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お風呂


 朝の大浴場には俺しかいなかった。

 昨日の夜はみんなの話相手をしていたらお風呂に入りそびれてしまったのだ。

 各々好きな部屋で好きなように寝ているのであった。


 大浴場には大きなお風呂がある。高価な木材で出来ており、香りが非常に良い。

 ゼンジのセンスの良さが伺える。

 ……ていうか、スバルでさえ別宅があるの知らなかったもんな。ゼンジいわく、他にも異世界人であった曽祖父の遺産はたくさんあるが、内緒にしているらしい。スバルが食いつぶすと思ったからだ。



「ふぅ……、やっぱ疲れていたんだな……」


 お湯に浸かると身体と心が安らぐ。なんだか解放された気分になる。

 そろそろシリルの報告を聞かなきゃな……。

 あれ? なんか足音が聞こえてきた。俺が風呂に入っていると、一応起きているみんなには伝えてあるのに? ギルか? あいつ妙に俺の身体を触ってくるからな。


 扉が開くと、そこにはタオルを巻いたヒカリが立っていた……。

 ちょ、ヒカリ? さっきまで寝てたよな!?


「ちょっと、ずるいよ。私だってお風呂入ってなかったのに! あ、大丈夫だよ、下はちゃんと水着着てるもん……へへっ」


 おいおい、ちょっと待てよ!? なんで少し恥ずかしそうなんだよ! そこはいつもみたい堂々としてくれや! 俺も恥ずかしくなってくるだろ……。

 俺は平静を装って「お、おう」と返事をする。


 ヒカリは身体を流してお風呂に入ってきた。


『ご報告は……』


 ――あ、そ、そうだな。ヒカリにも一緒に聞いてもらおう。


「ヒカリ、女神教の本部の場所が分かったんだ。ちょっと今から色々報告するから」

「ん? どうやって分かったの? あの三馬鹿に聞いたの?」

「なんて説明していいのやら。システムさん改め、シリルっていう子が頭の中に……、あれ? この説明って大丈夫か?」

「マ、マサキ、大丈夫? ギルドが壊れたとき頭打った?」


 ヒカリが俺に近づいて、頭に怪我がないか確認しようとした。

 ガッチリ俺の身体をホールドする……素肌の柔らかさが心地よい……。

 うん、やっぱりヒカリは優しいな。


「ヒカリ、ちょっと近すぎるぞ」

「え、あ、うん……、へへ、マサキだと距離感がわかんないんだよ。まいっか」

「そうだな、まいっかだ」


 お風呂場は沈黙に包まれる。でも嫌な沈黙じゃない。心地よい空間であった。

 俺とヒカリは半分眠りそうになっていた。

 それほど安らいでいたのだ。


 俺の肩を枕にしているヒカリに声をかける。


「おーい、寝たらのぼせるぞ……」

「むにゃ……、うん、もうちょっとだけ」

「ったく、しかたねーな」


「あの……、そろそろ報告をしたいのですが……、ご主人様よろしいでしょうか?」


「はっ?」「ふえ……、だ、誰?」


 湯船の中には知らない女の子がいた。もちろん全裸である。なんだ、見たことないぞ? ていうか、いつの間に入ってきた!?

 まて……この口調……雰囲気……、魔力の塊っぽい存在感。


「お前シリルか?」

「はいっ!」


 シリルは嬉しそうに返事をした。俺が一発で分かったから嬉しかったんだろう。

 ていうか、なんで裸なんだよ!? 


 くそ……、ばっちり目が覚めた俺とヒカリは、身体を洗ってお風呂場を出ることにした。その間、シリルは湯船にずっと浸かっていた。




 そして、スバルとゼンジ、アリス、ビビアン、マリサを居間に集めてシリルの説明を受けることにした。





 ゼンジがお茶をみんなに配る。

 とりあえずシリルの存在を説明するとアリスとビビアンが驚いた。


「さ、さすがはわっちのご主人様なのね。帝系スキル以上だと補助人格が宿る事があるね」

「現世に現れるのは稀なのだ……。我が魔王であった時に補助人格を人型ゴーレムに宿した事はあるが……、自力で存在するなんて……ご主人すごいのだ!」

「あれれ? そういえばうちも心の中で声が聞こえるのさ」


 マリサの中でも補助人格があるらしい。それはあとで詳しく聞いてみよう。

 シリルは少し膨れている。報告を聞くと言いながら俺はヒカリとお風呂を楽しんでいたからだ。……妙に人間臭い所があるよな。ていうか、最初からそうだ。たまに判断間違えるし。


 シリルが咳払いをして俺たちを見渡す。

 そして説明を始めた。


「――まず大司教フルーチェですが、ギルドにいたモノは義体でした。義体を破壊した時に放出された魂と魔力を辿り本体のフルーチェを突き止めました」


 やっぱ生きてたのか。なんか手応えがおかしいと思ったんだよな。


「フルーチェは収穫所と呼ばれる場所で自分の手駒を獲得していました。……収穫所は騎士候補生学校であり、手引をしている学校関係の協力者がいます」


 俺は思わずシリルの言葉を遮ってしまった。


「え? マジ? ていうか、学校やばくね?」

「……うちも知らなかったのさ。司祭は司教の言うとおりに働くだけなのさ……」


 シリルが咳払いをする。うん、話を全部聞こう……。


「女神教の本部は学校内のダンジョン最深部にあり、転移陣で各支部へ移動をしています。転移陣は帝国各地に繋がっているのを確認しました」


 ……ちょっとシリルさん、超優秀じゃね? 漫画活劇のスパイモノの主人公みたいじゃん。

 そんなシリルさんにアリスが物申す。


「ちょっと待つのね! 転移陣の構築はヤバい魔法式なのね! それこそわっちの全盛期やそっちの犬っころの全盛期でさえ一個作れれば超すごいって感じね。わっちら以外の種族だったら魔神系しか思い浮かばないのね……」


 ……なるほど、だから昨日から転移をしたらびっくりしたのか。少し控えよう……。


「……教祖についてですが……、推測になりますが……、この現世に顕現した女神だと思われます」


「ちょいまち、女神が女神教の教祖だっていうのか? ならあいつらの目的は達成してねえか?」


「女神は……、色々な考えを持つモノがいるので彼女の目標が何かよくわかりません。ですが、完全に現世に顕現しているわけではありません。もしかしたら、ご主人様の王系スキルに耐えられるほどの強靭な魂と肉体を狙っているのかも知れません」


 居間に沈黙が漂う。

 女神は絵本の中の存在だ。


「……まあどうでもいいか。……女神教は俺を狙ってんだろ? それにまた友達が傷つくかもしれん。だったら相手が誰であれ潰すまでだ。今度はこっちから不意打ちしてやろうぜ」


 俺がそう言うとみんな頷いてくれた。


「……クソ聖女系の結界はマジムカつくのね……。結界破壊魔法式を作っておくね」

「我は最上位を超える悪魔を召喚する準備をするのだ。……極大魔法の構築も――」

「う、うちも付いていくのさ……、道案内ができるのさ」

「拙者、武器を最高の武器を仕入れてきます」

「わしは朝ごはんを作るのじゃ……」


 俺はシリルにダンジョンの最下層の行き方を聞こうと思った時、ジャイアが血相を変えて居間に入ってきた。



「た、大変だ! 学校で行方不明者がたくさん出たんだって! マサキの幼馴染のミヤビも行方不明だ!!」




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