってきた。

 この世界は数の力はたかが知れている。個人の質の力が数を圧倒するのだから。


 城の門の前には大きな魔獣が座っていた。

 見た目はオークであるが、明らかに風格が違う。


 オークは俺たちを見て立ち上がる。


「……お前らが来るような場所じゃねえ。帰れ。俺は、人っ子殺したぐねえ」



 シリルが俺に警告をする。


『オークロードです。Sランク相当の人外です。……装備している斧は伝説級の一品です。気をつけて――』


「ジャイア君! さあ君の出番だ!!」「りょ、了解っす!」


 ハカセは空間から巨大ゴーレムを召喚した。

 その大きさは人の三倍はあるだろう。随分とスタイリッシュな姿で、お腹のところに椅子があった。ジャイアがゴーレムに触れると、一瞬で椅子に移動した。


 そして、ジャイアはゴーレムを操作して腰に付けてある巨大な砲撃を持ち上げる。

 ジャイアはあっけに取られているオークロードの懐に巨体に似合わない速度で潜り込んだ――


 そして砲撃を押し当て――

 ハカセの声に呼応するように砲撃がゼロ距離で発射された。


「――――【魔力砲】」


 その威力は空間を捻じ曲げるほどであった。

 腹に大きな穴が空いたオークロードは驚いた顔をしていた。


 アリスがオークロードに回復魔法をかける。

 回復魔法には昏睡魔法も混じっていた。


「きゅきゅ、とりあえず死なない程度に回復するのね。あとで洗脳されているか判断してから殺るのね」


 オークロードはその言葉を聞きながら気を失って倒れてしまった。





 城の外と中ではビビアンの悪魔が大暴れをしている。

 八柱と呼ばれる悪魔の王様たちは、凄まじいまでの強さであった。一体一体がフルーチェと変わらない。

 悪魔に対抗できるのは司教以上でなければ無理であった。

 それでも、女神教の戦力は凄かった。

 大司教を筆頭に、司教、司祭が悪魔と対抗している。

 それに超高位魔獣が大量にテイムされていた。


 それだけじゃない。魔人族や獣人族の高ランク冒険者たちが行く手を阻む。


 ――こいつら戦争でもしたかったのか?


 城のあちこちから爆撃音と悪魔の高笑いが聞こえてくる。

 悪魔の高笑いはそれだけでランクが低ければ恐慌状態に陥り戦闘不能になった。





 **************





「大変です教祖様、本部が……、襲撃にあってます。現在、全ての戦力を投入して―――」


「はっ? なんですって? 全ての戦力?」


 女神は思わずお菓子をこぼしてしまった。夢中でプレイしていたテレビゲームを放り出す。

 女神の趣味部屋を出て、モニタールームへと移動した。


 モニターに映し出されていたのは――


「はっ? マジで全戦力じゃん……、ていうか、私が今まで集めた駒が消費されるじゃん!! ヤバいって! もうすぐラストバトルが始まるのに!!」


 大事に育て上げたドラゴン部隊が兎が振るう勇者の剣によって壊滅状態に陥る。

 しかもご丁寧に回復魔法をかけて昏睡させるという余裕の行為……。


 違うモニターでは契約を交わした魔人族が必死で応戦するも……、小さな女の子の魔法によって吹き飛ばされる。


「えっ? この時代に姫っているの? マジ? 手駒に欲しいじゃん! ……でも苦手なんだよねー。姫って偉そうでムカつくんだよね。あっちもヤバいね……、ていうか、フルーチェどこ行ったの? あいつ私に『明日には王系スキルの持ち主をご献上致します』って言いながらバックレたじゃん! マジムカつく」


 女神である私に逆らうなんて……王系スキルの持ち主はいつもそうだ。邪魔ばかりする。


 ……それにあの犬っころって魔王じゃない? じゃなきゃ悪魔八柱を従えないって……。あの聖剣も見たことあるし……アリス、兎になってるじゃん。


 モニターはジャイアが巨大ゴーレムの兵器を操り、凄まじいまでの打撃を城に与えている場面を映し出していた。

 ……いやね、この城ってオリハルコンで出来てんだよ? なんで壊そうとするのかな!! 私が何をしたのよ!! 


 そんな戦乱の中、一人だけ悠然と歩く男がいた。

 ――中々のイケメンね。……ていうか、マサキヤバくね? 魂の階位が女神に近いじゃん。え、もしかしてこっち来てる? 


「め、女神様、ここはあいつらの教師である私が……、あなた様の永遠の美に誓って……」


 ――こいつ有能だけど気持ち悪いんだよな。学生よりも少し年上が好きっていう変態男。マジキモい。はぁ……、どうにかしてくれるならいいけどさ。


 うん、こいつを囮にして逃げよう……。魔王と勇者でさえ手が負えないのに、ランク外の奴らの相手なんかしたくないじゃん!


 女神が立ち上がろうとした時、扉が吹き飛んで塵へと変化して風に飛ばされていった。

 ――ふ、腐食系打撃!? 


 側近の司教が王系スキルの男に泣きつく。


「……マ、マサキか、俺は攫われた生徒を助けるためにやっとここまでたどり着いたんだ。……ここは俺に任せろ。生徒達はこの城にいない、あっちの建物に――ぐぼほっっ!?」


「キリュウイン先生かー、まあ裏切り者でもそうじゃなくてもどっちでもいいか。とりあえず寝ててね」


 マサキの拳がキリュウインの腹を突き破る。

 Sランクの人外とされる司教キリュウインは、自分に攻撃が通るわけないと思っていた。

 感じたことのない痛みが全身を駆け巡る。

 そして、急激な眠気に耐えきれず……そのまま眠りに落ちてしまった。


「はっ? 私でさえ見えなかったじゃん!? ていうか、時間系の能力を使えるの!? マジ? はわわ、どうしよ……」


「お、テツコじゃん、安心しろ。お前は俺が――――ぶちのめしてやるよ」


 ちょっと学校生活を楽しみたかった。だから、テツコとしてFクラスで普通の学校生活を満喫していた。ちょっと気になる男の子っていう設定のマサキ。

 恋のライバルのサナエちゃん。


 ああ、楽しかったな。どうせ最後には洗脳して手駒にしようと思っていたのに……。




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